細川モモさんは、「予防医療」という考え方を日本に広めているパイオニア。特に20~40代の働く女性に向けて食生活を提案し、食を通じて心身のサポートをする専門家です。
忙しく働く女性の健康を見つめ、病院に行くほどではないけれど日々気になる体の不調や、体調を改善するためのアドバイスが受けられる「まるのうち保健室」を主宰し、働く女性たちの健康を、食を通じてサポートする提案をしています(まるのうち保健室は、期間限定で開催)。
「『予防医療』という考え方は、国民医療保険が手厚い日本ではなかなか定着しにくいものでした。特に、元気に働く女性たちは、日々の忙しさの中で自分の体をいたわることを忘れてしまいがち。中でも食生活の乱れが、健康を損なう原因になっていることが多いと感じています」(細川さん)
また細川さんは、つい無意識につまんでしまうお菓子やスナック類に、体に必要な栄養が不足しているサインが隠されていると指摘します。
「突然、甘いものやスナック、刺激が強い激辛フードなどを食べたくなったら、体に必要な栄養が足りていないサインかも。おいしく食べて、ヘルシーに栄養を補うことができる『食欲の置き換えワザ』をご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。欲望のまま食べる前に、ふだんの食生活を見直してみましょう」(細川さん)
つい手に取ってしまう、甘いものやスナック。細川さんは、その一因を「栄養不足」だと指摘します。我慢できない食欲に隠された、あなたに足りていない栄養素とは……?
「今食べたいもの」から分かる、足りない栄養をチェック!
① チョコやドーナツなど「甘いもの」=鉄分不足による貧血かも!?
「疲れると甘いものが食べたくなる!という経験がある人、多いのではないでしょうか。確かに、糖は脳のエネルギー源になる栄養素。体にすばやく吸収され、血糖値を上げる働きがあります。お菓子を食べるとテンションが上がる気がする、元気になる気がするのも、そのせいです。でも、この血糖値の上昇はいわば一時的なドーピングのようなもの。一時的には良いかもしれませんが、根本的な解決にはなっていないこともあります。
というのも、実は体が甘いものを欲している時には、血液の鉄分が慢性的に足りていない、貧血状態になっていることがあるんです。貧血の状態だと、疲れやすかったり集中力がなくなったりすることで、糖分を欲しやすくなるんです」(細川さん)
貧血を補うには「赤身の肉・魚」を食べよう!
「貧血状態が続くと、体の代謝が落ちて体脂肪を溜めやすい体になってしまいます。つまり太りやすくなってしまうんですね。十分な鉄分を摂り、健康的で美しい体を作るには、『赤身の肉、魚』がおすすめ。具体的には鶏レバーや牛肉の赤身、魚だとまぐろやかつお。ほたてやあさりなどの貝類もいいですね」(細川さん)
② ポテトチップス、ピザなどの「脂っぽいスナック」=慢性的な寝不足かも!?
「働き女子に多い『睡眠不足』。実は、日本人の睡眠時間は先進国でトップクラスに短く、中でも東京都民は世界で一番短いと言われています。まるのうち保健室の調査でも、働く女性の平均睡眠時間は5~6時間との結果が出ました。
睡眠不足の怖いところは、脳のメカニズムを狂わせて、必要以上のカロリーを欲してしまうこと。私が予防医療を学んだアメリカでも、睡眠時間が8.5時間のグループと5.5時間のグループでは、同じ摂取カロリーでも5.5時間のグループの方が脂肪の減りが悪く、空腹感も強くなり、脂っこいものや甘いもの、つまり高カロリーな食べ物を欲したという研究結果(※)が報告されています」(細川さん)
※ Nedeltcheva AV, Kilkus JM, Imperial J,et al. Insufficient sleep undermines dietary efforts to reduce adiposity. Ann Intern Med. 2010 Oct 5;153(7):435-41
たっぷりの食物繊維で「睡眠の質」を上げよう!
「諸説ありますが、理想的な睡眠時間は7時間程度と言われています。本当は毎日規則正しい睡眠をとるのが望ましいのですが、毎日忙しく働いていると、なかなか難しいですよね。そんな時はせめて『睡眠の質』を上げましょう。それには、意外かもしれませんが、まず『腸内環境』を整えることが大切です。実は、腸は自律神経を整える臓器。例えば腸内環境が乱れると、自律神経失調症や鬱の症状も出やすくなると言われているんです」(細川さん)
特に細川さんが摂取をおすすめするのが「食物繊維」。食物繊維は、腸の動きを助け、きれいな腸内環境を作るために欠かせない栄養素ですが、近年は良質な睡眠への効果も期待されています。コロンビア大学の研究によると、食物繊維を多く摂っている人ほど睡眠の質が良かったのだとか(※)。日本人女性を対象にした「まるのうち保健室」の調査結果でも、熟睡感を感じられている人は食物繊維の摂取量が多かったことが分かっています。
※ St-Onge MP et al. Fiber and Saturated Fat Are Associated with Sleep Arousals and Slow Wave Sleep. J Clin Sleep Med. 2016 Jan;12(1):19-24.
「食物繊維は根菜類や精製されていないお米、雑穀などに多く含まれますが、それらの食材は外食やコンビニ食ではなかなか摂りにくいかもしれません。でも、コンビニランチに野菜のお惣菜をプラスしたり、外食ではバランスの良い和定食を選ぶなど、少しずつでもいいので意識して摂るようにしましょう。
また、睡眠不足の女性に多いのが、朝食を食べないライフスタイルが定着しているパターン。朝食を抜くと、内臓がなかなか目覚めず、体内時計もリセットされません。また、どうしても昼夜の食事量が多くなり、寝ている間にも消化活動が行われるため睡眠の質を下げることに。結果、朝起きられず、また朝食を抜く……。という、負のループに陥ってしまうんですね。時間がなくて朝食を摂るのが難しければ、果物や豆乳といった簡単なものを口に入れるだけでも、ずいぶん違いますよ」(細川さん)
③ とにかく「辛いもの」が大好き!=亜鉛不足による味覚障害かも!?
「たまに食べる分には問題ありませんが、舌の感覚がおかしくなるほど辛いものが好きで、やめられないという人は要注意。実は、激辛の食べ物が平気という場合、味覚にちょっと問題のあるケースが考えられるんです。味覚に異変が起こるのは『亜鉛』が不足していることが大きな原因。亜鉛は味覚に作用するだけでなく、美しい皮膚や髪、爪を作るためにも欠かせない栄養素です。放っておくと、女性らしい美しさがどんどん損なわれてしまうかもしれませんよ」(細川さん)
亜鉛を補い、女性らしい体を作るスーパーフードは、「牡蠣」!
「私が、すべての女性に積極的に食べることをすすめている食材は、牡蠣。亜鉛の含有量が、その他の食材に比べてダントツに高いんです。日本一の美女候補たちへの栄養指導でも『キレイになりたければ牡蠣を食べて!』と常に言っていました(笑)。亜鉛は、体の中に貯蓄されにくい栄養素。また、インスタント食品の添加物や、アルコールの代謝で消費される栄養素でもあるので、日頃から少しずつでもいいので意識して摂って欲しいですね。亜鉛は牛肉やパプリカ、卵、納豆にも含まれますが、やっぱり量は牡蠣が一番!苦手な人も、調理法を工夫して、ぜひ克服して欲しい食材です」(細川さん)
参考文献
講談社「美人の食卓は1日2,000kcal」細川モモ 著
「Will Conscious Marunouchi「まるのうち保健室」調査」Copyrightc 2015 三菱地所株式会社・一般社団法人ラブテリ
2011~2015ミス・ユニバース・ジャパンのビューティーキャンプで講師をつとめ、日本一の美を競う女性の健康をサポートしてきた細川さん。私たちは「キレイになる=痩せること」とつい思ってしまいがちですが、細川さんの理論はむしろ逆なのだとか。
「アメリカで栄養指導を学び、世界の舞台で輝く女性を見てきて思うことは、日本の女性はとにかく痩せすぎている、ということです。大切なのは体重を落とすことではなく、美しい筋肉が付いた、メリハリのある女性らしい体。ミス・ユニバースの審査では、ロングドレスと水着の審査がありますが、ここで舞台映えするには痩せていてはだめ。そのために、女性たちには『もっと食べる』ための食生活を指導しています」(細川さん)
しかし、「食べると太ってしまうことが怖い……」という気持ちも事実。規則正しく食べられない、またはダイエットの反動でドカ喰いしてしまうなど、食欲のコントロールに悩んだ時はどうすればいいのでしょうか?
「むやみにジャンキーなものを食べていたら、もちろん太ります。たっぷり食べて、栄養を美しさに変えるためには、やっぱり『食べ物の質』を変えることを目指しましょう。甘いものなど間食がやめられなかったら、3食を規則正しく食べ、突然我慢できないような空腹を感じてしまう状態を避ける。脂っぽいスナックに手が伸びそうになったら、食物繊維が豊富な豆乳ココアや海藻スナックにしてみる……など。いきなり我慢しすぎる食生活はストレスを溜める原因にもなりますから、食べたい気持ちを前向きにとらえ、できるだけ良質なものをおいしく食べる『置き換え』をしてみませんか?」(細川さん)
いかがでしたか?細川さんは、日本を代表する美しい女性を育ててきたスペシャリスト。世界の美しい女性たちと並んでも見劣りのしないボディを作る秘訣は、やはり「正しく食べること」にあるとおっしゃいます。
「選ばれたミスは、舞台で受賞することがゴールではありません。その後、各国の女性を代表する存在として人前で活躍し続けるためには、一生キープできる美しい体を作ることが必要なんです。そのためには、私たち指導者に言われたことを実践するだけでなく、本人が正しい食の知識を持ち、自分に必要な栄養を補う食生活を続けられることが大切。そんな女性たちを育てることが、私たちの目標です」(細川さん)
食べることは、毎日のことであり、一生のこと。美しい女性であり続けるために、あなたも正しい食の知識を学んでみませんか?
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