資格にまつわる様々なランキングで上位にランクインすることが多い簿記検定。就職・転職に有利で、ビジネスの基本知識といわれるくらい社会的認知度の高い定番資格です。けれども、そもそも簿記検定ってどんなことを学ぶのでしょうか。
企業活動には、たとえば商品の仕入・販売をするなどの際に必ずお金の出し入れが伴います。お金の出し入れは、個人なら通帳や家計簿で自分や家族が分かるように管理すれば済みますが、企業ともなると、お金の出し入れが頻繁に行われるため、効率よく誰もがわかる一定のルールに基づいて記録しなければなりません。その一定のルールに基づいて記録するのが、簿記の技術です。この簿記の技術を学ぶのが「簿記検定」なのです。
簿記を学ぶと、どのようなことができるようになるのでしょうか。先に述べたように、企業のお金の出し入れの流れがわかるようになります。とはいえ、お金の出し入れも企業の成長と共に複雑化をしていきます。
簿記検定では段階的に学べるように、難易度によって3~1級といったレベル分けがされています。簿記検定にはいくつか種類がありますが、ここでは社会人の受験者数が多い日本商工会議所が主催する日商簿記について解説したいと思います。
簿記3級:商店や小規模の企業の経理がわかるようになる
簿記3級では商業簿記について学びます。商業簿記とは、商品を仕入れて販売する活動を記録・計算し、適切な決算書の作成を行うためのもの。いわば商売の原点から学ぶ、と言ってもいいかもしれません。
商売では、たとえば商品の仕入れから売買、それに伴う運送にかかる費用……というように、お金の出し入れが頻繁に行われます。こうしたお金の出し入れをその都度記しておくのが『伝票』で、企業はさまざまな日時・場所で発生した複数の伝票を一つの帳簿に記録していきます。この帳簿を一定のルールに基づいて記入していくのが『簿記』です。
そして一年間記録した帳簿を整理してまとめたのが『試算表』で、それを元に財務諸表を作成するのが『決算』といわれる作業です。年度末になると、「決算で忙しい……」という話をよく耳にしますね。こうした企業活動の一連の流れをつかみ、一定のルールにおける用語や基本的な仕組みがわかるようになるのが簿記3級です。個人事業主、小規模の店舗や企業において知っておけば経理に役立ち、確定申告もスムーズでしょう。
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簿記2級:中小企業から大企業まで財政状態と経営成績がわかるようになる
簿記3級で学んだ内容に加え、さらに高度な商業簿記と、新たに工業簿記を学びます。商業簿記では株式会社会計、本支店会計、連結会計といった範囲もぐっと広くなります。工業簿記では、商品を自社で製造して販売する活動を記録・計算します。
企業も規模が大きくなり、上場したり、支店や子会社を持ったりすると、さらに取引の幅も広がり帳簿も複雑化し関係者も増えていきます。複雑化した帳簿を整理し、財政状態と経営成績を関係者にわかるようにしたものが『財務諸表』です。財務諸表が理解できると、経理・財務の即戦力として実用面で評価されるほか、営業活動やコスト管理などに役立つ知識のため、経理以外の部門でも評価されます。
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簿記1級:経営分析、コンサルティングに活かす
簿記2級、簿記3級で学んだ商業簿記、工業簿記に加え、会計学、原価計算が範囲となります。会計基準や財務諸表等規則、会社法といった企業の会計における法律を踏まえて、経営的視点で管理や分析が行えるようになり、経営者や顧問税理士、公認会計士と対等に話ができるようになります。合格率も10%未満の難易度の高い資格のため、就職活動でも一目おかれるでしょう。
※注:日商簿記の出題範囲は、平成28年度からの3年間で、段階的に変更されることになりました。企業会計も諸制度の変更や、IT化及びグローバル化等の変化に対応して、より実際の企業活動や会計実務に即した実践的なものになる予定です。試験対策には新しい試験制度に対応しているかどうか、注意が必要です。
参考サイト:簿記‐商工会議所の検定試験 https://www.kentei.ne.jp/bookkeeping
簿記の資格は、就職を目指す学生から転職・再就職を考える人まで様々な人が取得しています。さらに仕事に就くことを目標とする人だけでなく、すでに仕事をしていて日々の営業活動に活かしたい、社内でのキャリアアップに活かしたいといった人もいます。企業内でも取得を奨励している企業も多数あり、資格を持っていることで手当てがつく企業もあります。特にお金に直接かかわる経理職や営業職、販売職といった職種や、業種では金融や商社、小売りやサービス業などで注目されています。
先に述べたように企業の規模、業種、業界に関わらず、どの企業でも必ずお金の流れを記録する業務が発生します。また、どの職種、どの業界でもお金の流れを知ることは必要です。それゆえに、簿記はビジネスの基礎知識ともいわれるのでしょう。学んだことは決して無駄にはなりません。ビジネスの基礎から学びなおし、新たなキャリアへの第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
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