日々のタスク管理や日記など、私たちの生活において身近な「書く」という行為。そんなシンプルな方法と、心をラクにすることが一体どのように繋がっているのでしょうか?
「ストレス対策のコツは『客観視』なのですが、書くことは、まさに客観視するのに最適な方法。書いて言語化することで外側から客観的に物事を見ることができるようになります。人間は、悩みや問題があるとそのことばかりに集中してしまい主観的になりがち。そうすると視野が狭くなり、冷静な判断ができなくなってしまいます。そんな時、状況や感情を書くことによって、心を整理するのです」(古川武士さん)
つまり、書くことは現状を把握し、問題を解決する方法を明確にできるということ。古川さんいわく、書くことによって得られるメリットには次のようなものがあるそうです。
頭がスッキリし、心がラクになる「書く」習慣。古川さんによると、状況や悩みに応じてさまざまな書き方のスタイルがあるそうですが、ここでは、その中から心を安定させ、毎日をポジティブに過ごせる二つの日記をご紹介します。
<放電&充電日記>
嵐のように過ぎ去る日々のなかで、「放電=自分のテンションが下がったできごと」と「充電=自分のテンションが上がったできごと」を書き出すワーク。
どんな効果が期待できる?
「放電は、ストレスのパターンを把握するのに最適です。毎日の小さなストレスは、無自覚でいたほうがラクなため、スルーしてしまいがちです。しかしそれは、心のなかにゴミを溜め込んでいくようなもの。スルーすればするほど、心の立て直しは難しくなるので、あえて自覚することで放棄や改善を促します。一方、充電を書くのは、自己信頼感を高めるため。人間は、良かったことよりも悪かったことやできなかったことのほうを3倍くらい強めて記憶するという説があるのですが、例えば同じ事実が5:5であったとしても、良かったことのほうを少なく覚える生き物なんです。だから自分にとって充電されたできごとを書き続けることによって、自己信頼感が高まるという効果があります」(古川武士さん)
ポイント
放電→充電の順に書くのがポイント。ダメだったことを出し切ったあとで嬉しかったことを書くことで、気持ちをポジティブな状態にもっていくことができます。おすすめの書くタイミングは、朝。夜寝るまで放電、充電のできごとは続くので、前日を振り返るのがよいでしょう。
<未来日記>
「その日一日をこう過ごしたい」「こうなったらいいな」と思う理想の一日の姿を完了形で書くワーク。一日が終わった時に、こんなことができていたらテンションが上がる!といったことを先取りして書きます。
どんな効果が期待できる?
「TODOリストは義務的で、しなければならないという感覚が強いですよね。そのため、できなかったときに罪悪感を覚えます。しかし未来日記の場合はあくまで理想であり目標なので、もし達成できなくても罪悪感がありません。さらに、行ったできごとを想像することで、行ったことで得られる感情を先取りすることができます。すると楽しかったりワクワクしたりして、そんな気持ちになるならやろうかなと、やる気にも繋がるわけです。たとえそれが義務的なことであったとしても、意味を感じられればその行為は全く違うものになると思います」(古川武士さん)
ポイント
理想のできごとだけでなく、感情もセットで書くのがポイント。「それをやることで自分の感情がどう高まるのか」というように、得られる感情にフォーカスすることが大事です。こちらも朝書くことで、一日をただ漫然と過ごすのではなく、コントロールすることが可能に。
古川さんのおすすめは、「放電&充電日記」で前日を振り返り、「未来日記」で今日一日の理想の姿を書くという流れ。まずはそれぞれ5個ずつ書き出してみましょう!毎朝書くことで心のチェックを行ってみてくださいね。
「書く」ことで心を安定させるためには、「継続することが大事」だと言う古川さん。そのためには、自分に合ったスタイルで書くことと、生活に組み込むことが重要だと話します。
自分に合ったスタイルというのは、例えば、紙とペンで書くのか、スマホやPCで書くのかを選択するということ。それぞれに特長があるので、より続けやすいほうを選べるとよいですね。
「手書きもデジタルも、それぞれに良さがあるので基本的には好みのほうで書いてもらってかまいません。特長としては、手書きにはペンと紙という高い自由度があり、新しいアイディアが生まれやすく、デジタルは一カ所に情報をまとめられたり検索できたりするので振り返りが容易です」(古川武士さん)
ちなみに、今回ご紹介した二つの日記について、古川さんご自身は「デジタル派」でスマホを使うことが多いのだとか。 「通勤時や会社に着いて仕事が始まる前など、スマホだと隙間時間にサクッと書けるので、毎日負担にならずに継続することができます」(古川武士さん)
もう一つの継続のコツは、生活に組み込むこと。
「一日のうちで書く時間を決めずにどこかで書こうと思うと、忘れる日がでてきてやがて続かなくなります。通勤時に書く、仕事を始める前に書くというように条件付けし、生活習慣の一つにしてしまうことで毎日継続することができるようになりますよ」(古川武士さん)
シンプルで手軽な方法なのに、毎日が、そして人生が豊かになる「書く」という習慣。決してなくなることのないストレスと上手に付き合うために、ぜひ試してみてはいかがでしょうか。