あまりよく知らない相手の場合、私たちは限られた情報から、相手がどんな人物なのかという印象を形成します。「そそっかしい人」「やさしい人」「豪快な人」など……あなたが周りから持たれている印象も、ごく一部の言動から形成されたものかもしれません。そしてそんな印象が、何かを判断するときに影響を及ぼすというのも、残念ながら事実です。
ちょっとしたミスが、「重要な仕事はこの人には無理かも」「この案件は他の人に任せよう」といった判断に繋がってしまうこともあります。もしかするとあなたも、間違った言葉を使っているせいで、思わぬ損をしていることがあるかもしれません。
よくある間違いその1:「敷居が高い」
例:行ってみたいけれど、私みたいなサラリーマンには敷居が高くて……。
「敷居が高い」という言葉を、「自分には不相応」という意味で使っていませんか?正しくは、「不義理をしてしまって行きにくくなっている状態」を指します。酔って失礼をしてしまった、ひどい言動をとってしまったことなどによる、出入り禁止のような状態を想像するといいでしょうか。 間違って使われる場合も多く、不相応という意味で捉えてくれる人もいると思いますが、正しい使い方を知っている人が聞くと、「この人は何をしたんだろう?」と思ってしまうかも知れません。
よくある間違いその2:「役不足」
例:お声掛けいただき嬉しいのですが、私には役不足だと思います。
「自分には荷が重い」という意味で言ったとしたら、かなり残念な間違いです。「役不足」とは、「実力に見合わない簡単過ぎる仕事」などに使われる言葉 。遠慮の気持ちを伝えるつもりが、物足りなく思っていると伝わってしまうのは残念です。謙虚さを伝えたいのであれば、「私では力不足」「こんな大役は」といった言葉を使うのが正解。気をつけましょう。
よくある間違いその3:「体調を壊す」
例:天気のせいか、うちの職場でも体調を壊す人が多くて……。
この言い回しに違和感を持たない人は、他にも間違った使い方をしている言葉が多いかも?!正しくは「体調を崩す」です。「体調を壊す」という表現は、「身体を壊す」という表現と混ざってしまったもの。このように、似たような言葉の使い方を混同してしまうというケースはよくみられるので、「もしかして?」と思う言い回しは、一度調べてみるといいでしょう。
よくある間違いその4:「予防線を引く」
例:面倒なことにならないよう、予防線を引いておいたほうがいいよ。
どこが悪いの?と思う人も多いこの言葉。確かに、「線を引く」という表現自体は、子供の頃からよく使っていますよね。しかし、前もって手段を講じておく意味の「予防線」は、「張る」のが正解。もともと軍事用語だったことを考えると、イメージしやすいでしょうか。
よくある間違いその5:「汚名挽回」
例:今度こそ成功させて、汚名挽回しなくては。
心掛けは素晴らしいですが、こんな間違いをしていると、聞いた人は「また失敗しそう」と不安になってしまうかも。正しくは「汚名返上」。ついつい「挽回」を使ってしまうのは、「名誉挽回」という言葉と混同しているものと思われます。汚名は返上、名誉は挽回と覚えるようにしましょう。
ビシッとスーツを着て格好良く決めていても、間違った日本語を使っているだけで魅力が半減することも。 逆に、正しくキレイな日本語を使える大人は、信頼度がぐっと増すでしょう。ぜひこの機会に、自分の日本語を見直してみてくださいね。
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All About「話し方・伝え方」ガイド。コミュニケーション研究家。株式会社アップウェブ代表取締役を務める。コミュニケーションデザインの研究を行い、テレビ番組でのコメント、企業や大学などでの研修、執筆活動などを行っている。著書は「NOと言えないあなたの気くばり交渉術」他多数。