多くの人は、転職のタイミングを「自分の都合」で決めています。しかし、実は「求人市場」の動きを観察して、市場のニーズに自分がマッチしているかどうかを見極めることがとても大切です。ほぼ同じ経歴の人が、転職活動を始めるタイミングが半年~1年ずれただけで、かたや求人を選び放題、かたや求人が少なく苦戦する…というのはよくあることです。
そうした求人市場の動向は景気の変動にも影響を受けますが、季節によっても変動します。例えば、中堅~大手企業が年度の中途採用計画を固め、採用活動を開始するのは5月のGW明けあたり(※外資系企業は1月~2月)。また、11~12月頃は、上半期の決算をふまえて来年度の人員計画を立て、「4月1日入社」を前提とした採用を開始する企業が多く見られます。つまり、この時期がもっとも「採用枠」が多く、求職者にとっては選択肢が豊富な時期といえるでしょう。
一方、営業や販売のように大量採用が行われない専門職の場合、ボーナス支給前後の時期や年度末が一つの狙い目。この時期は退職者が出て「欠員補充」目的の募集が増える傾向があるため、通年採用ではあまり見ないような職種の求人に出合える確率が高まります。
なお、1~3月は、新年度が始まる4月までに何としても採用予定数を満たしたい企業が採用活動にスパートをかけます。中には選考基準をゆるめる企業もあり、経験やスキルがやや足りない人が、通常では採用されない企業に受け入れられるケースもあります。
こうした求人市場の動向をつかむには、ある程度の期間、観察を続けるといいでしょう。お勧めしたいのは、各種求人サイトにある「スカウトサービス」の利用です。これは自分の職務経歴や希望条件を匿名で登録しておくと、興味を持った企業や転職エージェントなどから応募をオファーする声がかかるというもの。自分のキャリアを求めている企業がどれくらいあるか、どんな業種が自分の経験を求めているかなど、今の自分の「市場価値」をある程度つかむことができます。今、動くべきかどうかの判断材料の一つとなるでしょう。
STEP1:「できること」を整理する
まずは、自分が「できること」を整理しましょう。これまでの仕事で経験してきたことを細かく「棚卸し」するのです。これは職務経歴書を作成するためには欠かせない作業です。ここで重要なのは「こんな業務を担当した」で終わらせないこと。その業務を経験したことにより、何を学び取り、どんなスキルを身に付けたかまで書き出しておきましょう。例えば、「コミュニケーション力」「折衝力」「企画力」「数値管理力」「プロジェクトマネジメント力」など。
また、担当した仕事での「成果」をまとめることも忘れないでください。このとき、「こんな成果を挙げた」だけでなく、成果につながった理由……例えば、自分なりに工夫したこと、行動したことなども整理します。それを職務経歴書や面接で伝えることで、相手企業に「自社でも活躍してもらえそうだ」というイメージを抱かせることができます。
逆に、壁にぶつかった経験や失敗経験も振り返り、どう乗り越えたか、何を学んだかも整理しておいてください。これも求人企業が注目するポイントです。
STEP2:「やりたいこと」「なりたい自分」を明確にする
自分が本当にやりたいことは何なのか。どう成長していきたいのか。5年後10年後あるいはもっとその先にどんな自分になっていたいのか……それをとことん考えてみましょう。それらを考えず、「有名企業だから」「給与がいいから」「何となく面白そうだから」という動機で応募しても、まず受け入れられません。
採用面接においては、非常に優れたスキルやキャリアを持っているにも関わらず、「目的意識がない」という理由で不採用になるケースは意外と多いのです。一方、「やりたい」「こうなりたい」という目標やビジョンを持っている人は、モチベーション高く仕事に取り組み、成長できると期待されます。本当に自分がイキイキと働ける会社を選ぶためにも、「やりたい」「なりたい」のイメージは明確に描きましょう。
また、「やりたいこと」を明確にすると、今の自分に足りないものも見えてきます。その場合、専門知識の勉強をするなり、資格を取得するなりしてカバーすることで、チャンスをつかみやすくなります。
STEP3:転職時期を決め、活動スケジュールを立てる
転職活動を開始してからたどるステップは、求人情報収集→応募書類作成→応募→書類選考→面接(1~3回程度)→内定→入社。活動開始してから入社までにかかる期間は、一般的には3ヵ月~半年程度と考えてください。なお、新卒採用活動のピーク時期と重なったり長期休暇をはさんだりすると面接がすぐに組めず、長引く傾向があるので要注意です。
「自分が担当しているプロジェクトの切れ目」「自分の後任者の育成・引き継ぎにどれくらいかかるか」「目指す仕事に必要な資格・スキルの取得にどのくらいかかるか」といったことをふまえ、ベストな退職タイミングを見極めましょう。
転職には勢いが必要なこともありますが、事前に準備しておくこと、考えを深めておくことで成功率はぐんと高まります。「これまで」「これから」をしっかりと整理してください。