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2019.04.04

今さら聞けない給与明細の見方!控除って何?社会保険や健康保険、雇用保険の違いは?

今さら聞けない給与明細の見方!控除って何?社会保険や健康保険、雇用保険の違いは?

会社から発行される給与明細。たくさんの文字や数字が並んでいて、結構ややこしいですよね。「もらえるお金」と「引かれるお金」があることは理解していても、どのような仕組みになっているのかまでは、掴みきれていない方も多いのではないでしょうか。しかも、給与明細については、上司や同僚に「これはどういう意味ですか?」などと質問しづらいもの。そこで今回は、ファイナンシャルプランナー(FP)の櫻庭明美さんに、給与明細の見方を解説していただきました。

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「基本給」と「手取り」の関係は?なぜ「控除」という名目で引かれてしまうの?

「基本給」と「手取り」の関係は?なぜ「控除」という名目で引かれてしまうの?

今回、給与明細の見方について解説していただくのは、「株式会社FPバンク」に所属する、ファイナンシャルプランナー(FP)の櫻庭明美さんです。

――そもそも給与明細とは、会社から毎月受け取るのが当たり前のものなのでしょうか?

「はい。全ての会社は所得税法第231条によって、給与明細を従業員に交付することが義務づけられています。決まったフォーマットがあるわけではなく、体裁は会社ごとにバラバラなのですが、勤怠・支給・控除という3項目は、どの会社の給与明細にも盛り込まれているはずです」(櫻庭明美さん)

――それでは、各項目の見方を教えてください。まずは「勤怠」の項目についてお願いします。

「『勤怠』の項目には、主にその人の出勤日数や欠勤日数、有給休暇を消化した日数が書かれています。あとは、どのくらい時間外労働(残業)をしたのかも一緒に記載されますね。また、22時から5時までの間に働くと深夜労働扱いとなり、その時間数も記載されます」(櫻庭明美さん)

――「勤怠」の項目は、給与明細の中でもシンプルで分かりやすいですね。続いて「支給」や「控除」の項目についても教えていただけますでしょうか。

「『支給』の項目でメインとなるのは『基本給』で、これは時間外労働や深夜労働をしたかどうかに関わらず、毎月もらえることになっているお金です。この『基本給』に手当をプラスしたものが、『総支給額』になります。手当には、残業手当や深夜手当、通勤手当(交通費)や住宅手当、さらには家族手当など、さまざまな種類がありますよね。
ただし、ここで注意したいのが、『総支給額』がそのままもらえるわけではないということ。実際にもらえるのは、『総支給額』から『控除』がされた後の『差引支給額』で、これがいわゆる『手取り』と呼ばれているものです」(櫻庭明美さん)

――なるほど、「控除」がされるわけですね。ざっくり言うと、「手取り」が「もらえるお金」で、「控除」が「引かれるお金」ということでしょうか?

「はい。しかも『控除』は1つだけではなく、『健康保険』や『厚生年金』など、複数に分かれているんです。社会人1年目の方などは、『総控除額』を見て目を疑いたくなってしまうかもしれませんね」(櫻庭明美さん)

――確かに、せっかく働いて稼いだお金からどうして引かれてしまうのかと、理不尽に感じている方もいるかもしれません。「控除」って、本当に必要なんですか……?

「もちろんです。むしろ、『控除』によってお金を引かれるのは、結果的には自分のためだと言えます。例えば、『健康保険』に加入して毎月の給与から保険料を支払っていれば、病院にかかる時の自己負担額が3割で済みます。また『厚生年金』も、加入していた年数が長ければ長いほど、将来受け取れる老齢年金の金額が増えるんです」(櫻庭明美さん)

「社会保険」と「健康保険」と「雇用保険」って、どう違うの?

今さら聞けない給与明細の見方!控除って何?社会保険や健康保険、雇用保険の違いは?

――「控除」について、もう少し掘り下げていきましょう。「控除」の項目には、「社会保険」や「健康保険」、「雇用保険」など、似たような名称が並んでいますが……。

「『社会保険』というのは、『健康保険』や『厚生年金』、『雇用保険』、『介護保険』をひとくくりにした総称です。同じ○○保険という名称ではありますが、『健康保険』は『社会保険』の一部なんです。会社によっては給与明細に、これらの控除額を『社会保険合計』として、まとめて記載しているところもあります」(櫻庭明美さん)

――「社会保険」という名前の保険が存在するわけではないのですね。

「その通りです。『健康保険』には、先ほどお話ししたように、医療費が安くなるなどのメリットがあり、自分の会社が加入している健康保険組合に保険料を納めることになります。保険料は、納める人の『標準報酬月額』によって変わりますが、支払う金額は会社と折半になります。
また『雇用保険』は、日本政府による保険制度で、失業してしまった時などに手当が出ます。自分と会社で保険料を出し合うという点は『健康保険』と共通ですが、『雇用保険』で支払う保険料は業種によって計算方法が異なり、負担の割合は会社の方が大きくなります」(櫻庭明美さん)

――保険ごとに、役割も違えば控除額の決まり方も違うということですね。

「そうですね。また『介護保険』と『厚生年金』も、『健康保険』と同様、保険料は会社と折半するのですが、このうち『介護保険』の支払い対象は40歳から64歳までの方だけです。それ以外の年齢の方は、給与明細に空欄ができていても間違いではないので、ご安心ください」(櫻庭明美さん)

――ちなみに、先ほど「健康保険」のお話の中で、「標準報酬月額」という言葉が出てきましたが、どのように計算するのでしょうか?

「まず、4月から6月までの『総支給額(報酬)』を平均して、『報酬月額』を出します。次に、全国健康保険協会が都道府県ごとに発表している『保険料額表』をチェックしましょう。健康保険と介護保険は50等級、厚生年金は31等級に分かれており、『報酬月額』からどの等級に当てはまるのかが分かります」(櫻庭明美さん)

――かなり細かく等級が分かれているんですね。

「例えば、『報酬月額』が18万5千円から19万5千円までの範囲であれば、『健康保険』と『介護保険』は16級、『厚生年金』は13級で、『標準報酬月額』は19万円という扱いになります。この金額に一定の保険料率を掛けたものが、その等級の方が支払う社会保険料になるというわけです」(櫻庭明美さん)

「住民税」の仕組みとは?社会人3年目の「手取り」が、1年目より低くなることも

今さら聞けない給与明細の見方!控除って何?社会保険や健康保険、雇用保険の違いは?

――引き続き、「控除」について伺っていきましょう。「社会保険」の他に、「所得税」や「住民税」も「総支給額」から引かれています。

「『所得税』は、日本の税収の中で最も多くの割合を占めており、『法人税』や『消費税』などを上回っています。『1年間にどのくらい稼ぎそうか』という見込みの年収を元に計算され、月々の給与から『源泉徴収』という形で支払います。年収が高い人ほど税率が高くなる『累進課税制度』が採用されているのも特徴でしょう」(櫻庭明美さん)

――「源泉徴収」は、会社が給与から「所得税」分の金額を「天引き」し、従業員の代わりに納める仕組みということでよろしいでしょうか?

「そういうことです。もちろん、見込みの年収と最終的な年収にはギャップがありますので、年間を通じて『実は所得税を多く払い過ぎていた!』ということが起こり得ます。ですから、毎年12月に行う『年末調整』によって、余計に払っていた分の『所得税』を返してもらわなければなりません」(櫻庭明美さん)

――続いて、「住民税」について教えてください。この税金は、必ずしも全員が納めているわけではないと聞いたんですが……。

「『住民税』を納めなくてもいいのは、社会人1年目の方ですね。『住民税』は、『所得税』とは違って、前年の年収によって金額が決まりますが、社会人1年目の方は前年の稼ぎがないため、『住民税』の支払いは2年目からスタートします」(櫻庭明美さん)

――社会人2年目になると、「住民税」という新たな「控除」が登場するということですね。

「そうなんです。また社会人3年目の方は、さらに『住民税』に苦しめられる可能性もあります。というのも、社会人2年目の方は、1年目の4月から12月までの9ヵ月間で稼いだ給与が『住民税』の対象になります。しかし、社会人3年目の方は、2年目の1月から12月までの12ヵ月間で稼いだ給与に対して『住民税』が発生するんです。3年目にしてとうとう、『住民税』の全額負担が始まるというわけですね」(櫻庭明美さん)

――「住民税」の影響で、社会人3年目の『手取り』が、1年目や2年目よりも低くなることもありますか?

「残念ながらあります。要するに、社会人1年目は『住民税』なし、2年目は前年の9ヵ月分、3年目以降は前年の12ヵ月分ということですからね」(櫻庭明美さん)

その給与明細、本当に正しい?チェックすべき項目とは

その給与明細、本当に正しい?チェックすべき項目とは

――給与明細の基本的な見方については分かりました。最後に、給与明細を受け取った際に、特にチェックすべき項目がありましたら教えてください。

「給与に大きく反映されやすいのは、残業手当や深夜手当でしょう。どの時間帯で働いたかによって支給額が変動しますから、自分でもタイムカードなどのデータを把握しておいて、給与明細と照らし合わせた方がいいかもしれません。
また、有給休暇の残り日数が記載されていたら、そちらもきちんと確認してください。消化しなかった有給休暇は、付与されてから2年間は保持することができます」(櫻庭明美さん)

――なるほど、やはり給与明細はきちんと確認した方がいいですね。

「また最近は、給与明細を手渡しではなく、PDFファイルなどのデータで発行する会社も増えてきました。ペーパーレスで効率的だとは思いますが、データ化により給与明細をあまりチェックしないという方も多くなってきた気がします。個人的には、データで発行される場合でも紙に印刷してチェックし、さらに直近の2年分くらいは保管しておくべきだと考えています」(櫻庭明美さん)

給与明細の見方を知って、毎月しっかりとチェックしよう

いかがでしたか?給与明細の見方や「控除」の仕組みを知れば、お金や仕事に対する考え方が変わってくるのではないでしょうか。

基本的なチェック項目を押さえ、毎月しっかりとチェックすれば、万が一ミスがあった時にも気付きやすくなるはず。自分が働いて得た給与や、納めている保険料や税金についてしっかりと理解しておくことは、社会人としてあるべき姿ですよね。あなたもこの機会にぜひ、ご自身の給与明細とじっくりと向き合ってみてください。

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イラスト/もりいくすお
取材協力
櫻庭明美(さくらばあけみ)さん
ファイナンシャルプランナー(FP)。バスガイドや保険会社での勤務を経て、現在は「来店型FP相談所」である「FPバンク」の一員として、ライフプランニング、資産運用、住宅購入サポート、相続対策、保険見直しなど、お金にまつわる幅広い個別相談に対応しており、その数は年間100世帯以上。
 

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