成人の5人に1人が不眠であると言われている日本(厚生労働省 平成28年国民健康・栄養調査結果より)。不眠の大きな原因の1つにストレスがあります。人はストレスがかかると、その刺激が自律神経をコントロールしている、大脳の視床下部というところに伝わります。
自律神経は、交感神経と副交感神経という、2つの違う働きをする神経で成り立っています。そのうち交感神経は呼吸や運動などエネルギーを消費する時に優位に立ち、副交感神経は眠りや食事などエネルギーを保存し休息をする時に優位に立って、私たちの身体をコントロールしています。交感神経や副交感神経が、まるでスイッチのように上手に切り替わることで、私たちは健やかな身体の活動を保つことができるのです。
しかしストレスがかかると、交感神経が優位な状態が続き、副交感神経を優位にすべき時でもスイッチの切り替えが上手くいかなくなってきます。その状態が長く続くことで、自律神経のコントロールができなくなり、身体にさまざまな不調が起こります。不眠は、こういった自律神経の不調からくる、機能低下の症状の1つであると言えるのです。
それでは、なぜアロマテラピーが、安眠や快眠に役立つと言われているのでしょうか?それは「好きな香りを嗅ぐこと」が、副交感神経のスイッチを入れる直接的なきっかけになり、大脳の視床下部にリラックスや幸福感を感じさせてくれるからです。
香りの情報は、大脳へ直接、信号として素早く伝達します。例えば、焦げ臭いニオイや嫌なニオイを嗅ぐと、瞬間的に危険を感じ、理由は分からずとも、思わず鼻を塞いだりその場を離れたりするでしょう。そういった反応は、前述の自律神経の仕組みから来ています。
同様に、好きな香りや良い香りからも、直感で情報を感じ取っています。好きな香りや良い香りを嗅いで、幸せな気持ちになったりリラックスしたりすることで、副交感神経が優位になり、安眠や快眠に繋がるのです。
続いて、安眠・快眠におすすめのアロマや、その使い方を解説します。
基本編:寝る前にリラックスできるアロマ
安眠におすすめのアロマは、ラベンダー、スイートオレンジ、ベルガモット、クラリセージ、プチグレンです。
ラベンダーには、酢酸リナリルという成分が多く含まれています。この成分は、交感神経を落ち着かせて、気持ちを穏やかにする働きがあると言われています。クラリセージやプチグレンにも同じ成分が含まれているので、まずは香りの好みで選んでみるのが良いでしょう。
スイートオレンジは、夕方以降の時間帯に香りを嗅ぐと気持ちが落ち着き、認知機能が向上することが分かっています。夕方以降のリラックスするべき時間帯に、スイートオレンジの香りなどで、しっかりとリラックスすることが大切です。柑橘系の香りは気持ちを前向きにするのに役立ちますが、スイートオレンジ、ベルガモットは同じ柑橘系の香りでも、特に気持ちを優しくする効果があります。良い眠りへいざなう意味で、おすすめの香りです。
応用編:快適な眠りのために、お気に入りの香りを作ろう!おすすめのブレンド
基本編で登場した香りを使った、おすすめのアロマブレンドをご紹介します。以下にご紹介する組み合わせを、まずは1対1の割合でブレンドしてみてください(例:ベルガモット2滴とマンダリン2滴のブレンドなど)。アロマのブレンドで大切なのは、「好きな香りに仕上げること」です。1滴の違いでも香りは変わるので、慣れてきたら自分で滴数を変えて、好きな香りにアレンジしてみてくださいね。
ベルガモット&マンダリン
これは安眠のための空間づくりに人気のブレンドです。どちらも、柑橘系の中でも上品ですっきりとした香りなので、他の柑橘系の香りとはひと味違う香りに仕上がりますよ。
ラベンダー&プチグレン
この2つのアロマオイルは、どちらも気持ちのバランスを取るのに優れている香りと言えます。ラベンダーの重苦しい香りをプチグレンが穏やかにしてくれますし、プチグレンの青臭い香りをラベンダーが和らげてくれるでしょう。滴数の割合が変わると香りも変わるので、ぜひお試しください。特に男性にはプチグレンが人気です。
スイートオレンジ&プチグレン
スイートオレンジはオレンジの果皮から、プチグレンはオレンジの枝葉から抽出するアロマオイルです。オレンジ繋がりのアロマオイルということで、相性がとても良いです。スイートオレンジの滴数を多めにすると優しい印象が、プチグレンの滴数を多めにするとすっきりとした印象が楽しめるので、気分に応じてぜひオリジナルの滴数配合を試してみてください。
寝る前にリラックス!アロマの効果的な使い方は?
まずは、シンプルに「ドライ吸入」をおすすめします。好きな香りを選んで、寝る前にティッシュなどにアロマオイルを3、4滴垂らして、大きく呼吸をしながら香りを嗅いで寝ることから始めてみてはいかがでしょうか。アロマオイルを垂らしたティッシュは、枕元にそっと置いておくだけで、香りを感じながら眠ることができますよ。
また、寝る前の「ラベンダー入浴」もおすすめです。お湯に入る直前に、ラベンダーのアロマオイルを4、5滴垂らして入浴します。応用編で紹介した、「ラベンダー&プチグレン」のアロマブレンドもぜひ試してほしいですね。ぬるめのお湯にゆっくりと入浴して、香りを嗅ぎながら大きく呼吸をしてください。特に、おへそを意識してゆっくりと「息を吐くこと」に集中すると、安眠や快眠に役立つ副交感神経のスイッチを入れる助けになるでしょう。また入浴後は、身体が冷めないうちに早めに寝るのが良いでしょう。
自宅で簡単に作れるアロマ入浴剤として、重曹1カップ(180cc)または、バスソルト用の岩塩30g程度に、アロマオイルを4、5滴垂らして(多くても5滴ほどが望ましいです)、それをバスタブに溶かして入浴するのがおすすめです。
寝る前にアロマテラピーでホッとひと息することで、あなたの眠りが快適になりますように。
アロマテラピー検定講座へのリンク
※ アロマテラピーの注意事項
クラリセージやラベンダーは妊娠中の方、女性ホルモンに関係する病気がある方は使用に注意が必要です。また、スイートオレンジなどの柑橘系は肌刺激があるので、入浴には向きません。アロマオイルの使用にはそれぞれ注意事項があるので、使用前に必ず確認してから使用するようにしてください。
※ 出典:「国民健康・栄養調査結果の概要」(厚生労働省)
(https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/kekkagaiyou_7.pdf)(2018年9月13日に利用)