最近、涙を流したのはいつですか?もしも長い間涙を流していないのであれば、涙活イベントに参加してみると新しい発見があるかもしれません。そもそも涙活とは、泣ける本や映画を通じて能動的に涙を流し、ストレス解消を図る活動のこと。「スッキリした」「前向きになれた」と感じる人が続出しており、「泣き」が全国的にブームなのです!
動画を観たり音楽を聴いたり、婚活パーティーとコラボしたり……と、涙活イベントの内容はさまざま。今回潜入したのは、朗読劇の涙活イベントです。主催するのは、「今まで1万7千人を泣かしてきた」という、涙活発案者の寺井広樹さん。その寺井さんが執筆した『人生の大切なことに気づく 奇跡の物語』(かんき出版)を役者さんたちが朗読し、それを鑑賞して涙を流すというコンセプトです。さっそく、そんな涙活イベントの様子をご紹介しましょう。
朗読劇が行われたのは、40人ほどが収容できる小劇場。あっという間に満席となり、涙を流したいという人たちの需要の高さが伺えます。参加者の年齢層は10~50代と幅広く、女性の方が若干多い模様。開幕前から会場の照明は薄暗く、ピアノの穏やかなBGMが流れ、自然と心が落ち着いていきます。寺井さんいわく、泣きやすい環境をつくるために、隣の人との距離感も考えてイスを配置しているそうです。
いよいよ、朗読劇の上演がスタート。前半は、「ひと言のありがたさ」をテーマにしたショートストーリーの朗読で構成されています。長年連れ添った妻との別れ。子どものころに住んでいた街の本屋さんと家族の思い出。「家族」や「ペット」などを題材にした身近な物語が多いので、自分のことのように共感しながら聴くことができます。淡々と、でもどこか優しい役者さんの朗読はもちろん、BGMや照明も効果的に使われ、目を閉じれば情景が浮かぶような臨場感もすばらしいです。
後半には、「ボクと7通の手紙」という物語が披露されました。主人公の女の子と「ボクちゃん」というペットの犬、そして家族の絆を描く、実話から生まれたストーリーです。この辺りになると、会場のあちらこちらからすすり泣く声が……!半数以上の参加者がハンカチで涙をぬぐっており、「さすが涙活!」とうなってしまうような光景を目の当たりにしました。さらに涙を通じて、会場には不思議な一体感が。集まった多くの参加者たちと感動をシェアできるのも、涙活イベントの大きな魅力かもしれません。
感動の涙がつくりだす静かな熱気に包まれながら、約1時間30分の朗読劇はあっという間に終了。鑑賞後の涙活イベントの参加者に感想を聞いてみました。
――朗読劇を鑑賞した感想を教えてください。
「自分の過去と重なるような身近なテーマのお話が多かったので、共感でハンカチが手放せませんでした。特に印象に残ったのは、ペットが亡くなってしまうお話。私も実家でペットを飼っているので、生きている間にもっと会いに行こうと思いましたし、離れて暮らす家族の声も久しぶりに聞きたくなりました」(甲斐田さん・写真左)
「生まれてすぐに亡くなってしまう赤ちゃんのお話があったのですが、私の親戚で同じような経験をされた方がいるので、胸が痛くなりました。同時に、今、自分が生きていることの奇跡に自然と涙があふれましたね。これからの生き方や、どんな時間の使い方をしていくべきかを考えさせられました」(中條さん・写真右)
――お2人が今日、涙活イベントに足を運んだきっかけは?
「もともと、2人とも涙活に興味があったので、機会があったら足を運ぶつもりでした。本を読んだり映画を観たりして自然と涙を流すことはありますが、『泣こう』と思って進んで泣いたことはありませんでしたね(笑)。そういう意味でも、今日は貴重な経験ができました」(中條さん)
――涙活イベントが終わった今、何か心に変化はありますか?
「気持ちがリセットされました。涙と一緒に、ストレスやネガティブな気持ちも身体から出ていってくれた感じです」(中條さん)
「スッキリしました!肩の力が抜けて、『明日からまたがんばろう!』と前向きな気持ちです。今日はあいにくの雨ですが、この会場から外への一歩を軽やかに踏み出せそうな感じ(笑)。今後も、定期的に涙活を続けていきたいですね」(甲斐田さん)
そもそも、涙活は1人でもできるもの。あえて涙活イベントに参加する意味や、朗読劇ならではの良さを、主催者の寺井さんに伺いました。
「イベントで大人数で涙活をすることの一番のメリットは、もらい泣きの効果を期待できる点にあります。そして朗読劇は、涙活と意外に相性がいいんです。映像よりもイマジネーションがふくらみますし、身近なテーマのお話が多いので、共感しやすいと思います」(寺井広樹さん)
参加者への『泣きポイント』は、どのようにしかけるのでしょうか?
「傾向的にはやはり、家族やペットもの、死をテーマにした作品で泣く方が多いので、自然とそうしたお話が中心になってきます。ただし、人によって涙のツボは違い、毎回のイベントで全員を泣かせるのは至難の技。これから涙活に取り組む方は、まずはご自身の涙のツボを知ることから始めるといいと思います」(寺井広樹さん)
「巷の「感動作」を観ても全く泣けない……」という方も、決して感受性が乏しいわけではなく、たまたまその作品が自分の涙のツボを刺激しなかったからかもしれませんね。それでは、自分の涙のツボはどのように探せばいいのでしょうか。
「動画サイトで泣ける動画や音楽などを検索するのがいいでしょう。私は親子愛や祖父母愛に弱く、涙活の際は必ずそれらがテーマの作品を鑑賞します。過去の経験や育った環境が大きく影響しますので、自分の涙のツボを知ることは、ある種の自己分析にもつながるんですよね。そういった意味でも、涙活はとても奥が深いと思います」(寺井広樹さん)
「デトックス」や「ストレス解消」からさらに踏み込んで、自己分析につながることが、涙活の本当のおもしろさかもしれません。あなたもぜひ一度、涙活によるご自身の変化を体験してみませんか?
まなびスタイル診断へのリンク
生活心理学講座へのリンク