手帳の選び方や活用方法などについて、書籍や記事の執筆はもちろん、セミナーや動画配信も行っている、手帳評論家の舘神龍彦さん。手帳メーカーのプロモーションや製品開発にも携わるなど、まさに手帳の専門家です。
「ここ最近の手帳のトレンドは、多様化、大型化しているのが特徴です。特に、スケジュールを書き込む以外のコンテンツページの充実が際立っていますね。例えば、『白地図』や『100の夢リスト』といったコンテンツや、自分の服のサイズやポートフォリオ(株式や債券など保有している金融商品の一覧)などを書くためのページをよく見かけます。またスケジュールについても、自分と家族や、仕事とプライベートなど、複数の予定を書けるようになっている手帳も多いです。
持ち運びやすくて、なおかつ書く面積もしっかり確保できるA6~B5サイズが人気ですね」(舘神龍彦さん)
毎年、本当にさまざまな種類が登場する手帳。なんとなく選んでしまうという方も多いかもしれませんが、舘神さんいわく、自分にあった手帳をきちんと選べば、時間をより有効に使えるようになり、仕事の効率UPや、趣味や学びの時間の確保にもつながるそうです。
「手帳は、『時間を見える化するツール』なんです。手帳に決まった予定を書き込めば、それ以外のどの日にちや時間が空いているかが分かりますよね。そして、空いている時間が分かることで初めて、その時間をどう使うかを考えることができるんです。手帳では、実は予定が書かれていない部分が大事。そこを適切に埋めていけば、おのずと時間が有効に使えるようになるというわけです。
また手帳を使うことで、『予定にまつわる情報を記入して事前の準備ができる』『締め切りまでの期間が分かりやすく掛けられる日数が確認できる』『作業や仕事について適切な計画が立てられる』などの効果もあります。
ライフスタイルや手帳の書き方は人それぞれなので、『こんな手帳がおすすめ』ということは一概には言えません。自分が書きやすく見直しやすいと感じる手帳が、自分にあった手帳ということになります。手帳が使いやすければ、自然と開いて書き込んだり見直したりする機会も増えて、書き込まれていない部分を埋めていく習慣もつきやすくなります」(舘神龍彦さん)
だからこそ、「手帳はじっくり考えて選んでほしい」と言う舘神さん。最近では、スマートフォンでスケジュールを管理する人も増えていますが、紙の手帳の魅力は「安くて、早くて、自由なところ」だそうです。
「紙の手帳の一番の良さは、記入と参照が『早い』ことです。簡単に色分けをして書くことができますし、付箋やスタンプを使うこともできるなど、自由度が高い。また、多くの手帳の見開きはスマートフォンの画面よりもかなり大きく、大きいからこそ素早く記入ができて、参照もしやすいんです。
ただ、紙の手帳だけで完結する必要はなくて、例えばメモなどは、スマートフォンアプリなどでデジタル化しておけば、保管や整理がしやすく、また検索機能などを使って必要な情報を探しやすくすることも可能です。紙の手帳だけにこだわるのではなく、必要に応じてスマートフォンなどと組み合わせて使うのがおすすめです」(舘神龍彦さん)
それでは、途中で挫折しない、自分にあった手帳に出合うためにはどうすればいいのでしょうか?手帳の選び方のポイントを教えていただきました。
手帳売り場に行く前に下調べをする
「手帳を買いに行く前に、ある程度の下調べをしましょう。いきなりお店で膨大な数の手帳を目にすると、自分の求めている手帳が分からなくなってしまいます。
最近では目的別にさまざまなタイプの手帳があるので、事前に種類や特徴を調べ、自分が押さえるべきポイントを決めておきます。そして、手帳選びにあまり時間をかけるのも本末転倒なので、売り場ではさくっと選びましょう」(舘神龍彦さん)
好みのサイズとデザインを選んでから中身を吟味する
「手帳は、とにかくいつも持ち歩いて毎日使うものなので、自分が持ちやすく使いやすいと思うサイズと、これだったら使えると思う好みのデザインのものを選んでください。
その上で、手帳の中身を吟味していきます。中身は、ある程度使ってみないと分からない部分もありますが、最低限、月と週の予定や、一日の時間単位の予定を書き込むページがあるものがいいでしょう」(舘神龍彦さん)
手帳のどこに何を書くかをイメージしながら選ぶ
「自分が手帳を何に使いたいのか、何を書きたいのかをイメージし、必要なページがある手帳を探すことが大事です。売り場で実際に手帳を手に取って、どこに何を書くのか、できるだけ具体的にイメージしながら選びましょう」(舘神龍彦さん)
使ってみて合わなければ途中で買い替える
「買った手帳を、1年間使い続けなければならないということはありません。その手帳が自分に合っているのかや、自分が手帳を何に使いたいのかが分かるには、ある程度は使ってみる必要があります。途中で自分には合わないと思ったら、別の手帳に買い替えても全然構わないのです。
実は、私が今使っている手帳も途中で買い替えたものなんですよ。中途半端な時期だと安く買うことができますし、4月や10月始まりの手帳もありますので、最初に買った手帳にこだわり過ぎず、いろいろと試してみることをおすすめします」(舘神龍彦さん)
また、手帳選びで失敗する人がやりがちなのが、有名人プロデュースの手帳を買って、それに頼ってしまうことだそう。
「有名人プロデュースの手帳は、作った人にベストフィットの、いわばオーダーメイドみたいなものです。作った人と似たライフスタイルの人であればフィットするかもしれませんが、そうでない場合は、合わなくて途中で挫折することになるかもしれません」(舘神龍彦さん)
それでは、仕事も学びも充実させたいという方におすすめの手帳は、どのような手帳なのでしょうか?おすすめの手帳のタイプを教えていただきました。
「働き方にもよりますが、仕事をバリバリしながら趣味や学びの時間も充実させたいなら、『月間ブロックタイプ+見開き1週間のバーチカル式』の手帳などがいいかもしれません。
また、仕事でそれほど細かい時間の記入が必要なかったり、そもそも手帳をあまり使い慣れていなかったりという場合は、『月間ブロックタイプ+週間レフト式』が使いやすいと思います」(舘神龍彦さん)
手帳初心者で、あまり使いこなせる自信のない人は、ある程度、どこに何を書くのかが決まっている手帳を選ぶのがおすすめだそう。自由度の高い手帳は、すべて自分で決めていかなければならないので、難易度が高いそうです。
さらに、アイデア出しや思考の整理、日記をつけるといった手帳の使い方をしたい人なら、スケジュール欄の他にメモページが充実している手帳を選ぶといいとのことです。
手帳は選んだら終わりではなく、その使い方が大事です。手帳を上手に使うポイントは、ズバリ「自分のルールを決めること」と舘神さん。
「まずは、手帳のどこに何を書くのか、自分のルールを決めましょう。書く内容やいつ書くのか、何色で書くのかまで、具体的に決めておくことをおすすめします。
予定以外にも、その月や週の目標を書いたり、その日の日記や食事の内容を書いたりすると、手帳を開く度に目にすることになるので、振り返ったり見直したりしやすくなります」(舘神龍彦さん)
また、一歩進んだ手帳の使い方として舘神さんが実践しているのが、手帳と同じサイズのメモ帳(メモリフィル)を挟んで併用する方法。
「私は手帳に、メモリフィルのメモ帳を挟み込んで使っています。メモ帳1枚の裏表に1テーマずつと決めて、『課題』『発見』『日報と日記』『健康』『良かったこと』などを毎日記録し、ついでに前日に書いたものを少し見直すようにしています。そうすると、『あの時はこんなことを考えていたんだ』とか、『この時よりも自分は進歩したな……』などと、あらためて考えるきっかけになります。
メモリフィルのメモ帳は、いっぱいになったら新しく入れ替えることができるので便利です。私の場合は大体3か月に1回くらいの頻度で交換し、その際にアイデアなどはスキャナーにかけて保存して、あとで検索できるように管理しています」(舘神龍彦さん)
手帳というのは非常に便利なツールですが、スペースには限りがあります。しかし、メモ帳をプラスしたりデジタルと併用したりすることで、その可能性はさらに広がるようですね。
舘神さんいわく、「手帳は、時間を有効活用でき、人生の可能性を広げられるツール」とのこと。しかも手帳は、誰でも手軽に、そして自由に使うことができます。
「手帳を使うことで、自分の空いた時間が見えるようになります。そして、そこに自分がやりたいことを埋めていくことで、実現できる可能性が開けていくんです。
せっかく買った手帳も、閉じっぱなしではその良さを発揮できません。まずは手帳を、小まめに見ること!それだけでも、時間の使い方を劇的に変えることができると思いますよ」(舘神龍彦さん)
こんなに便利なツールである手帳を、利用しない手はありません。毎年、三日坊主で終わってしまうという人も、その選び方から見直して、自分にぴったりの手帳を探してみてはいかがでしょうか。
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