名刺交換や電話での受け答えなど、定型のビジネスマナーについては、実践できている社会人は比較的多いのではないでしょうか。そういったビジネスマナーは、研修を受けたり、本を読んだりすることで、身につけることができます。
今回取り上げる「ちょうどいいマナー」は、定型のビジネスマナーとは異なり、相手との関係性、状況、時代をわきまえ、臨機応変に振る舞うことです。あなたの何気ない振る舞いが、実は相手に嫌な思いをさせていた……などということを避けるためにも、ぜひ参考にしてみてください。ビジネスシーンにすぐに役立てられる、具体的な「ちょうどいいマナー」の事例をご紹介します。
その1:電車遅延や寝坊!朝、遅刻しそうな時の連絡の仕方
始業前に一報を入れましょう
始業して何の連絡もなく席にいないと、周りの人に「どうしたのだろう」「何かあったのかな」と心配をかけてしまいます。余計な心配をかけて業務を滞らせてしまうことが、一番のマナー違反です。
やむを得ず遅れてしまう場合は、始業時間の前に、直属の上司へ電話をしましょう。電話で上司へ直接伝えるのがベストですが、上司が不在であれば伝言をお願いしてもいいです。また、万が一、「起きたら始業時間を過ぎていた……」などという場合は、とにかく「大変申し訳ございません」と謝りましょう。
メールしかできない場合は、先に断りを入れましょう
電車の中などでメールしかできない場合は、メールの冒頭に「本来、お電話すべきところ、失礼ですが」と断りを入れましょう。
余裕を持った到着予定時刻を伝えましょう
遅刻することを謝ったら、余裕を持った到着予定時刻を伝えましょう。遅刻するという罪悪感や焦りから、到着までに掛かる時間を短く伝えてしまいがちですが、確実に到着できる時間を伝えるのが、ちょうどいいマナーです。待っている側の気持ちを考え、何度も心配や迷惑をかけるのは避けましょう。
その2:「やってしまった......!」業務上、トラブルがあった時の振る舞い方
取引先へ誤ったメールを送ってしまった時
素早い対応が大切です。気がついた時点で即座に、取引先へお詫びと破棄依頼の連絡をしましょう。その後、すぐに上司へ報告し、指示を仰ぎます。「バレなければいい」「怒られるかも」と考えて、報告を後回しにしてしまいがちですが、素早い対応により、結果的に上司の時間を奪わずに済むことが多いです。例えば、価格設定の異なる(安い)他社宛の見積書を誤って送ってしまった場合などは、大事に発展する可能性があります。直接お詫びに行くことも想定して、すぐに上司へ相談しましょう。
上司への報告や連絡が漏れていたことに気がついた時
「大変申し訳ございません、報告(連絡)することを怠っていました」と素直に謝るしかありません。この時、気をつけたいのは、謝罪と結論を先に伝えること。「忙しかった」「他の上司からも指示があった」などと、言い訳を交えて伝えてしまいがちですが、謝罪と結論だけを伝えるようにしましょう。上司は、結論を元に、いち早く対処を考えなくてはいけないからです。
上司から指示のあった期限を守れない時
期限を守れないことが分かった時点で、すぐに上司へ、理由とともに報告しましょう。「できない」と伝えるのは勇気が要りますが、業務を進めることが最優先事項です。しっかりと相手のことを考え、報告を先延ばしにするのは避けましょう。事前に相談することで、アドバイスや助けをもらえるかもしれません。
その3:いつも悩む......。取引先や上司との飲み会後のお礼の方法
取引先へのお礼
お礼は2回しましょう。支払いが終わりお店を出た後に、「ご馳走様でした」と1回目。そして翌朝、メールでも2回目のお礼を送りましょう。文面は簡単でいいですが、「美味しかった」「お話を聞けて良かった」などの感想を添えると、印象が良くなります。より誠実な印象を与えたい場合は、2回のお礼に加えて、手紙(お礼状)も送りましょう。
なお、気をつけたいのは、取引先に食事へ誘われた時。取引先との食事については、必ず事前に、会社の上司に報告や相談をしましょう。事後報告やこっそり行くのは、マナー違反です。
社内の先輩や上司へのお礼
ご馳走になると分かっていても、お会計時にお財布は出したほうがいいでしょう。そして、実際に「ご馳走するよ」と言われた場合は、「ありがとうございます!」とすぐに引くのがコツです。年次が近い先輩や上司の場合は、最初に「割り勘にしてください!」と提案してみるのもいいかもしれません。払う意思があるということと、感謝の気持ちを見せることが大切です。
社内の場合も、お礼は2回。2回目は翌日の朝、直接お礼をするのがベストですが、周りの人がご馳走になっていない場合もあるので、2人で話せる時を狙ってお礼に行きましょう。難しい場合は、メールでも構いません。
お礼は言葉だけでも十分ですが、例えば旅行のお土産を渡す機会があれば、「いつもお世話になっているので」と、はっきり伝えながら渡すのもいいでしょう。
「ちょうどいいマナー」は、相手に心配や迷惑をかけず、また不快な気持ちを抱かせないようにする思いやりの心です。これまで挙げた例も、状況や相手との関係性によっては、常に正しいわけではないかもしれませんが、大切なのは「自分が相手の立場だったら、どう思うだろうか」と、相手の立場をイメージして行動すること。もしもイメージがつかない相手であれば、両親や身近な目上の方に「どう思うか」を聞いてみてもいいでしょう。
もちろん、「ちょうどいいマナー」だけでなく、基本マナーも大切です。基本マナーが心配……という方は、秘書検定講座などで、じっくり学んでみるのもいいかもしれません。思いやりを、言葉や表情、メール・手紙や贈り物など、相手に伝わる形でちょうどよく表現して、愛される社会人になりましょう。
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