管理栄養士の小山浩子さんの料理家としてのキャリアは20年以上。料理教室や大手企業のメニュー開発、メディア出演など、第一線で活躍されています。その中でも、特に評判なのが、健康で活動的な脳を作るための「育脳レシピ」。乳幼児や学童期の子育て中のパパママからも、多くの相談を受けているそうです。今回はそんな小山さんに、脳の成長にはなぜ朝ごはんが大切なのかを伺いました。
「脳を働かせるためには、まず『ブドウ糖』という栄養素が必要です。1時間脳を動かすために必要なブドウ糖は約5グラムと言われているんですよ。このブドウ糖は、最後の食事からおよそ7〜8時間で効果が切れてしまうんです。夜ごはんを食べた後、寝ている間も脳は動いているので、翌朝目覚めた時には体内のブドウ糖をほとんど使い切っている状態なんです。ですから、朝ごはんは、脳を働かせるためのブドウ糖を補給するために、欠かせない食事と考えてくださいね」(小山浩子さん)
小山さんはさらに、20歳までの朝ごはんが特に大切だと続けます。
「子どもの成長率をグラフ化した『スキャモンの発育曲線』※を見ると、神経系にあたる脳は6歳までに急激に発達し、だいたい大人の脳神経の9割くらいまで成長します。その後、20歳前後にかけて、ゆるやかに成長していきます。ですから、いい脳を作るためには、20歳までの期間に「脳を育てる」栄養をしっかりと補給することが大切なのです。特に朝ごはんでは、脳の栄養となるブドウ糖を補うことが必要不可欠です。ところが最近では、朝起きられないからとか、ダイエットをしているからといった理由で、朝ごはんを食べないお子さんが増えてきています。脳の栄養が切れたままの状態では、学校に行っても頭が働かない、授業に集中できないなど、学習への悪影響が心配ですね」(小山浩子さん)
「スキャモンの発育曲線」(出典:『子どもの脳は、「朝ごはん」で決まる!』(小学館))
※「スキャモンの発育曲線」とは、0歳からの人の成長発育について、20歳を100%として考え、成長の過程の特徴を4つの要素に分けてグラフ化したもの。アメリカの人類学者R.スキャモンが1928年に発表した。 出生直後と14歳頃を中心に大きく発育が見られる身体(一般)型、6歳頃までに成人の90%に達する神経型、13歳頃を中心に急速に発育する生殖型、思春期までに最大値まで成長し、以後減少していくリンパ型の4つに分類して表現される。
子どもの脳を育てるために朝ごはんが欠かせないことがよくわかりました。できれば、栄養バランスのとれた朝食を毎日手づくりしたいところですが、「時間のない朝に料理をするのは難しい!」という方もいるでしょう。そこで、小山さんに、忙しい方や料理初心者でも簡単に作れる「育脳」朝ごはんレシピと、朝ごはんの準備を無理なく続けるためのコツについて伺いました。
「『育脳』のための朝ごはんは、ブドウ糖をはじめとした栄養をバランスよく摂ることが大切。実は、脳を作っているのは60%が脂肪。残りがたんぱく質です。つまり『糖質・脂肪・たんぱく質』を意識すれば、誰でも脳にいい朝ごはんが組み立てられますよ。
脂肪は青魚や良質な油(エゴマ油・アマニ油など)、ナッツなどから摂るのがおすすめ。魚は缶詰やはんぺん、つみれ、魚肉ソーセージなどの練り物でもOKです。また、たんぱく質は豆や卵、乳製品がいいですね。パックを開けるだけの納豆や市販のヨーグルトでも充分摂取できます。まずは身近な食材を使い、『朝ごはんを作る、食べる』習慣をつけましょう。また、朝ごはんを食べない子どもにとっては、いきなり1食分のボリュームを食べるのは大変かもしれません。無理せず、食べられる量から始めてみてくださいね」(小山浩子さん)
続けられる!「育脳」朝ごはんの3か条
1)意識する栄養素は3つ!「糖質」「脂肪」「たんぱく質」
2)お手軽でOK!缶詰や既製品も活用して
3)無理して食べなくてもOK!適量から始めましょう
●月曜日
食物繊維がうれしい!「フルーツたっぷり豆乳シリアル&フライパンソーセージ」
フルーツたっぷり豆乳シリアル
材料(4人分)
作り方
フライパンソーセージ
材料(4人分)
作り方
かぼちゃのツナサラダ(常備菜)
材料(4人分・作りやすい分量)
作り方
※サンドイッチの具材にしてもおいしい!
グレープフルーツ
材料(4人分)
作り方
小山さんの「育脳ポイント」
シリアルには、脳のエネルギーになる糖質とともに、食物繊維がたっぷり含まれます。食物繊維を一緒に摂ることで糖質が脳にゆっくり吸収されるため、集中力を長続きさせる効果が期待できます。また、フルーツをプラスし、ビタミンやミネラルも補いましょう。
ソーセージのひき肉には、たんぱく質とともに記憶力アップをサポートすると言われるビタミンB12が含まれます。ビタミンEが摂れるかぼちゃサラダは、ぜひ常備菜に。
●火曜日
アミノ酸をバランスよく摂取!「きな粉トースト&具だくさん!鮭缶ミルクスープ」
きな粉トースト
材料(4人分)
作り方
具だくさん!鮭缶ミルクスープ
材料(4人分・作りやすい分量)
作り方
スピード卵
材料(4人分)
作り方
りんごとレーズンのハニーシロップ(常備菜)
材料(4人分)
作り方
※ヨーグルトに混ぜたり、ホットケーキの生地に混ぜて焼いても良い。
小山さんの「育脳ポイント」
脳に必要なたんぱく質を構成するアミノ酸がたっぷり含まれる食材、魚・卵・豆製品・乳製品が同時に摂れるスペシャルメニューです。特にスープの鮭缶は、骨ごと食べられるのがポイント。骨には、脳の回転を早めると言われるカルシウムがたっぷり含まれています。
りんごの食物繊維とカリウムは、血糖値の上昇をゆるやかにしてくれる効果が。切るだけで食べられる果物は、朝ごはんにぜひ取り入れたいですね。
●水曜日
良質な脂質の宝庫!「ホットサンド&焼きししゃものサラダ」
ホットサンド
材料(4人分)
作り方
※空きスペースで次のレシピで使うししゃもを焼く。
焼きししゃものサラダ
材料(4人分)
作り方
冷製ミルクトマトスープ
材料(4人分)
作り方
水切りヨーグルトチーズ(常備スイーツ)
材料(4人分)
作り方
※水切り時にヨーグルトから出た水分には水溶性のカルシウムやビタミン、ミネラルが 豊富に含まれているので、はちみつを加えて飲むなど活用してください。
小山さんの「育脳ポイント」
青魚のししゃもにたっぷり含まれるDHA・EPAは、脳を構成するために欠かせない「必須脂肪酸」。体内で作ることができないため、積極的に食事で摂っていきましょう。この献立はマフィンのチーズ、スープの牛乳、水切りヨーグルトと、育脳に欠かせないカルシウムとたんぱく質を豊富に含む乳製品がたっぷり摂れるのもポイントですね。
●木曜日
栄養バランスバツグン!「鮭そぼろごはん&切り干し大根と大豆のサラダ」
鮭そぼろごはん
材料(4人分)
作り方
切り干し大根と大豆のサラダ(常備菜)
材料(4人分)
作り方
玉子豆腐とわかめのスープ
材料(4人分)
作り方
※湯沸かしポットのお湯を利用すればとても手軽に作れます。
さつま芋の練乳がけ
材料(4人分)
作り方
小山さんの「育脳ポイント」
お米は、糖質のほか、食物繊維、ビタミン、ミネラルをバランス良く含む優秀食材なんです。レンジ加熱でできる鮭そぼろを混ぜれば、たんぱく質も補えますよ。切り干し大根は食物繊維に加え、カルシウムもたっぷり含まれています。常備菜として作っておけば、食卓のお助けメニューになりますね。また、スープのわかめには、脳の神経伝達物質を作ると言われる葉酸が豊富です。
●金曜日
低GIでダイエットにも!「雑穀卵かけごはん&油揚げの納豆焼き」
雑穀卵かけごはん
材料(4人分)
作り方
油揚げの納豆焼き
材料(4人分)
作り方
キャベツとイワシ団子のごま味噌汁
材料(4人分)
作り方
氷りんごのにんじんジュース
材料(4人分)
作り方
小山さんの「育脳ポイント」
最近は、子どもでもダイエットを気にすることが多いですよね。ごはんに雑穀を混ぜることで、血糖値の上昇がゆるやかになる「低GI料理」になります。卵は、脳の記憶力を高めると言われているので、ぜひ卵かけごはんに。
納豆には、脳を活性化すると言われるナットウキナーゼが含まれます。油揚げと一緒に焼けば、ボリューム満点の主菜になります。
いかがでしたか?どのレシピも簡単にできるものばかりですが、食材を揃えるのが大変な場合は、全部作らなくても、もちろんOKです。
「今回ご紹介したような献立の形にならなくても大丈夫です。例えば雑穀卵かけごはん1品でも、ごはんにアマニ油を小さじ1杯かけたり、デザートにヨーグルトを添えたりすれば、立派な朝ごはんになりますよ。どうしても食べられない、という時は『フォローアップミルク』を活用してみてはいかがでしょうか。フォローアップミルクとは、葉酸、ミネラル、鉄など、食材からではなかなか摂りにくい微量栄養素を補給する飲み物です。そのまま飲んでもいいし、時間がある時に野菜スープを作って冷凍し、温める時に加えるなどの『ちょい足し』も、おすすめです」(小山浩子さん)
また、小山さんの「育脳」朝ごはんのレシピは、脳の成長を助けることはもちろん、「おいしい」ことも大きなポイント。一度、小山さんの教室を訪れた生徒さんは、そのおいしさに魅了されて次々とファンになってしまうそうです。
「脳や体にいいことも大切ですが、まずは、おいしい朝ごはんを楽しむことから始めてください。朝決まった時間に家族で食卓を囲むことは、子どもと親のコミュニケーションのためにも、とても大切です。手づくりの朝ごはんを一緒に食べて、朝のひとときを家族で過ごしてみてはいかがでしょうか?」(小山浩子さん)