「子どもが嫌いな食べもの」といえば、ピーマン、トマト、玉ねぎ……と、真っ先に野菜を思い浮かべる方も多いはず。そもそも、なぜ子どもは野菜を嫌う傾向にあるのでしょうか?
「子どもが野菜を嫌いがちになる一番大きな理由は、味の分かりにくさです。子どもは、基本的に分かりやすいものを好みます。たとえば、車の中でも乗用車よりパトカーや消防車が人気ですし、普通の服よりもお姫様のようなドレスやティアラが大好き。味覚も同じで、子どもは甘いものや脂気を感じられるものなど分かりやすい味のものを好み、酸味や渋味、また噛めば噛むほど味が出る野菜などのいわゆる『大人の味』は、嫌う傾向があります」(浜田峰子さん)
とはいえ、子どもが野菜を食べないと心配になってしまうのが親心ですよね。あらためて、なぜ野菜を食べたほうが良いのか、その理由を教えてください。
「まず、野菜には身体に必要な栄養素が豊富に含まれていることは言うまでもありません。それに加え、『噛む』という行為がとても大切です。咀嚼が脳の活性化を促すことは、科学的に証明されています(※)。よく噛む子ほど集中力が持続し、成績や運動神経が優秀であるという調査結果も出ています(※)。栄養素の観点から、野菜不足を補うために子どもに野菜のジュースやスムージーを与えることも良いですが、『噛む』ことの重要性も考えると、私は幼少期から野菜をよく噛んで食べる習慣をつけることをおすすめします」(浜田峰子さん)
※引用元:公益社団法人8020推進財団(https://www.8020zaidan.or.jp/info/effect8.html)
それでは、子どもの野菜嫌いを克服し食べさせるためには、具体的にどんなことを心がければ良いのでしょうか?その5つの方法を教えてもらいました。
野菜嫌い克服の方法1:野菜の調理方法を工夫する
「辛味や苦味のある野菜は、加熱調理して甘味を引き立ててあげましょう。その野菜を『見るのもイヤ!』というほど拒絶する場合は、細かく刻んで混ぜ込む、衣を付けて揚げるなどして、パッと見では分からないようにすることが有効です」(浜田峰子さん)
野菜嫌い克服の方法2:野菜と触れ合う回数を増やす
「あまり食べたことがないけど、なんとなく嫌い。そんな野菜に対しては、食卓に登場する機会を増やしてみましょう。その野菜を目にする回数が増えるほどに、嫌いなイメージの度合いは薄れていきます。これは『単純接触効果』と呼ばれ、接する機会が増えるほど好感を持つという心理効果です」(浜田峰子さん)
野菜嫌い克服の方法3:お手伝いをさせて、野菜に興味を持たせる
「まずは、その野菜に対して楽しいイメージを持ってもらうことが大切。そのためには、年齢に合った方法で楽しくお手伝いをさせて、野菜に興味を持たせましょう。役割を与えられたことによる自信や達成感は、好き嫌いの克服にもつながります」(浜田峰子さん)
野菜嫌い克服の方法4:大人が野菜をおいしく食べるお手本を見せる
「『おいしいね』と大人が目の前で楽しそうに野菜を食べていると、子どもはマネをして食べるようになります。これは、心理学で『同調効果』と呼ばれるもの。野菜にポジティブなイメージを与え、おいしく食べるお手本を見せてあげることも大切です」(浜田峰子さん)
野菜嫌い克服の方法5:野菜を食べる環境を変える
「外出先や旅行先で、子どもがいつも以上に食欲を発揮した経験はありませんか?環境が変わるとそれが刺激となって、苦手な野菜も食べられるようになることがあります。家の中でレジャーシートを敷いて、『ピクニックごっこ』をするだけでも効果がありますよ」(浜田峰子さん)
それでは、いよいよ子どもの野菜嫌いを克服させる方法を実践してみましょう!今回協力してくれたコクウ君・3歳は、ブロッコリーが大の苦手なんだとか。そんなコクウ君のために浜田さんが用意したレシピは、「ブロッコリーとズッキーニのトマトパスタ」。お母さんによると「ブロッコリーを見ただけで嫌な顔をする」というから、一筋縄ではいかないかもしれません……!
「『見るのもイヤ!』な野菜の調理には、スライサーが大活躍!今回は、野菜をパスタ状にカットできるスライサーを使って、ブロッコリーとズッキーニをさりげなくパスタに混ぜます。写真のスライサーは、刃の部分が隠れていて安全性が高く、子どもでも扱いやすいもの。子どもにお手伝いをしてもらう際には、安全性の高い調理器具を選ぶのも大きなポイントです。それではさっそく、コクウ君に野菜のスライスをお願いしましょう」(浜田峰子さん)
まずは大嫌いなブロッコリーではなく、ズッキーニのスライスをコクウ君にお願いすることに。すると、おもしろいほど興味を示し、夢中になってスライスしてくれました!
「3歳くらいのお子さんには、生地をこねることや混ぜること、また最後の盛り付けなどをお願いすると、とても楽しんで取り組んでくれます。お手伝いの内容も年齢に応じた段階があるので、お子さんの年齢を考えながら、興味を持ちそうなことにトライさせてみてください」(浜田峰子さん)
コクウ君が「見るのもイヤ!」というブロッコリーは、浜田さんがこっそり穂に近い茎の部分をスライス。スライスしたズッキーニとブロッコリーは、ゆでたパスタと一緒に軽く炒めます。ブロッコリーの葉の部分は、細かく刻んでトマトソースにイン。スライスはとても楽しそうにやってくれたコクウ君でしたが、果たして大嫌いなブロッコリーが入ったパスタを食べてくれるのでしょうか……?
ついに、コクウ君のための野菜料理が完成!メインの「ブロッコリーとズッキーニのトマトパスタ」に加え、ほんのり甘く味つけした「プチトマトのヨーグルトがけ」をデザートに用意しました。
「ソースボトルに入れたトマトソースもポイントです。食べるときに、コクウ君自身にソースをかけてもらい、興味を促します。その流れで、ソースの中とパスタに混ぜたブロッコリーも自然に口にしてくれたらうれしいのですが……(笑)」(浜田峰子さん)
大人一同が見守るなかで、いよいよコクウ君が実食を開始!すると……周囲の心配とは裏腹に、「おいしい!」の声!口の周りをトマトソースでいっぱいにしながら、デザートのプチトマトまで、瞬く間に完食してくれました。浜田さんの狙い通りソースボトルがお気に召したようで、ボトルが空になるまで何度もパスタにかけていたのが印象的でした。
ちなみに、炒めものなどをしている間は、 コクウ君には塗り絵をして過ごしてもらいました。完成した塗り絵はキレイにパウチ(ラミネート)加工して、コクウ君用のランチョンマットに。お皿やフォークも、コクウ君に好きな色、形のものを選んでもらいました。いずれも、「食卓を子どものお気に入りの空間に仕立ててあげることも、嫌いな野菜を食べてもらえるきっかけになる」という、浜田さんの考えからです。
「子どもに野菜を食べさせる際に一番やってはいけないことは、『身体にいいから食べなさい』『賢くなるから食べなさい』などと言い過ぎること。『○○だから△△しなさい』という理由づけの文章は、子どもにはあまりピンとこないものです。そして何より、叱るように言い聞かせても、子どもは野菜に楽しいイメージを抱くことはできません」(浜田峰子さん)
今回ご紹介した、子どもの野菜嫌いを克服させるための方法を参考に、まずは子どもと一緒に楽しむ気持ちで、子どもの野菜嫌いと向きあってみてはいかがでしょうか?
食育実践プランナー講座へのリンク
食生活アドバイザー(R)講座へのリンク