「あれもやっておかなければ」「これもしたほうがよいのだろうか」という思いが日々あふれ、気持ちが落ち着かない。「失敗への不安」や「将来への心配」にふいに襲われ、いてもたってもいられない気持ちになることがある……。自分自身の心が、このような状態になることはありませんか?
私たちが生きる現代では、新しい情報が毎日のように更新され、それらについていくだけでもかなりのエネルギーが消耗されます。さらに、修得した知識はあっという間に古くなり、次は何がスタンダードになるのか分からない……。こうした時代の中で不安や苛立ちが煽られていき、落ち着かない気持ちで毎日を過ごしている方は少なくないでしょう。
このように、自分の周囲に生じる事象に日々振り回されて生活していると、私たちの心は安定性を失ってしまいます。そこで時折、自分の心身の状態に目を向けながら、変化に振り回されにくい「余裕のある心」を育てていくことが必要になります。
「余裕のある心」を育てる取り組みの一つとして、お勧めしたいのがマインドフルネスです。マインドフルネスとは、自分の心身の変化や状態に気づいている「目覚め」の状態のこと。
主に「瞑想」の手法を使って穏やかに自分の心を見つめながら、「私は今、こんなことを思っている」「周囲の変化に身体がこう反応している」といった自分の心の動きや身体の感覚を観察していくと、マインドフルネス、つまり目覚めの状態になることができます。
マインドフルネスには、さまざまな手法があります。なかでも、初心者でも取り組みやすいのが、「息を吸って吐く」という呼吸時の身体感覚に意識を向ける瞑想法です。
瞑想といっても、難しく考える必要はありません。要は呼吸に意識を向けることです。軽く目を閉じた状態で、自然に任せてゆったりと呼吸をしてみてください。すると、息を吸うときにはお腹がゆっくり膨らみ、吸いきったところで息を吐くとお腹がゆっくりとへこんでいきます。
このときの吸って吐くという自然なリズム、ゆっくりとしたお腹の動きに意識を向け、一往復の呼吸のたびに「ひとーつ、ふたーつ……」と数を数えていくと、「呼吸」という身体感覚に集中しやすくなります。
この呼吸を続けていくと、全身の筋肉が弛緩し、心地よいリラックス状態に導かれるでしょう。多くの方が、じわじわと気持ちよく全身の力が抜けていく感覚を覚えると思います。呼吸を数えながらそうした身体感覚に意識を向け、そのまま味わっていきましょう。
こうしたゆっくりした呼吸を続けていると、必ずと言っていいほど雑念が湧いてきたり、体の一部に違和感を覚えたりします。「今日の夜、何を食べようかな」「右の肩がコチコチだな」といった思いがふと浮かんできたりするでしょう。こうした思いは自然に発生するものであり、「なくそう」とする必要はありません。
「雑念が湧かないように」「無になれるように」と意識してしまうと、逆にその思いが新たな雑念となり、呼吸に集中できなくなってしまいます。
大切なのは、こうした思いが湧いたときに、それらにとらわれずに元の呼吸へと意識を戻していくことです。「今、雑念が湧いているな」「今、身体のこの位置に違和感を覚えているな」といったことを自覚しつつ、その思いはそっとそこに置きながら、再び「今、この瞬間」の呼吸に集中していくのがこの瞑想法のポイントです。
回数や頻度、時間の明確な目安はありませんが、寝る前や仕事の休憩時間などに1日10分くらいずつでも、この呼吸を毎日続けていくと、マインドフルネスの感覚をつかみやすくなるでしょう。
今回ご紹介したように、呼吸を通じたマインドフルネスの瞑想法を繰り返し実践していくと、普段の生活においても、雑念に意識を奪われて何かを心配し続けたりするようなことは少なくなっていきます。その時々の事象にとらわれず、今、感情や思考がどのように動いているのかを自覚し、いつでもニュートラルな自分に戻っていくことができるようになるのです。
このように自分の心の動きを観察し、一時的な感情に振り回されずに生活できるようになることが、「余裕のある心」を育てるためには大切です。このマインドフルネスの瞑想法を生活に取り入れることで、自分の心の状態や身体の感覚を俯瞰できる「余裕のある大人」を目指しませんか?
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