東大に合格した子どもの親が、「うちは『勉強しなさい』って言ったことがないんですよ」と話しているのを、テレビなどで時々見かけます。また何かの知識が突出した子どもを持つ親が、「この子は好きな○○のことだったら、時間を忘れていつまでも調べているの」と話しているのを耳にすることもあります。
私はこれまで、幼児教育の現場や教育機関での勤務などを通じ、さまざまな親子を見てきましたが、人より何か得意なことがある子どもの親は、しばしば「子どもが自発的に取り組んでいる」と口にします。興味があるものへの学びを自ら深めていくことは、子どもの能力を育み、また心の充実や自信にもつながるため、そのような子どもに育ってほしいと願う親は多いでしょう。
それでは、いったいどのようにすれば、「自ら進んで学ぶ子ども」に育つのでしょうか?特に大切な5つのコツをお教えします。
子どもがいつまで経っても宿題をしない、なかなか寝ようとしない……そのような時、「早く宿題しなさい!」「いつまでも起きていないで、もう寝なさい!」と、言うことはないでしょうか?
「○○しなさい」というのは、相手に命令や指図をする言葉です。大人もそうですが、人から命令されると支配されている感じがして、嫌な気持ちになりますよね。すると、反発心が起こったり、反対にやる気が無くなったりと、物事に対して意欲的に取り組む気持ちは起こりません。
何かをして欲しい時は、「命令する」言葉ではなく、子ども自身に「考えさせる」言葉がけをしてみてください。例えば、「宿題、まだしなくて大丈夫?」「まだ寝ないようだけど、朝起きられる?」など。そうすることによって、子どもは考え、自分の意志で次の行動に移ります。
もちろん、最初は子どもの判断が甘く、「夜、宿題ができると思っていたのに出来なかった」「朝、起きられると思っていたのに寝坊した」など、宿題を忘れたり、遅刻したりすることもあるかもしれません。ですが、子どもの頃の失敗は、今後伸びていくためのステップです。少しくらいの失敗なら、見守ってあげましょう。まずは自分で考えさせることによって、子どもが自発的に取り組むことを応援してあげてください。
日常生活のさまざまなことについて、子どもが疑問に思ったり、不思議に感じたりする言葉をかけていきましょう。
「飛行機は何故、空を飛ぶことができるのだろう?」「転んで擦り傷をつくると、どうして血が出るのかしら?」など、ありとあらゆることに対して、「何故?」「どうして?」という疑問を投げかけてみます。その中で、子どもは「心に響く不思議」と出遭うと、「理由を知りたい」「調べたい」という気持ちを抱き、その気持ちが、自ら進んで学ぶ姿勢へとつながっていくでしょう。
子どもが、抱いた疑問に対して調べたり考えたりしている時は、親も興味を持ち、一緒に学びを深めましょう。また、「すごいね~!こんなに詳しく調べたんだ!」「これは何という名前?」「どうしてこうなるの?」など、感嘆したり、子どもに尋ねたりするのも良いでしょう。きっと、子どもは得意になって説明してくれるはずです。親に褒められたり、教えたりすることによって、子どもは自信と喜びを感じ、そのことで更に意欲を高めていくでしょう。
子どもが自ら何かに熱中し、集中して取り組んでいる時は、それを中断させることなく、とことん気の済むまでさせてあげましょう。時には、「お風呂に入る時間でしょ!」「夕飯だから片付けなさい!」と、言いたくなる時もあると思います。しつけの面から見ると、それも大切なことです。ですが、興味があるものに没頭している時は、親は臨機応変に対応してあげましょう。
集中力は、親がいくら言葉で「集中しなさい!」と言っても、身につくものではありません。集中力は好奇心により育まれるものであり、その集中力が、物事への興味を更に深めていくのです。集中している時には、中断せずに取り組ませることで、子どもはより意欲的に学ぶことでしょう。
子どもは親を見て育ちます。日頃から親が目標を持ち、イキイキと何かを学んでいれば、その姿を子どもは必ず見ています。すると、「学ぶことは楽しいんだ」「イキイキしているママやパパのようになりたい」と感じ、子どもの日常生活にも、「学び」が自然に組み込まれていくでしょう。楽しく学んでいる親の姿に憧れるからこそ、自分も学びたいという気持ちを抱くのです。
発達心理学では、「子どもは成長過程で、モデリングにより学習・成長する」と言われています。これは、「子どもは教えられて学ぶより、身近な人の言動をマネして学んでいく」という意味です。また、子どもの価値観や感情も、親の言動が子どもの脳や心にファイルされることで形成されていきます。
子どもが自主的に学びを深め、楽しく取り組むように育つためには、親の言葉がけや普段の様子が、大きく影響していると言えますね。親も、何か夢中になれるものを見つけて、イキイキと輝いている姿を、子どもに見せるようにしましょう。そして、親子で夢中になれる学びの時間をつくり、一緒に充実感や楽しさを味わいたいですね。
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