『non-no』の専属モデルを経て、『VERY』などの女性誌でも活躍してきた和久井悦子さん。現在はモデル業だけでなく、ヨガインストラクターとしても活躍の場を広げています。
そんな和久井さんがヨガを始めたのは30歳になった頃。モデル+αのスキルを手に入れるため、資格取得を考えたことがきっかけでした。ヨガを選んだのは「その当時流行っていたから」というシンプルな理由だったそうです。
「ジム通いの経験はあったものの、ヨガに関してはチンプンカンプン。思い立って初めてヨガスタジオに足を運んでみて、『ヨガってこういうものなのか……』というところからのスタートでした。ヨガ教室に数年通い、講師養成講座へとステップアップする人が多い中、『分からないなら勉強してみよう!』といきなり講師養成講座からこの世界に飛び込みました」(和久井さん)
そんな和久井さんは、2018年に出産を経験しながら、今なおメリハリある美しいボディラインを維持されています。産前産後は多くのママが体型変化や子育てのストレスに悩む時期。そんな時期だからこそ、心身ともにリラックスできるヨガを日常に取り入れてみてはいかがでしょうか。ボディラインを整えるためにもおすすめです。
「妊娠期に初めてヨガをしてみようという人も多くいらっしゃるでしょう。とはいえ、妊娠中や産後にヨガやその他の運動をする場合、細心の注意が必要です」(和久井さん)
「ふだんからあまり運動をして来なかった人が、妊娠による体重増加を気にするあまり、いきなり強めの運動を行うのは危険です。反対に運動習慣があった人が、妊娠中だからと運動強度を極端に弱めてしまってもNGです。妊娠期は筋肉量を増やすというよりも維持することを目指しましょう。維持できない妊婦さんがほとんどです。できるのであれば、運動は妊娠前から行い、その上で妊娠期にヨガをはじめとして適度な運動をすることがおすすめです」(和久井さん)
とはいえ、実際に経験してみないと分からないことばかり。ご自身も出産を経験されたからこそ、妊娠前からの運動の必要性を実感されたそう。産後の“寝られない・食べられない・外に出られない”という生活で、体力も落ち、初めての子育てに不安な毎日を送る人も多いのではないでしょうか。そんな中、体力作りや健康維持、精神面での安らぎや緊張を解放するためにも、適度な運動としてヨガを取り入れてみるのがおすすめだそうです。
妊娠中や産後にヨガを行う場合、気を付けるべきコト
妊娠中は自己判断をせず必ず産婦人科の主治医に「ヨガを行ってもいいかどうか」を事前に確認し、指示に従ってください。
今回はお腹が日々大きく重くなる妊婦さんが健やかな出産を迎える手助けとなるような、リラックスできるヨガや、産後特有の変化や悩みを抱えるお母さんの心身を整えるヨガを紹介します。決して、無理はしないようにしてください。
また、もしマタニティヨガのレッスンを受けるなら、しっかりと妊産婦の体の知識を持った専門の指導者のクラスを選ぶことも大切です。子宮頸管が短いなどトラブルがある人の運動は制限されているので、注意が必要です。
「妊娠期のヨガの大きな魅力は自分自身に意識を向け、自分のための時間を作ることができること、緊張感から解放されること。それまであまり運動習慣がなかった人は、無理のない程度に調整してください。特に妊娠後期には、本当に自分の体なのかと疑いたくなるほど体が重くなるので、安定感が無くなる方も多いと思います。転倒などしてしまわないように、壁のそばなど安定できる場所で行うように気を配るといいですね。また、途中でしっかり休む、お腹が強く張ったりしたら中断するなど、注意事項を守った上で楽しくヨガを行いましょう」(和久井さん)
【妊娠期におすすめのヨガ】
「うつ伏せや、強いねじりのポーズなどは控えましょう。妊娠中は血液量が非妊娠時の1.5~2倍になると言われ、むくみやすくなります。ヨガで下半身の大きな筋肉をはじめ全身を動かすことで、体重増加でむくみやすくなった下半身に溜まっている老廃物や体液を、ポンプのように押し戻す効果が期待できます。着圧の高いスパッツや靴下による効果は一時的なものなので、むくみの根本解決には筋力の維持が大事です。さらに私は、さらしをお腹に巻いて温めることも欠かさず、油分・塩分も控えていたので、むくみにくかったです。筋肉を動かすと熱生産をおこすため、さらに冷えにくい体にもなります」(和久井さん)
猫のポーズ
「腰が反りっぱなしになることで、気づかないまま腰痛になってしまうことも。お腹の重みを支える骨盤周辺のこわばりや、固くなってしまった肩回りや背骨をほぐすと気持ちいいですね」(和久井さん)
(1)両手の幅を肩幅にし、肩の真下に手がくるように床につきます。両膝を腰の幅に開き、太腿の付け根の真下に膝がくるように床につきます。息を吸いながらお尻を斜め上へ引き上げ、胸を押し出すようにして背中を反らせます。
(2)息を吐きながらお尻を下に下げ、目線はおへその辺りを見ながら頭を丸め込み、背中も丸めます。
仰向けのバタコナーサナ
「お腹が重くなると猫背で丸まりがちになるので、胸元を広げ深く呼吸をしてリラックス。心地が良いと感じる程度に行うのがおすすめです。バスタオルやクッション、ブランケットなど、家にあるものを膝や背中の支えとして使って行いましょう」(和久井さん)
(1)あぐらをかくように座り、両足裏を合わせたら、膝と床の間にクッションを入れて支えます。おしりの後ろに長方形にたたんだバスタオルをおいたら、その上に仰向けになります。
(2)仰向けになったら、ゆっくりと呼吸をしてみてください。
「背骨の下にバスタオルを入れて胸を開くことで、呼吸がさらに深くなります。肩まわり、また股関節を開くことで骨盤内の血行を促すほか、浅い眠りを質の良い眠りに整える効果もあります。長時間の運動は妊娠中には負担になるためあまりおすすめできません。最大でも5分程度を目安にしてください」(和久井さん)
「出産をスムーズに行うための『リラキシン』というホルモン分泌の影響で、妊娠中は靭帯などがゆるみやすくなります。産後は、大きな子宮を支えていた骨盤底筋群などもゆるんでダメージを受けているので、急激に運動するのではなく、半年ほどかけてゆっくり戻していく方がいいです。産後すぐに元のボディに戻すことを焦らず、およそ産後3週間後、もしくは1ヵ月健診で医師のOKが出てからゆっくり運動する程度で十分です。赤ちゃんとの生活を楽しみながら、下半身の筋肉を少しずつ動かしていきましょう。私の場合は、一年かけてようやく元の体型に戻ったような気がします。焦りは禁物です!」(和久井さん)
【産後におすすめのヨガ】
「産後すぐは、足腰がぐらぐらして不安定さを感じた方も多いはず。実は私もそうでした。間もなく新生児との慣れない生活も始まり大変に。家庭によっては、里帰り出産や祖父母のお手伝いなどが難しい場合もありますよね。無理はせずにホルモンの影響でゆるんでいた下半身のさまざまな筋肉を鍛え、ぐらついた体を少しずつ回復させていきましょう。新生児との生活に慣れてお出かけができるようになったら、さまざまな悩みを相談できて息抜きやリラックスにもなる、ヨガのコミュニティを活用してもいいですね」(和久井さん)
椅子のポーズ(スクワット)
「私は産後、息子を胸の前で抱きながら行っていました。安定感が欲しかったので、後ろに倒れないように壁にお尻をつけるようにして行っていました。足幅をワイドに広げて行うスクワットなども効果的です」(和久井さん)
(1)両足を肩幅に広げ、均等に体重をかけてまっすぐ立ちます。
(2)息を吸いながら両腕を天井に向かって突き上げます。 赤ちゃんを胸の前で抱っこしながらでも可能です。息を吐きながらゆっくりと両膝を曲げ、お尻を後ろに突き出すようにしゃがみます。(1)に戻ります。
胸を広げるポーズ
(1)両膝を肩幅に広げて床に着き、腰に手を当て、軽く後ろに上半身を倒します。
「産後は靭帯がゆるんでいるので、急激な前後屈はおすすめしません。無理に腰を反ってしまう方が多いので、ストレッチのようにじんわり気持ちいい程度に行うといいですね。深呼吸しながら、胸が開いたなと感じる程度がベストです。授乳で前かがみや猫背になりがちな時期なので、肩周辺や胸をゆったり伸ばしてリラックスを心がけましょう」(和久井さん)
「妊娠期は体調の変化も気持ちの変化も大きく、自身のことなのにうまくコントロールできずに、落ち込むこともありますよね。同様に産後に関しても、ホルモンバランスの衝撃的とも言える変化が起こり、私たちの体と心はそれについていけません。涙もろくなったり、不安になったり、自分を責めてしまうこともあるかもしれません。どうか、そんな時にはコントロールしようとせず、休んでください。甘えてください。人に話してください。子育ては一人でするものではないです。私も信頼する助産師さんから、よくメッセージをもらって元気づけられました」(和久井さん)
「妊娠・出産という素晴らしい経験をした私たちの体は、急には元に戻りません。むしろ、元に戻るという表現に、私は違和感があるほどです。元に戻るというよりも、もっと良くなる未来が待っていると信じ、自分のケアをコツコツと積み重ねていきましょう。」(和久井さん)