「家事の中でも、料理は特に苦手かもしれません。朝、昼、晩と献立を考え、買い物や下ごしらえをして、片付けをして……。やることが多すぎて、できれば誰かに料理をやってほしいと思います(笑)」(マキさん)
そんなマキさんですが、著書「しない料理」で提案している超シンプルな料理が人気を博しています。料理が苦手にもかかわらず、充実した食生活を楽しんでいるマキさんに、読者の皆さんが憧れや共感を持っているのかもしれませんね。
「料理は、掃除や洗濯とちがって、ただモノを減らせば良いというわけではないのが悩ましいですよね。食事は家族の体と健康をつくる一番の基本ですし、何より食べることって楽しい♪
私自身がおいしいごはんを食べることが大好きで、『料理が苦手でも、最低限の手間や時間で家のごはんをランクアップさせたい!』と思ったことが、私がシンプル料理を始めたきっかけでした」(マキさん)
確かに、手間や時間をかけずに、おいしくて健康的な自炊ができたら理想的。実際、マキさんが提案する料理は、今までの料理の概念をひっくりかえすようなアイデアが詰まっているんです。目からウロコがポロポロ落ちる、マキさんの「○○しない料理」のヒミツとは……!?
「独身の頃は、そもそも料理をしなくても何とかなりました。コンビニのお弁当や外食で1日の食事をまかなうことも多かったですね。でも、妻になり、母になり、家族の健康を支える立場になると、誰がどんな食材を使って作ったのかわからない料理を毎日出すというのは、体調管理の面からも、経済的にも厳しい……。
とはいえ、いきなり料理上手になれるわけもなく(笑)。仕事を続けながらの育児や家事の合間に『料理も作らなきゃ……』という生活に、最初はかなり振り回されていました。そこで、自炊への自分なりの免罪符というか、『これくらいでOK』という基準をつくってみたら、料理がちょっとずつラクになったんです」(マキさん)
「料理が苦手」とはっきりおっしゃるマキさんが、毎日料理を続けられるようになった「○○しない料理」のコツについて、具体的に教えていただきました。
コツその1:「切らない」「計らない」「味付けない」
「料理は、1日のいろんなスケジュールと同時進行ですよね。たとえば、朝は子どもの支度をしながら、自分も仕事に出かける準備をしなきゃいけない。夜は子どもの宿題をみたり、お風呂にはいったり、リラックスしたりする時間も必要。
忙しくて、食事の準備に包丁やまな板を使う手間や時間だってカットしたいこともありますよね(笑)。そんな時は、切らなくてもいい食材を使ったメニューですませてOK。たとえば、あさりの味噌汁、生野菜を手でちぎって並べるだけのサラダに、トースターやグリルで焼くだけの魚の切り身。これにごはんがあれば、立派なディナーになります。
また、私は食材や調味料の計量をやめました。家庭の料理ですから、味見してみておいしいと思えばよし、としています。さらに言ってしまうと、私はメニューによっては味付けを食べる人に任せて、キッチンでは一切味付けをせずに出してしまうことも(笑)」(マキさん)
コツその2:「道具を持たない」
「わが家のキッチンはとても狭いので、調理器具は少数精鋭に絞り込んでいます。まず、大さじ、小さじ、ゴムベラ、ボウルといった『調理するためだけの道具』は、思い切って断捨離しました。計量したい場合はテーブルスプーンやグラスを代用し、ボウルの役目は鍋で十分。
また、フードプロセッサーのような調理家電も、使いこなせないので手放しました。『多機能』は、一見便利に見えますが、たまにしか使わないのに収納スペースを取ったり、細かいパーツを洗って片付けるのが面倒だったりして、結局使わなくなってしまって。
また、特に忙しい朝は、食器類もワンプレートに盛りつけられるシンプルな木の皿を活用することで、『どのお皿に盛りつけよう?』と悩む時間も断捨離してしまいました」(マキさん)
その3:「作り置きしない」
「以前は、一週間分の常備菜を作り置きすることにチャレンジしていたこともありました。でも、同じ味に飽きちゃうことも多いんですよね。全部食べ切ることができたらいいですが、家族が作り置きのおかずに手を出さなくなると、結局私が消費するはめになることも(笑)。作り置きは、常備菜の管理をきっちりできる人にはおすすめですが、私のような『したくない』性格には向いていないような気がしています。そういう人は、無理に作り置きをしなくても良いですよ。
とはいえ、全く仕込みをしていない状態から料理をするも、それはそれで大変。野菜のパッケージをはずしたり、洗ったり、切ったりという作業を毎回するのって、地味に面倒なんですよね。そこでおすすめなのが、最低限の下ごしらえだけですませる『半調理』です。たとえば、ほうれん草やブロッコリーなどの葉野菜は、茹でてから保存容器に入れて冷蔵庫にストック。きゅうりやレタスなどサラダに使うような野菜は、洗って刻んでジッパー付きのビニール袋で保存。また、野菜類にプラスして蒸した鶏肉をストックしておくと、サラダに添えるだけで簡単にタンパク質を摂ることができます。
味が完璧に仕上がったおかずはアレンジしにくいですが、『半調理』ならその時食べたい味にできるので、食材を使い切るのも簡単ですよ」(マキさん)
マキさんがこの時冷蔵庫に常備していたのは、茹で野菜、茹で鶏、ネギだれ。ネギだれは焼いたお肉にかけるだけでとってもおいしい一品になるのだとか。
マキさんの「○○しない料理」の考え方を実践していくと、毎回の料理に悩むことがなくなるどころか、何も考えなくても一食出来上がってしまうこともあるんだとか。ご家族にも好評だという、簡単時短レシピを教えていただきました。
味付けの決め手!「基本の甘酢」
「甘酢は、わが家の定番調味料です。500mlの保存ビンに、砂糖100gくらいと酢を注ぎ、砂糖を溶かすだけ。塩やしょうゆを加えるとアレンジの幅がせまくなるので、酢と砂糖だけでストックしておくのがポイントです。塩を少しプラスして野菜の千切りをマリネしたり、新しょうがを漬け込んでガリを作ったり、醤油とごま油と混ぜてドレッシングにしたり……。かなりの頻度で使います。わが家の人気は、甘酢と醤油を2:1で合わせ、鶏むね肉をさっと煮て予熱で中まで火を通した、鶏肉の甘酢煮。そのままでも十分おいしいですし、サラダやサンドイッチにもアレンジできるので便利ですよ」(マキさん)
テーブルの上で味付けしちゃう!「茹で鶏のレタス手巻き」
「『今日は料理したくないな……』という時のお助け料理です。レタスや大葉などの葉物と、あらかじめ半調理しておいた茹で鶏をワンプレートに盛り付け、自家製の梅干しを巻けば完成です。食べる人が自分で巻くので、私は調理せずにただ出すだけ。家族を食卓の上で自然に巻き込んで、自分だけで料理を抱え込まないようにすると、『料理しなきゃ!』というストレスから開放されますよ」(マキさん)
簡単&ヘルシーおやつ!「さつまいものかりんとう」
「市販のおやつも利用しますが、たまに子どもが食べるおやつを手作りすることもあります。子どもに好評だったおやつは、溶かしバターに砂糖を加えたソースに、食べやすく切ったさつまいもをくぐらせてオーブンで10分くらい焼くだけの、自家製かりんとう。揚げると掃除や油の片付けが大変なので、オーブンが便利です。お砂糖は素精糖を使うと、コクが出ておいしくなりますよ」(マキさん)
余計な手間や時間を、徹底的に断捨離した「○○しない料理」。お話を伺うと、マキさんの「○○しない料理」は、単純な手抜きではなく、「本当に必要なモノだけを残す知恵」であることがよくわかります。あふれる情報に惑わされることなく、本当に大切なモノを知るために、マキさんがたったひとつ、こだわりたいことがあるのだとか。
「○○しない料理は、一見シンプルすぎて味気ないように感じるかもしれません。でも、私たち家族は全く不満なく、毎日の食事を楽しめています。そのために、私が唯一こだわりたいのは、『質の良い食材を選ぶ』こと。調理がシンプルになればなるほど、食材の良し悪しが味に出ます。
料理上手であれば、安い食材を工夫しておいしくできるのかもしれないですが、私にはその技術がありません。それなら、食材を選ぶ目と舌を鍛えることに専念し、料理の手間を最低限にしようと思いました。多少高かったとしても、質の良い食材はやっぱりおいしい!おいしいから残さないし、一度しか使わずに冷蔵庫に眠っているような調味料が増えることもありません。
料理の手間や調理器具、調味料がすっきりすることで、時間だけでなく、お財布にも余裕ができたと感じています。また、シンプルとはいえ、やっぱり手作りの料理はヘルシーですね。今年は、家族がひとりもインフルエンザなどの体調不良になることがありませんでした。『食事が体をつくる』とよく言いますが、自分が家族の健康を支える身になって、あらためてそれを実感しています」(マキさん)
「○○しない料理」を極めることで、時間やお財布の余裕だけでなく、家族の健康も叶うようになったというマキさん。今は、たくさんのモノを持つかわりに、家族や自分のために時間をすごしたいとおっしゃいます。
「若いころは、モノを持つことで満たされようとしている自分がいましたが、今は、お金では買えない体験や知識に時間を使いたいと思うようになりました。ちょっとした時間に、子どもと本を読んだり、家族で旅行をしたり。また、食や栄養のことを知るための勉強や、自分の体を知り整えることにも興味を持つようになりました。料理に限らないことだと思いますが、誰かがすすめるから良いというのではなく『自分には何が必要なのか』という問いを大切にすることで、生活の質が向上するのかな、と思っています」(マキさん)
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