幼少期の味覚は、大人の2倍以上鋭いといわれており、味を感じる舌の味蕾(みらい)という部分が、1歳を過ぎた頃から特に発達します。甘味・酸味・塩味・苦味・うま味の5種類ある味覚の中でも、酸味と苦味は強く感じるといわれているため、離乳期の1歳前後までは何でもよく食べていた子が、2歳頃から急に好き嫌いが多くなり、今まで口に入れていたものを食べなくなることは珍しくありません。
また、お母さんの苦手な食べ物を、子どもも苦手になる場合があります。お母さんが苦手な食べ物は自然と食卓に並ぶ機会が少なくなるため、警戒心が強まるのです。
初めて目にする食べ物を前にして、「食べてみたい!」と好奇心旺盛に手を伸ばす子がいる一方、なかなか口にしようとしない慎重な子もいます。食べ物の色や形状、香りなどから口にすることをためらっているうちに、本当に食べられなくなることがあります。また、頑張って食べてみたけれど苦手と感じた経験や、食べられなかったことを周囲にからかわれたり、怒られて恥をかいたりしたなどのネガティブな経験から、その食べ物を嫌いになることもあるようです。
子どもが苦手な食べ物の代表格は、なんといっても野菜でしょう。特に、苦味のあるピーマン・ゴーヤ・セロリ・ネギや、酸味のある梅干しやトマト、独特な風味があるきのこ類などは、苦手意識を持つ子どもが多い傾向にあります。
嫌いなものを「食べなさい」と強要することや叱責することは、子どものトラウマになる可能性があるため、逆効果です。まずは、家族が目の前でおいしそうに食べることから始めてみましょう。反応がなければ「食べないの?じゃ、ママがもらっちゃおう!」などと、ちょっと刺激してみるのも良いかもしれません。
また、以下のような工夫もおすすめです。
今まで避けてきたことに成功したときに褒められると、その出来事を子どもは成功体験として記憶します。そして、次に同じような場面に直面したときも「頑張ろう」と思えるのです。
ピーマンやタマネギはみじん切りにして、ご飯と炒めてケチャップライスにする。ニンジンはハート型や星型に切り抜いてみる。など、味付けや形を工夫して変えてあげましょう。また、モソモソとした食感のゆで卵は、ざく切りにしてポテトサラダに加えるなど、ひと手間掛けると、子どもにとって口に入れるハードルが低くなることがあります。
買い物先で一緒に食材を選ぶと、野菜に対して親近感が湧いたり、「食べてみよう」と思ったりするきっかけになります。買い物中に旬の野菜や魚の名前、肉の種類や部位などを、クイズ形式で教えてあげるのも楽しいものです。
買い物から帰宅したら、子ども用の包丁を用意し、野菜のカットなどをお願いしましょう。「○○ちゃんが野菜を上手に切ってくれたからおいしい!」と家族が喜べば、野菜への印象が良くなり、好き嫌いを克服できるかもしれません。
言葉が理解できる年頃の子どもには、どうして好き嫌いせずにさまざまなものを食べるのが良いのか説明してあげましょう。「骨が強くなるよ」「体の中に入ってきたバイキンをやっつけてくれるよ」「丈夫な体になって、かけっこで1番になれるよ」など、子どもが理解しやすい言葉で説明してあげてください。
「いろいろ取り組んでみたけれど、改善が見られない……」ということがあるかもしれません。でも、そのようなときも、お母さんが肩の力を抜いて気楽に構えることは大切です。
決して無理に克服させようとはせずに長い目で見て、まずは食事の時間を楽しく過ごせるように心掛けましょう。
ユーキャンの食育実践プランナー講座、調理師講座の主任講師を務める宮川先生。でもかつては、料理嫌いで自炊とは無縁の生活を送っていたそう。そんな宮川先生が料理を作るようになったきっかけとは? 料理嫌いだった宮川先生が料理家ととなった契機と、食の重要性を痛感したエピソードをお聞きしました。
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