「上司とのコミュニケーションの取り方が難しい」「同僚や後輩とうまくやっていくには、どうしたらいいのだろう」……こうした人間関係の悩みは、働く方が感じるストレスの中でも大きなものの一つです。
今回、20~40代の働く男女378名を対象に行ったアンケートの結果でも、「職場の人間関係に悩んだことがある」と回答した方の割合は実に8割以上。大多数の方が、職場での人間関係の悩みを経験していることが分かりました。また、なかでも「上司・先輩との人間関係に悩んだことがある」と回答した方の割合が7割以上で、最も多いことが分かりました。
※調査対象:20歳~49歳男女(n=378)/ 2018年10月オールアバウト実施
さらに、「職場の人間関係に悩んだことがある」と回答した318名の方に、その解決方法についても聞いてみたところ、上位には「当人となるべく関わらないようにした」(34.3%)、「解決していない」(28.0%)、「趣味や人に愚痴を言うことでストレス発散」(27.7%)という回答が並ぶ結果に。根本的な解決ができていない、また根本的な解決のための積極的な対処を行っていない方が多いことが分かりました。
確かに、職場の人間関係の悩みは対処が難しい場合が多いです。良かれと思って働きかけたことが相手の心証を害してしまえば、チームワークが崩れたり重要なチャンスを失ったりするなどの、業務への支障が生じることもあります。そのため、今回のアンケート結果のように、苦手な人とはなるべく関わらないようにしたり、別のことでストレスを発散したりなど、消極的な対処でやり過ごしている方が多いのが実情です。
しかし、それらの解決方法では、一時の感情は楽になるかもしれませんが根本的な解決にはならず、また人間関係の悩みを解決するための力も育ちません。
そもそも職場では、多様な個性や価値観を持つ人と協力し合いながら仕事を進めていくもの。だからこそ、苦手な人との関わりを回避するのではなく、会話を通じてしっかりとお互いの意思を確認し、お互いが納得できる答えを見つけていくことが重要なのです。ここからは、そんな職場の人間関係をスムーズにするための会話のコツをご紹介します。
それでは、職場の人間関係を円滑にするためには、どのようなコミュニケーションを心掛けると良いのでしょうか。コミュニケーションがスムーズに進みやすくなる、会話の3つのコツをご紹介します。
会話のコツ1:相手の心情をキャッチする
会話の第一ステップは「受容」です。相手の心情を受け止めることですね。例え怒りをあらわにしている人でも、その怒りの奥には素朴な心情があります。相手の様子から心情をキャッチして、フィードバックしてみましょう。
例えば、「だいぶお困りのようですね。もう少しお話を聞かせていただけますか?」「がっかりさせてしまったでしょうか。申し訳ありません」などのように、相手の心情をおもんばかって返答してみましょう。すると、相手は「この人は分かってくれている」「この人となら話が通じそうだ」と感じて安心し、沸き立っていた感情が落ち着きます。こうして、まずお互いの感情をニュートラルにすることで、話し合うための土壌をつくります。
会話のコツ2:アサーティブな会話の宣言をする
会話の次のステップでは、アサーティブな会話の宣言をします。アサーティブ(アサーション)とは、相手の思いも自分の思いも大切にした上で、率直に主張をすることです。
例えば、お互いの主張が食い違っている場合、「あなたはAと思われているようですね。私はこういう理由でBだと思っています。意見が異なりますが、少し話し合って納得できる答えを見つけていきませんか?」などと宣言しましょう。この一言が、お互いにアサーティブになり、建設的な会話を始めるきっかけになります。
慣れていないと、この宣言を煩わしく感じるかもしれません。しかし、これを行うことで会話の目的と方向が定まり、話し合いが進みやすくなります。
会話のコツ3:オプションを提示して、現実的な解決策を見出す
さらに会話の次のステップとして、お互いが歩み寄ることのできるオプションを提示します。時間、場所、協力者などのオプションが増えれば、困難な状況を打開できる可能性が増えていくでしょう。
「自分で考えたオプションを提示して相手に選んでもらう」「一緒にオプションを考えて選んでいく」など、オプションの選定方法は、状況や場面に応じて変えていくと良いでしょう。
ご紹介した3つのコツを押さえて会話をすると、感情的にならずに話が進み、現実的な解決策を見出しやすくなります。
具体的な例を挙げ、前述の3つのコツを取り入れた会話の運び方を解説しましょう。繁忙期などに、「早めに帰りたいのに帰りにくい場合」の会話の見本です。
具体例
上司に「忙しい中、申し訳ありません。今日は家の都合で早めに帰りたいのですが……」と伝えると、上司から「ええ!?困ったなぁ」と苛立ちをあらわにした表情で言われました。この後、どのように対応したら、上司を納得させるような会話ができるのでしょうか。
相手の心情をキャッチする……
すかさず、上司の心情をキャッチし、返答しましょう。「この忙しい時期にご迷惑をお掛けし、申し訳ありません。やはり、今日は残らないとまずいでしょうか?」など。このように心情をキャッチすると、「そうなんだよ。今週中にはこの仕事を終わらせたいんだ。なんとかならないか?」など、相手は本音を語りやすくなります。この段階で、相手の本音をすべて聞かせてもらった方が、その後の調整が進みやすくなります。
アサーティブな会話の宣言をする……
次に、アサーティブな会話の宣言をします。「課長のご意向は承知しました。ただ、今日だけは家の都合でどうしても早く帰らせていただきたいんです。そこで、今週中にこの仕事を終わらせるための案を、少し考えさせていただいてもよろしいでしょうか?」などと伝えて、一度持ち帰ると良いでしょう。
オプションを提示して、現実的な解決策を見出す……
そして、オプションを提示します。「明日は1時間早く出社して、スピードを上げて対応します。また、○○さんにも応援を頼みましたので、今週中には終わらせられると思います」などと実現可能なオプションを提示すれば、上司も納得しやすくなります。
職場の人間関係の悩みは、お互いが納得するような話し合いを行わず、どちらか一方だけが我慢をしたり、わだかまりを放置したりすることによって生じることが多いものです。今回ご紹介したような会話のコツが身につくと、職場の人間関係がスムーズになり、トラブルの発生を未然に防ぎやすくなります。ぜひあなたも、職場のコミュニケーションに取り入れてみてください。
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