自分がよく知っている事柄を人に伝えるというシーンには、ミスコミュニケーションが起こりやすい要素が揃っています。具体的に伝えているつもりでも、それを知らない人からすると抜け漏れが出てしまいがち。教わる側は説明を聞くのに一生懸命で、足りない部分に気づきにくい状況です。特に教わる側が実際に目で確認できないことを、言葉で説明するような場合、かなりの確率でミスコミュニケーションが起きます。
引継ぎがうまくいかないのは、言ってみれば「あたりまえ」。しかし教える側にも、教わる側にも悪意はないので、事前につまずきポイントを知ることで改善できるのも特徴です。
よくある引継ぎトラブル事例1:「なにかわからないところある?」「大丈夫です」を信じたばかりに…
引継ぎの業務を一通り説明し、「なにかわかないところはある?」「大丈夫です」と理解を確認。それなのに、いざ後任者がその仕事をやってみるとできないことが続出。引継ぎをした自分の信用まで下がってしまった。
引継ぎの極意1:一人で何回かやってもらい理解を確認
「わからないところは質問するだろう」という考え方は要注意。引継ぎをした後、教わる側から質問が出るまでにはタイムラグがあります。「何か質問ある?」と聞かれても、そもそも理解が浅い部分を把握できない、という人も。説明の抜け漏れを見つけるためにも、実際に一人で何回か作業をやってもらい、理解を確認しましょう。
よくある引継ぎトラブル事例2:抜け漏れがないよう説明しているうちに、引継ぎの残り時間が……
後で困らないよう丁寧な説明をしているうちに時間が足りなくなった!スピードをあげて引継ぎ作業を進めたところ、後半部分が雑になってしまい後任者が困ることに。
引継ぎの極意2:アウトラインを先に説明してから、詳細を説明!細かいことは資料で補完
自分がわかっていて、相手がわからない事柄を説明するときには、丁寧に細分化した説明が必要です。しかし時系列で詳細に伝える方法では時間が足りなくなることも。引継ぎに十分な時間がない場合には、全体像を先に伝えてから詳細を説明するテクニックが有効です。レアケースなどについては資料として残し、後で調べられるようにすれば引継ぎ時間を更に短縮できます。
よくある引継ぎトラブル事例3:スカスカ!暗号?!後任者に自分でマニュアルを作ってもらったら…
細かくメモをとるように伝えてから、引継ぐ仕事を、順を追って説明。自分でとったメモをマニュアルにして仕事をしてもらえばいいと思っていたら、後任者のメモは抜け漏れのオンパレード。結局、すべての説明を一からやり直し、マニュアルも自分が作るハメに。
引継ぎの極意3:後任者にマニュアル作りを丸投げしない
説明された順にとったメモは断片的になりがち。体系だったマニュアルを残すためには、教える側の介入が必要です。コツは、図解や写真、グラフなど視覚的にわかりやすい工夫を多くすること。自分がいなくなった後、わからないところを誰に相談したらいいかまで書いておくとベターです。
引継ぎをスムーズにするためには、思っている以上の細かい気配りが必要です。自分だと簡単にできることに手間取る姿を見て、イライラしてしまうこともあるでしょう。
責任感や人間性が透けて見えるからこそ、後任者や周囲の人が気持ちよくなるような引継ぎができれば、信頼感はアップします。「離れても人間関係を続けたい」と思ってもらえることは、社会人として大きなメリット。ポイントを押さえ、自分の信頼を積み重ねる気持ちで取り組んでみてください。
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