突然ですが、みなさんは心理学に興味がありますか?「心理」と言われると、ちょっと難しいイメージがあるかもしれません。でも、実は私たちの日常に寄り添う、とても身近な知識。その考え方を知ることは、自分のコンプレックスを解消する鍵にもなるのだそうです。今回は特に、ネガティブ思考で悩んでいる人におすすめしたい心理学についてご案内します。
お話を聞いたのは、累計数百万PVを誇る心理学ブログ「ココロクエスト レベルアップ心理学」の著者であり、かつイラストレーターでもある「ねこひげ先生」。
ねこひげ先生は、「フォローすると人生がレベルアップする!」とツイッターを中心に評判となっていますが、実はかつては、ご自身もネガティブ思考に悩まされていた一人なのだとか。そのおかげで仕事や人間関係がうまくいかず、「何とか自分を変えたい!」と思っていた時に出会った心理学者「アルフレッド・アドラー」の考え方に共感し、独学で心理学を学び始めたそうです。
ねこひげ先生が多くのファンに支持される理由は、ご自身の実体験から、先生としてではなく、まるで家族や友達のような目線でアドラーの考え方を自分流に翻訳した「ポジティブになれる心理学」を発信していること。等身大のメッセージが、同じ悩みを抱え、ちょっと心が疲れてしまっている多くの人に寄り添い、共感されているようです。
早速、今日からちょっとポジティブになれるかもしれない「考え方のヒント」をご紹介していきます。
ねこひげ先生が心理学に興味を持ったのは、ご自身が人生に悩み、大きなストレスを抱えて「うつ状態」になったことがきっかけだったのだそう。そんな時に出会った一冊の本が、ねこひげ先生に大きな影響を与えたのだとか。
「心理学にはもともと興味がありましたが、本格的に学ぼうと思ったきっかけは、実は自分のネガティブ思考が原因でした。大学を卒業し、憧れの企業に就職したまではよかったのですが、仕事の多忙さや人間関係の悩みから、心も体もボロボロになってしまって。『まわりはみんな優秀なのに、自分はなぜ同じようにできないんだろう……』と、自分を責めていました。悶々とした日々を過ごしながら、どうしたら今の状況を改善できるかと模索していましたね。
僕の場合は本屋へ行くことがストレス解消や頭の切り替えになっていたのですが、そこで目に飛び込んできた本(『嫌われる勇気』岸見一郎・古賀史健共著:ダイヤモンド社)で、アルフレッド・アドラー心理学の存在を知りました。アドラーは心理学者の三代巨匠(※)の一人でもある有名人ですが、当時はそんなことは知らず、ただ気になったから手に取り、読み始めたんです。でも、今までの価値観が返るくらいの衝撃を受けてしまって……!そこから、今につながる僕の活動が始まりました」(ねこひげ先生)
※心理学の三大巨匠:「ジークムント・フロイト」「カール・グスタフ・ユング」「アルフレッド・アドラー」
ねこひげ先生が、アドラーの考え方に深く共感した理由を伺いました。
「アドラー心理学の最大の特徴は『自分を変えるための心理学』であること。例えば僕の場合で言うと、『内向的な性格だから人間関係が苦手で人生がうまくいかない』と思うのではなく『内向的だからこそ、人と接する方法や、人生を楽しくする方法を追求しよう!』と思わせてくれました。これを、アドラーは『目的論』と呼んでいます。アドラー心理学の特徴は、この『目的論』のほかにもいくつかあります(『自己決定性』『全体論』『認知論』『対人関係論』)が、どの理論も学んでいくと、『自分を変えることは可能なんだ』と思えてくるんです」(ねこひげ先生)
「自分を変えるための心理学」と出会うことで、もともと持っているネガティブ思考に対する悩みや、そうした思考の癖によって引き起こされる人間関係のストレスから少しずつ解放されていったというねこひげ先生。同じようにネガティブ思考で悩む人は、まず具体的にどのような意識を持つことが大事なのでしょうか?
「自分のネガティブ思考やコンプレックスを変えたいと思う人は、まず、自分が持っているそのままの性格を受け入れることから始めましょう。かつての僕もそうでしたが、もともとの素質を無視したまま無理やりポジティブに振る舞おうとすると、自分に合っていない方法なのでいつか心身に悪い影響が出たり、体調を崩してしまうことがあるんです。例えば、世の中には人一倍寂しさや悲しみを感じやすい人がいます。本人は辛い気持ちになったり、周りに比べてネガティブな自分に悩むことが多いかもしれません。でも、そういった繊細な感受性を芸術として昇華させ、人々を感動させる活動をしているアーティストがいるように、自分の持っている素質を認めた上でアクションをすることで、ネガティブ思考も悪くない、と思えたら……。まずはこのように、『ネガティブ思考は真っ向から否定する必要はない』という自己肯定の気持ちを持ちましょう」(ねこひげ先生)
「アドラーの提唱する理論は全て、毎日の行動に置き換えることができるんです」と語る、ねこひげ先生。
ネガティブ思考を改善したい!と悩む人のために、今日から始められる、ポジティブ思考を作る生活習慣を5つ教えていただきました。
【その1】「得意なこと」を一つ見つける
*アドラーの言葉
ひとつのことにうまくいけば、他のこともうまくいくものである
「苦手を克服するのではなく、まずは得意なことを一つ見つけて、成功する経験を味わいましょう。例えば、色に興味があるとしたらカラーセラピーの本を読んでみるとか、食べることが好きだったら、休日に自分が食べたい料理を丁寧に作ってみる……とか。今、自分がすぐにできることを実践するのがコツです。ちなみに僕は、数年前に『毎日スクワットを1回やる』という習慣を始めました。1回なんてとても簡単で笑っちゃうような目標ですが、それでも毎日続けると、少しずつ回数を増やしてみようかなと思うようになりました。次第に食事に気を使い、規則正しく寝るようになり……。結果、仕事がうまくいかず悩んでいた頃に比べて体調がとても改善しました。1日1回のスクワットという、たった一つのことがうまくいったおかげですね」(ねこひげ先生)
【その2】「座右の銘」を持つ
*アドラーの言葉
同じ状況でも、人によって抱く感情は違う
「例えば、人間関係がうまくいかない時に、怒るのか、悲しむのか、劣等感を抱くのかは人それぞれですよね。そこでいちいち感情に振り回されていると、心も体も疲れ切ってしまいます。そこで自分を見失いそうになった時に、いつでも立ち返ることができる『座右の銘』を持っておくと、本来の自分に戻ることができるんです。例えば『健康を保つ』とか『笑顔を忘れない』『家族と仲良くする』など、自分が大切に思っていることを軸にするといいですね。辛いことがあったら、常に自分の座右の銘を思い出し、立ち返るという行動を繰り返してみてください。ちなみに、僕の座右の銘は『すこやかに、おだやかに、しなやかに』です。これは、尊敬する詩人の本のタイトルなのですが、そうありたい自分を表す理想の言葉として、人生の指針にしています。例えば、日々仕事をがんばっていくためには『健やかさ』が大事。また、目まぐるしく移り変わる現代社会では『穏やかさ』を保つことで心にゆとりが生まれます。さらに『しなやかさ』を意識することでストレスを柔らかく受け流すこともできるような気がします」(ねこひげ先生)
【その3】「どうして」ではなく「どうやって」を考える
*アドラーの言葉
問題の原因は、過去のトラウマではなく、その人の考え方にある
「僕もそうでしたが、ネガティブ思考が強い人は、何かうまくいかないことがあるとつい『どうして?』と考えてしまいがち。この言葉を『どうやって』に変えることで、なりたい自分に向かうためのヒントが見えてくることがあるんです。例えば、ダイエットがうまくいかないとしたら、『どうして痩せないんだろう?』と考えるのではなく『どうしたら痩せられるのかな?』と考える癖をつけること。僕のおすすめは『どうして』という言葉を使わない時間を作ってみること(笑)。ちょっとした口癖を変えることで、性格が変わることもあるかもしれません」(ねこひげ先生)
【その4】1日1回、5分間の「親切ゲーム」をやってみる
*アドラーの言葉
人間関係を構築するために重要な感情は「喜び」である
「誰かが喜んでいる姿や笑顔を見て、なんだか自分もうれしくなったり、気持ちがポジティブになった経験、ありませんか?理想論かもしれませんが、アドラーはあえて、喜びの感情を素直に受け入れることを提案しています。そして、人が喜んでいる様子を見ることができる一番の近道は『人に親切にすること』。1日1回でもいいから、日常的に人が喜ぶことをやってみましょう。荷物を持ってあげる、ドアを開けてあげる、ありがとうとお礼を言う……など。簡単なことで構いません。職場や家庭で、誰かに親切にすることを、意識して行ってみてください。僕のおすすめは、5分間の『親切ゲーム』をやってみること。5分以内で、誰かを喜ばせることができるかどうか、ゲーム感覚で楽しむのです。5分だったら負担にならないし、それで誰かが笑顔になり、自分もうれしくなるとしたら、やらない手はないですよね(笑)」(ねこひげ先生)
【その5】「もしも思考」をやめる
*アドラーの言葉
性格は、努力次第で変えることができる
「もし、あなたがネガティブ思考で悩んでいるとしたら、その思考(=性格)は、自分で変えることができることを覚えておきましょう。特に、ネガティブ思考になる時によく口に出てしまうのが『もしも〜だったら……』というフレーズです。『もしも明るい性格だったら、恋人ができるのに』『もしも、もっと学歴が高かったら出世できるのに』。こうした『もしも思考』は、ありのままの自分を否定するだけでなく、なりたい自分をも遠ざけてしまう考え方。『もしも』という言い訳は、行動しなくてもいい理由になるから、その時はラクに感じるかもしれません。でも、その『もしも』をやめ、本当の自分に近づくために少しでも行動する意識を持つこと、またその積み重ねが、あなたの性格を変える第一歩になるということを覚えておきましょう」(ねこひげ先生)
「今回紹介した5つの生活習慣はもちろん、一度に全部実践しなくてもOK。一つでもいいから、まずやってみること。そして、実践できたら自分を褒めてあげることが大切です。褒めてあげることで、もうちょっとがんばってみようと思い、できる行動が増え、うれしくてもっとがんばれる……、というポジティブな循環ができたらしめたもの。できなかったとしても決して自分を責めず、次はどうしたらうまくできるかを考える癖がついたら、もうあなたの性格はネガティブ思考ではなくなっているはずですよ。『性格は、努力次第で変えることができる』という考え方は、アドラー心理学の大きな特徴の一つ。ネガティブ思考は、今日からできるちょっとした行動で変えられるということを、僕の実体験を通じて発信していきたいと思っています」(ねこひげ先生)
ねこひげ先生は人気ブログやSNSを通じ、一見「メンタルが強い人」と思われることも多いそうですが、むしろ「もともとメンタルが弱い」ことがバネになって、心理学やメンタルのスペシャリストになったという経歴の持ち主。その等身大のエピソードに勇気づけられますね。
「仕事がうまくいかない」「人間関係がつらい」「勉強の成果がなかなか出ない」……。そんな悩みを抱えている人は、自分を責めずに、まずはできることをがんばってみませんか?いつの間にか、ポジティブ思考の人生をエンジョイしているかもしれません。