年齢を重ねるにつれ、これまではさほど意識してこなかった身体の健康が気になり始めたという方も多いのではないでしょうか。特に気を付けたいのは、今や3人に1人が罹患しているという(※1)生活習慣病です。20代後半から30代にかけて、生活習慣病のリスクが高まります。
生活習慣病の予防のために重要なのは、ズバリ健康的な生活を送ること。「そんなこと分かってる!」という声も聞こえてきそうですね。そこで早速、医師の清益先生に、健康的な生活を送るためのポイントを具体的に教えていただきましょう。
「よく言われることですが、食生活の面では、主食、副菜、主菜のバランスがとれた食事をとることが何よりも大切です。何を食べるべきか迷ったら、厚生労働省が推奨している『食事バランスガイド(※2)』を参考にしてみましょう。具体的な品目が提示されているので、何が足りないか、あるいは何を食べ過ぎているかの目安になり、献立を考えやすくなります」(清益功浩先生)
食事バランスガイド(※2)
1日に何をどれだけ食べたらよいかが分かりやすく示されているので、参考にしてみましょう。例えば、野菜を中心とした副菜は「1日5皿」が目安。それをクリアしようと意識すると、お昼に丼ものを食べる時などに「小鉢もつけようかな」と思いますよね。あるいは、日中にパスタやうどんなどの麺類が続いた時などにも、カロリーを考慮して「夜はご飯の量を控えめにしよう」と思うでしょう。そんな考え方が、自然と「バランスの良い食事」につながるそうです。
「健康のために『カロリーを制限』『塩分を控えめに』と言っても、体格や運動量などによって、制限するべき量には個人差があります。やみくもに制限することを考えるよりも、まずはいろいろな食材をバランスよく摂取し、それを継続することが大切です。
また食事と同じように、適度な運動ももちろん健康に役立つものですが、どのくらいを『適度』とするかについても、やはり個人差が大きいもの。こちらも厚生労働省が推奨している『ランチで出かけるときは、できるだけ遠い店まで歩いて行く』『エレベーターやエスカレーターの利用を減らして階段を使う』などの運動習慣を無理なく生活に取り入れ、継続することを目標にしましょう」(清益功浩先生)
「どれだけ」の目安は、年齢や性別によって異なります。詳細は、「食事バランスガイド」のページをご確認ください。
※1:厚生労働省「平成26年患者調査」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/14/)
※2:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/pdf/gaido-kihon.pdf)
どのような生活習慣が、生活習慣病の原因になり得るのでしょうか?それを探るべく、20代後半の男女各1名に、1週間のリアルな生活記録をつけてもらいました。清益先生に、生活習慣病予備軍になり得るポイントをご指摘いただきましょう。
20代後半男性・会社員A君の1日のスケジュール
平日の特徴
週末の特徴
診断コメント
「まず着目すべきは食事の内容です。野菜不足で炭水化物が多いため、生活習慣病のリスクが高いと言えるでしょう。朝食を抜くことも、体内時計の乱れにつながり、肥満や糖尿病の原因になり得ます。
それから、短過ぎる食事時間も改善を。炭水化物の早食いは血糖値を急激に上げるため、やはり肥満や糖尿病を引き起こす恐れがあります。また、飲酒自体は悪いことではありませんが、飲み過ぎると排尿のために眠りが浅くなる可能性があります。純アルコールにして1日平均約20g程度(ビールなら中瓶1本、缶チューハイなら1.5缶程度)に抑えましょう。
就寝前にスマホを長時間見る習慣も、睡眠の質を低下させるリスクがあるため改善した方がいいでしょう。さらに、平日、週末ともに運動量が少ないことも懸念点です。日照不足によるビタミンD欠如で、今後、骨がもろくなる可能性も。1回20分程度、できれば屋外での運動を習慣にすることをおすすめします」(清益功浩先生)
20代後半女性・会社員Bさんの1日のスケジュール
平日の特徴
週末の特徴
診断コメント
「土日の不規則な食生活は、肥満や糖尿病のリスクを高めます。平日は3食とれているものの、バランスはイマイチです。朝食を、タンパク質が入っていない野菜ジュースのみで済ませていることから、筋肉に必要なタンパク質が不足し、負担がかかっていることが予想されます。適度にタンパク質をとるようにすれば、毎日の運動にもより効果が期待できるでしょう。
また、寝る前に習慣的にスマホを見ていることによって、寝つきが悪く睡眠の質が低いものと推測されます。睡眠の質が低いと自律神経の変調を起こすリスクが高いので、就寝前にスマホを見るのは控えましょう」(清益功浩先生)
「私は健康に気を使っているから大丈夫!」という方もいるでしょう。しかし、清益先生いわく、良かれと思って実践していることが、実は逆効果になっている場合もあるんだとか。意外と見逃しがちな、生活習慣の落とし穴についてご紹介しましょう。
「炭水化物制限ダイエット」は危険
「脂質も炭水化物も、身体に必要な栄養素です。太るから、生活習慣病の原因になるからといって、全く摂取しないのは逆効果です。特に極端な糖質制限は、筋肉が減って代謝が低下する『隠れメタボ』の原因になるだけでなく、脳の活動にも影響が出る可能性があるため、おすすめできません」(清益功浩先生)
「昨日食べ過ぎたから今日はご飯抜き」は逆効果
「きちんとした管理下で行う断食治療は効果がありますが、無計画に食事の回数を減らすことは、かえって肥満の原因になります。食事を抜くことで食欲を抑制するレプチンというホルモンが、うまく作用しなくなってしまう可能性があるからです。『昨日食べ過ぎたから今日はご飯抜き』というやり方では帳尻は合いませんので、そもそも食べ過ぎないよう努力しましょう」(清益功浩先生)
和食なら身体に良い……とは限らない
「ヘルシーな和食は、カロリーやバランスの面で考えれば、生活習慣病の予防に役立つものです。一方で、見落としがちなのが塩分。味噌、しょうゆ、漬物など、和食は塩分が高いものが多く、食べ過ぎると高血圧になる恐れがあります。薄味を意識する、減塩のものを選ぶなどして、塩分過多のリスクを避けましょう」(清益功浩先生)
睡眠は長さだけにこだわってもダメ
「睡眠時間は個人差が大きく、季節による変動もあるため、『○時間は寝るべき』などと一概にこだわり過ぎると、かえって入眠しにくくなる場合があります。大切なのは、量より質。睡眠の質を上げるためには、寝る前にカフェインなどの刺激物の摂取を控えて入眠をスムーズにすること、休日も平日と同じ時間に起きて体内時計を整えること、昼寝をするなら午後3時までにすること、昼寝は20~30分程度に抑えることなどを意識するといいでしょう」(清益功浩先生)
「食生活の変化などにより、生活習慣病のリスクが懸念される年齢は、年々低下しています。小学生に肥満が増加しているのがいい例でしょう。生活習慣を見直し、無理のない範囲で、健康的な生活を実践していくことが大切です」(清益功浩先生)
かつては成人病と言われ、中年層にそのリスクの高いイメージがあった生活習慣病。今や若い人にも生活習慣病予備軍は増え、年齢を問わず全ての人にとって、決して他人事ではなくなってきています。だからこそこの機会に、生活習慣病予備軍になっていないか、ご自分の生活を見直してみましょう。