今回お話を伺ったのは、お菓子作りで食育を提唱している、お菓子教室&食育コミュニティキッチンスタジオ「横浜ミサリングファクトリー」の松本美佐さん。
おばあちゃんやお母さんがおやつを作ってくれた昔と違い、今の子どもはお菓子を買うのが当たり前という世の中で育っています。しかし、実際は身近な食材で簡単におやつが作れるもの。楽しく経験することで食への関心を高めてほしいと願い、様々な活動を行っています。
「素材のありのままの姿や安全性は、自分の目で見て確かめることが一番。自分の体が受け付けないものを見極めたり、匂いをかぎ取ったりする力は人間にとっ て必要なことです。また、座っていれば日々の食事(完成されたお料理)が出てくるわけではありません。1つ1つの食材を誰が作っていてどこからくるのか、 ともすると全く考えないまま大人になってしまいそうな時代ですから、きちんと知るきっかけを与えてあげることが必要です。」
お菓子作りを通して食育を提唱しているのは、ズバリ「子どもが単純に『楽しい』と感じてくれるから」と松本さんは言います。確かにお菓子が嫌いな子どもはあまりいませんよね。重要なのはこの“楽しい”という感情で、その経験によってたくさんのことが身につくのだとか。
「お菓子作りを例にとって見てみると、まず、できたことへの達成感が自信につながります。そしてお菓子は人にプレゼントすることができるので、嬉しそうなご家族やお友達を見て“自分でも人を喜ばせることができる”という充実感も抱くんです。人と一緒に作業することで、他人のことを考える力、つまり協調性も身につきますし、連携して作業していくうえで考えや想いを言葉にするため、自然とコミュニケーション能力も高まります。また、ちゃんと集中しないと失敗しやすいということもポイント。最近では何事に対しても失敗を恐れすぎる傾向があるので、あえて思い通りにならない状況に陥ることは、いい経験になるのでは?」
ただ単に食に対する知識だけではなく、生活していく上での基本的な人間力や、コミュニケーション能力まで身につくんですね。
では、自宅で親から子へ食育をするには、どうするのがよいのでしょうか?
「一緒に何かを作ってみるのがおすすめですね。上手くできる必要はないので、難しいことは気にせずにまずは楽しんでみましょう。例えば週1回とか月1回とか、イベントのように考えて、ゲーム感覚で始めてみるのはいかが?ポイントは、例え失敗しても決して怒らないことです。時にはキッチンを汚したり、お皿を割ってしまったりすることもあるでしょう。そこで怒られたらやる気を失ってしまいますし、リスクを回避するあまり割れにくいお皿ばかりを使っていては注意力が身につきません。子どもといえども、ある程度一人前として扱ってあげるのが重要です。また、時間を与えてあげれば大抵のことはできますから、失敗しても最後まで見守り、いろんな可能性を引き出してあげましょう。
子どもは『できない』のではなく、『やったことがない』だけなのです。実体験を伴った知識こそが将来役に立ちます。これこそが経験値です。
時間がなければ、一緒に食材の買い物に行ったり、料理しているところを見せてあげたり、片づけを手伝ってもらったりするだけでも十分。こういう経験を積むことで食事を用意する大変さがわかりますし、感謝の気持ちも芽生えますよ。」
松本さんいわく、「一般家庭こそが食育と社会勉強の最大の舞台」なのだとか。ぜひ、身近にできることから始めてみてはどうでしょう!
食育実践プランナー講座へのリンク
食生活アドバイザー(R)講座へのリンク