スプーンやフォークを使って食事をし、自分が何を食べているのか分かるようになり、好きな食べものとそうでない食べものの区別がつくようになります。子どもには親がさまざまな食べものをおいしそうに食べる姿を見せ、食べものそのものに興味を持ってもらうことが大切です。
また、このころは自立心が芽生え、親の言うことを聞くこともあれば、全く逆のことをしたがる年齢でもあります。もし、子どもが好き嫌いをするようになっても寛容に構えることが大切です。例えばピーマンやほうれん草など苦いものを嫌がるのは、年齢的に自然なことですし、苦いものや酸っぱいものを避けるのは本能的な部分もあるので、親が勝手に好き嫌いのレッテルを貼らないことが大切です。
むしろ、好き嫌いが認識できることは成長の証です。親が「好き嫌いはダメ」、「嫌いな食べもの」という言葉を使って先入観を持たせないようにしましょう。どうしても栄養が気になるのであれば、細かく刻んで他の材料と混ぜて分からなくするのもよいでしょう。
離乳食期と同じですが、子どもにだけ特別な幼児食を作ることはせずに、基本的には親と同じものを与えます。必要ならば一部取り分けて調理法を工夫したり、だし汁などの水分を加えて塩辛さなどを調整します。4~5歳までには親と同じものを食べられるようになるので徐々に慣れていくことが大切です。子ども専用の食事を作っても食べないこともあり、「何で食べてくれないの」など親と子どものストレスの原因になりかねません。
何のために食べる必要があるのか……などはまだ理解が難しい年齢です。食べものに興味を持ってもらい、食事は楽しい時間だと教えることを優先しましょう。
基本的な生活習慣が身に付き、シンプルなことであれば理解できるようになります。
親が見ている必要はありますが、妹や弟の食事を手伝ったり、自分よりも小さい子と遊ぶことができるようになります。4歳の息子が1歳半の妹に「あーんして」、「あともう少し」、「よくできました」などと言いながら、スプーンでご飯を食べさせる様子を見て子どもの成長に驚くこともありました。
この時期は、生活習慣を身に付けるための繰り返しが大切です。食卓に並んだものを、きちんと座って、残さずおいしく食べるということを親が見本になって示します。親に好き嫌いがあったり、ソースや醤油をドバドバと使ったり、お菓子をたくさん食べたりすると、子どももそれをまねしてしまうので親自身の食育にもなります。完食できる量をお皿にのせ、無駄なく食事をすることが習慣となるように食育を進めましょう。
このころは苦手な食べものを克服することができるようになる年齢でもあります。「なぜ」「どうして」の質問が増え、「しっかり食べると体が丈夫になる」などの話が分かるようになります。
また、簡単な絵本のストーリーが理解できるようになります。私自身、幼稚園の本読みでピーマンが大好きな男の子が、ピーマンをもぐもぐ食べてむし歯菌をやっつけたという話を読み、急にピーマンを食べるようになったということがありました。子どもの好きなキャラクターが好き嫌いなくモリモリご飯を食べている絵本や、野菜が主人公の絵本などを一緒に読むのもよいかもしれません。
しかし、好き嫌いを直そうと必死になり過ぎて無理強いすることは逆効果になるので、気長に子どもの成長を見守りましょう。
一通りの生活習慣が身に付き、自分で考えて行動できるようになります。社会や集団のルールを理解し、第三者の気持ちを想像して、思いやりの心を持てるようになったり、食卓に料理が並ぶまでの過程も理解できるようになります。
このころには、食事を準備する簡単なお手伝いもできるようになるでしょう。スーパーマーケットによっては産地や生産者の情報が表示されているところもあるので、季節の食材、さまざまな魚や野菜の名前を学ぶことができます。生産者が一生懸命育て、食べものがスーパーへ届き、親が仕事をして稼いだお金で購入し、それを自宅で調理する、という流れが分かるようになります。
今までは好きな食べものかそうでない食べものかという単純な問題であったのが、この年齢になると、栄養の大切さや食品ロスの問題、食べられる命に感謝するというように、より深く広い思考ができるようになります。
その半面、意思表示がはっきりしてくるため、親と子の食事バトルが一層激しくなり、親がイライラして怒鳴ったり、長時間にわたりダラダラと無理に食べさせたりして、子どもはますます食事が嫌いになるという悪循環に陥る時期でもあります。食べられる野菜、果物、肉や魚などのタンパク源がいくつかあれば、致命的な栄養失調に陥ることはありません。持病があるなど特殊なケースは医師や栄養士などの専門家に相談してみましょう。
子どもの性格や環境によって感じ方はそれぞれなので、食育は無理をせず、親がおおらかな気持ちでゆっくり進めることが大切です。
小学校へ入る6歳ごろからは、いよいよ生涯の糧となる食のスキルを習得していきます。
学校では、給食や、栄養と健康、食品衛生、食品ロス、食事と文化、栽培体験などの食育に関する授業が行われ、家庭での食育も本格的になっていきます。一緒に料理をしたり、買いものに行くことで、食材の選び方や調理のスキルを少しずつ学び、食事は団らんの場であることも教えていきます。
このころには、子ども自身が他人が何を食べているのか気にする年齢にもなってきます。食育に積極的な人ばかりではなく、例えば、いつも簡単な食事をしていたり、極端に偏った食事をする人がいても、人にはそれぞれの事情があり、他人と比較せずに自分の環境に感謝することも伝えましょう。
また、トレンドや流行に影響される年齢でもあるので、食に関する事情が複雑になってきます。食育は子育ての一環であり、子育てに正解が存在しないことと同じように、食育にも正解はありません。なかなかうまくいかないこともあると思いますが、最低限のマナーとスキルを身に付けさせ、子どもたちがいずれ自立する時は、食に関する経験や思い出がポジティブなものであることを望みたいものですね。
子どもや家庭のスタイルに合わせてゆっくりと食育を進めていきましょう。