小さいころから家事をはじめ、食のお手伝いをよくしている子どもは、時間を有効活用しており、家族の一員としての自覚と自信を持ち、将来の自分の家庭に明るい展望を抱いているという調査結果が出ています。
食育ガイドである筆者の主宰する「おもてなし料理教室」に通ってくださる方々からも、小さいころからお手伝いを続けていたところ、根気強く我慢強くなった、責任感が生まれた、家族の会話が増えた、残さず食べるようになった、などのうれしい成長があるというお話をたくさん聞きます。子どもが大きくなったときにこんなにうれしい変化が待っているのなら、お手伝いをしてもらう価値は十分にあると言えるでしょう。
少しずつできることが増えていくお手伝い。次の4ステップを目安に進めていくと、子どもは1歳から簡単なお手伝いを始め、8歳になるころには家族の一員として自分の役割を果たせるようになります。
ステップ1:お手伝い開始期(1~2歳)
1歳を過ぎて会話ができるようになり子どもが食事の用意に興味を持ち始めたときが始めどきの目安です。この時期のお手伝いは、単調な作業のほうが続く時期です。例えば、料理を一品だけ(こぼれないもの)取りに来てもらい、自分の目の前に置いて食べさせると、食べ物に興味を持つことにつながります。
この時期におすすめのお手伝い
料理のお手伝い(とる・ちぎる・まぜる)
食事の準備と後片付け
ステップ2:お手伝いチャレンジ期(3~4歳)
好奇心が旺盛になり、挑戦できることも増えてくる時期。遊びの一環として楽しみながらお手伝いできるようになります。小麦粉など飛び散りやすい材料を使うお手伝いは、最初に「ゆっくりまぜようね」などと声かけをしてから始めるようにしましょう。
生肉を使う作業の開始時期は、声かけをしたことをしっかり守れるようになってきたら様子を見て始めましょう。料理を2~3品配膳させながら、食器を置く位置や向きを教える時期です。
この時期におすすめのお手伝い
料理のお手伝い(こねる・形作る・盛る)
食事の準備と後片付け
ステップ3:お手伝い発達期(5~6歳)
このころになると、火や家電等の高度な道具を使い始められるようになります。切る作業は、最初はやわらかいバナナやイチゴなどの果物を食事用のデザートナイフでカットし、持ち方や切り方を教えながら徐々に慣れさせるとよいでしょう。
焼く作業も同じように、電磁調理器などで慣らしてから火を使う注意点を教えていくと子どもは理解ができます。このころには腕力もついてくるので、軽くてこぼれにくい料理をトレーに乗せて食卓まで運んで家族分を配膳してもらうと、やりがいを覚える時期です。
この時期におすすめのお手伝い
料理のお手伝い(切る・焼く・煮る)
食事の準備と後片付け
ステップ4:家事分担移行期(7~8歳)
家族の一員として家事分担の役割を持ち始める時期です。このころには、簡単な一品料理ならひと通りできるようになります。
小さなことですが、どんな簡単な料理でも子どもが作ってくれたものは「○○(子どもの名前)特製サラダ」「卵焼き○○風」などと特別な名前をつけて呼ぶようにすると、子どもは家族に愛されている実感を持ち、自己肯定感が育ちます。
この時期におすすめのお手伝い
料理のお手伝い(簡単なものは担当してもらう)
食事の準備と後片付け
以上の4ステップのように、子どもは1~2歳で簡単なお手伝いから覚え始め、7~8歳では大部分のお手伝いができるようになります。好奇心旺盛な3歳からは、一歩進んだお手伝いに挑戦させるのにちょうどよい時期と言えます。
お手伝いを長続きさせるコツは、お手伝いへの感謝の気持ちやできたことをほめる言葉を常に子どもに伝えることです。長く続ける中で子どもは自信を持つことができます。子どもの能力を伸ばし明るい未来を作るために、遊びの一環として楽しみながらも、小さいころからいろいろなお手伝いにチャレンジさせてあげましょう。
毎日の食生活の中で親子一緒に料理をすることで、子どもの表現力・集中力・創造力の3つの能力が大いに発達していきます。
その1:表現力がありコミュニケーション能力が高い子どもに
親子一緒に料理をする中で、できるだけたくさんの食材に触れさせることにより、食物に興味を持ちます。そして、丸・三角・四角などの形や、緑・黄・赤などの色、ツルツル・サラサラなどの感触を表現する言葉を覚えたり、野菜の種類や肉や魚などの名称を覚えたりすることで語彙が増え、言葉や表現力が発達します。
その2:集中力があり忍耐強い子どもに
親子一緒に一つの作業を時間や量などの目標を設定して丁寧にすることで、集中力がついていきます。作業をしていて気づいたときには時間がたっていたという経験と、最後までやりきることができたという達成感の積み重ねが集中力を高め、作業自体が楽しくなり自信もついていきます。
その3:創造力があり思考力が発達した子どもに
料理は、いくつかの材料を組み合わせながら、調味料との相性を考え、段階を追って最終形を創り出すという、思考力をはたらかせる創造的なものです。親子で一緒に料理をしながら、料理のプロセスを見せて興味を持たせることは、子どもの創造力を高めます。
いかがですか?食のお手伝いは、こんなにも子どもの能力を向上させる重要な機会だということがよくわかりますね。ぜひ皆さんも意識して、子どもと一緒に家族で料理をしたり会話をしたりして食卓を囲む時間を大切にしてください。
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