アロマテラピーと聞くと、香りによる癒やしの効果やリフレッシュの効果がある、というイメージが強いのではないでしょうか。しかし、実はそれだけではなく、健康や美容にも幅広い効果が期待できるんです。
そこで今回は、英国IFA認定プリンシパルチューターであり、また日本アロマ環境協会認定アロマテラピーインストラクターでもある八木晃子先生に、アロマテラピーの魅力についてお話を伺いました。八木先生はアロマ教室を開催し、美容と健康のためのアロマテラピーを伝えています。
はじめに、アロマテラピーとはそもそもどのようなものなのか、八木先生に聞いてみました。
「アロマテラピーとは、『精油』を使って、心身の健康を維持したり不調を穏やかに回復させたりして、健康や美容に役立てていく自然療法のことです。
『精油』は植物の香り成分を抽出したもので、11世紀頃にアラビアからヨーロッパに伝わりました。『精油』には抗菌作用があり、14世紀にペストが大流行した際は、ペストの感染を防ぐための『悪魔除け』として使われていたそうです。
また14~18世紀頃のヨーロッパでは、ローズマリーなどをアルコールに漬け込んで蒸留した『ハンガリーウォーター』が、体力回復や神経症に効果があるとされ、ナポレオンも愛用していたようです。このように、アロマテラピーには癒やし以外にも、さまざまな効果があることは古くから知られていて、健康や美容にも活用されてきた歴史があるんです。
日本では、香りによる癒やしやリラックスの効果に焦点が当たることが多いですが、健康や美容にも役立つアロマテラピーの効果を知って、風邪予防や冷え予防などさまざまな目的に活用してほしいですね」(八木晃子先生)
それでは具体的に、健康や美容面でのアロマテラピーの効果と、それぞれの効果を持つ精油の種類について教えていただきましょう。
「一つの精油には数十から数百種の成分が含まれ、その効果もさまざまです。代表的なものをご紹介しますが、香りが好みでないと続かないので、おすすめした精油の中から、好きな香りのものを選んでくださいね」(八木晃子先生)
1:抗感染作用の効果……風邪、インフルエンザの予防に!
おすすめの精油:ティートリー、ニアウリ、ユーカリ、レモングラス
中世ヨーロッパでペストの予防に活用されたように、芳香植物の抗感染作用はよく知られています。
「ティートリー」「ニアウリ」は、感染症の原因となるさまざまな標的に作用し、抗ウイルス作用だけでなく、細菌に対する抗菌作用、カビなどに対する抗真菌作用もあると言われています。「ユーカリ」にも、抗ウイルス作用、抗菌作用がありますが、こちらは特に呼吸器系に親和性があり、去痰(きょたん)作用や鎮咳(ちんがい)作用があると言われています。
エスニック料理に使われるハーブとしてもおなじみの「レモングラス」は、爽やかな香りで使いやすいのが特徴です。抗感染作用に加え胃腸に働きかける作用もあり、腸内に溜まったガスを排出するので、おなかのハリなどの改善が期待できます。
2:循環促進・利尿作用の効果……肩こり、冷え、むくみの予防、改善に!
おすすめの精油:レモン、ローズマリー、ゼラニウム
肩こり、冷え、むくみは、代謝の悪化が原因の一つ。血液の流れをよくしたり余分な水分を排出したりすることで代謝を促進すると、予防、改善につながります。
「レモン」「ローズマリー」には、血液の流れをスムーズにする働きがあり、血行を促進して肩こりや冷えを防ぎます。バラのような華やかな香りで人気の「ゼラニウム」は、体内の余分な水分や老廃物の排出を助けるので、むくみの改善におすすめです。
3:ホルモン調整作用の効果……女性特有のホルモンバランスの乱れからくる不調に!
おすすめの精油:フェンネル、クラリセージ、バイテックス
女性ホルモンのバランスが乱れると、生理不順となり、肩こりや疲れやすさなどさまざまな心身の不調が現れます。そしてアロマテラピーには、ホルモンバランスの乱れを調整する効果が認められています。
「フェンネル」「クラリセージ」は、女性ホルモンの一種であるエストロゲンと似たような作用があり、月経トラブルや更年期からくる不調におすすめです。ただし、エストロゲンにより助長されるような症状(子宮筋腫や乳腺炎など)は悪化するおそれがあるため、使用には注意が必要です。
「バイテックス」は、女性ホルモン分泌の指令を出す脳下垂体に直接働きかけてホルモンバランスを調整するので、エストロゲンにより助長されるような症状を持っている方にも使用できます。月経前症候群(PMS)や更年期障害を改善する働きに加えて、月経がスムーズになるように促して周期を整える働きもあると言われています。
健康や美容に効果的な精油を、毎日の暮らしに手軽に取り入れるためには、どのように使えばいいのでしょうか?
「精油は非常に小さい分子構造をしているので、揮発した香りを吸い込むと、気管から肺に到達し、さらに血管から取り込まれて全身を循環します。また皮膚に塗布すると、表皮から奥の真皮層へ浸透して、血管に吸収されます。つまり、すごく簡単に体内に取り入れることができるんです。特殊な器具を使わなくても大丈夫なんですよ」(八木晃子先生)
ごくシンプルな使い方でも、十分効果が期待できるとのこと!そこで、おすすめのアロマの活用法とレシピを教えていただきました。
アロママスク
風邪が流行っている時期や、花粉症の時期には欠かせないマスク。アロママスク用のスプレーを作って、風邪の予防に役立てましょう。
無水エタノール20ml、精油20~30滴を混ぜ、精製水(ミネラルウォーターでもOK)10mlを加えれば完成です。鼻や口はデリケートなので、マスクの外側からひと吹きします。スプレーを作る時間がない時は、精油を1、2滴ティッシュに垂らしてからマスクに挟み込んでください。精油が肌に直接触れないようにしましょう。抗感染作用のある、ティートリー、ニアウリ、ユーカリなどの精油がおすすめです。
アロマバス
お風呂に精油を入れると、揮発した香りを吸い込むことによって風邪予防の効果が期待できます。精油はお湯に溶けないので、エタノールやアルコール度数の高いウォッカ、はちみつなどと混ぜてから入れましょう。
ただし、レモンやグレープフルーツなど柑橘系の精油は、肌にピリピリと刺激を与えるため、肌の弱い方は1、2滴にとどめ、他の精油とブレンドするといいでしょう。
アロマバスでは、ティートリー、ゼラニウム、ローズマリー、それにラベンダーなどがおすすめです。これらの精油は皮膚に優しく、リラックス効果やリフレッシュ効果があり、抗菌・抗炎症・免疫力アップに役立ちます。量は、アルコール20ccに精油は5滴で十分です。日本酒を使った酒風呂で楽しみたい場合は、日本酒100~200ccに精油5滴をよく混ぜて入れましょう。
バスソルト
アロマバスの効果をさらに高めたい時は、バスソルトを作るのがおすすめです。無水エタノール小さじ1に精油5滴を混ぜ、重曹大さじ2、クエン酸大さじ1を加えて混ぜ合わせるだけで完成。重曹とクエン酸を混ぜると、お湯の中でシュワシュワと炭酸ガスが発生し、代謝が高まって冷えや肩こりに効果的です。バスソルトにおすすめの精油は、アロマバスと同様です。
蒸気吸入
洗面器やボウルに70度くらいの温度のお湯を入れ、精油を3滴垂らします。バスタオルを頭からかぶり、目を閉じて蒸気を吸入します。肌に直接触れないので精油を選びませんが、ローズマリー、ユーカリ、ティートリーは炎症を鎮める効果があるため、喉の痛みや鼻づまり、カタルなどのつらい症状を緩和します。また、皮膚の浄化になるためスキンケアにも一役買います。
アロマテラピーの注意事項
原油での皮膚への使用や、飲用は避けましょう。乳児には使用せず、幼児、児童も使用量には注意が必要です。
また、ベルガモット、レモンなど柑橘系果実を圧搾して絞った精油やセリ科の精油は光毒性があるものがあるので、塗布後12時間は紫外線を避けましょう。
具合が悪くなったり刺激を感じる時は、すぐに使用を中止してください。アロマオイルの使用にはそれぞれ注意事項があるので、使用前に必ず確認してから使用するようにしてください。
いかがでしたか?アロマテラピーは、香りによる癒やしやリフレッシュの効果以外にも、さまざまな効果が期待できます。今回ご紹介した活用法やレシピから気軽にアロマを始めれば、その効果が実感できて、もっと積極的に活用したくなるかもしれませんね。アロマテラピーを毎日の暮らしに取り入れて、健康や美容にも役立てていきましょう!
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