「いきなりで悪いんですけど、ビジネスパーソンには『雑談力』より『反応力』が断然大事です!極端な話、あなたの話はどうだっていいんですよ」(西野さん)
そう話すのは、コミュニケ—ションスキルの研修講師やコンサルティングを行う西野浩輝さん。西野さんは、昨今話題の「雑談力」については懐疑的だと言います。
「人はみんな、自分の話を聞いてほしいんです。だから無理やり雑談をして盛り上げようとするより、まずは相手の言ったことにきちんと反応すること!これが基本。相手は反応を見てさらに話を進めるので、そこで初めて質問できる態勢が整うわけです。だから、質問のバリエーションやストックを増やすのは、その後でいいと思います。
以前、お笑い芸人・サバンナの高橋さんがテレビ番組で、『ほんまっすか』の一言さえあれば、どんな先輩からも気に入られるとおっしゃっていました。深刻な場面、面白いこと、普通のときで、『ほんまっすか』のトーンを変えてリアクションするんです。ネタとして少し大げさに言っているとは思いますけど、ここにこそヒアリングの本質があると思いましたね。だって深刻なことを話したとき、聞き手が深刻な面持ちで『ほんまっすか〜』って言ってくれたら、もうちょっと話そうって思うでしょ。そう考えると、一般的にみんなね、リアクションが薄いんです」(西野さん)
相手の言ったことにしっかり反応しつつ、話に乗っかり、さらに話を引き出すような質問を重ねていく。そうすることで、自然と会話が成り立つと西野さんはおっしゃいます。質問をすることの重要性は、ご自身の経験から実感したそうです。
「僕が質問力の重要性を感じたきっかけは2つあるんです。まず1つは、新人で入った会社で先輩から『お前はしゃべってばかり。営業は8割が聞く仕事だ』と言われたこと。もう1つは、仕事で憧れていた人に教えを乞うためにインタビューをしたら、質問された相手もすごく喜んでくれたこと。それで、「質問をする」ということには、数々のメリットがあると気づいたんですよね。主なところでは、『自分はその答えによって得られるものがある』『相手に喜んでもらえる』『質問をした自分も一目置かれる』、これっていいことずくめじゃないか、と。それ以降、質問に対するアンテナが立って、日常的に『良い質問とは何か』を考えるようになりました」(西野さん)
相手に一目置かれるためには、やみくもに質問をすればいいというわけではありません。一体どんなことを聞けばよいのでしょうか?
「相手の心をつかむいい質問は、大きく分けて3つあります。まずは、『本人が気づいていなかった観点を引き出す質問』。ある会社のトップ営業に、キラークエスチョンについて聞いたことがあります。その方は『御社は10年後どうしていかれるご予定ですか?』という質問を挙げられました。これは聞かれる相手も盲点で、なかなか考えさせられると思いますね。きっと『この人はなかなか鋭いところを聞いてくれるな』と思われて、相手の記憶に留まることでしょう。
あとの2つは、『本人がもやもやしていたことを整理できるような質問』『本人が忘れていたことを思い出させる質問』です。いずれも質問したことで考えさせられますから、同じく相手に響くと思います」(西野さん)
良い質問の例を次々と提示してくださる西野さん。ご自身がどうやってそのスキルを身につけたのかも、うかがいました。
「なるべくリスクの少ない場面、たとえば同僚や家族など気心知れた人の前で、日頃から練習することですね。いい雰囲気をつくりながら、ちょっと踏み込んだ『なぜ』の質問や、具体的なことを引き出す『たとえば』の質問をしてみましょう。
そして、どこまで踏み込んだ質問をするかを判断する際に重要なのが相手の反応です。最初に簡単な質問をしてみてノリよく返してくれたら、さらに突っ込んだ質問をしてもいいでしょう。逆に、相手のリアクションが悪かったら、いったんコメント等でつないだうえで、タイミングを見て少しずつ踏み込んでいきましょう。
それと、自分が憧れている人にインタビューをしてみるのもいいと思います。他部署の先輩や、プライベートでお付き合いがある人、誰でもいいんです。この場合、質問事項を事前に用意して送っておくとスムーズにいくし、真剣さが伝わると思います。結果的には相手との距離が縮まり、より良い関係性が築けますよ」(西野さん)
また、質問をするには仮説を立ててみることも大切だとか。
「何を質問していいかわからないから質問をしない、そして質問をしないから質問力が鍛えられない……そんな悪循環に陥っている人は多いと思うんです。その場合は、仮説を立ててみましょう。情報収集しながら『この企業はこんなことを課題に思っているのではないか』とあらかじめ考え、それを検証するために質問をする。個人の場合なら、その人が何に興味があり、どんなことに困っているのかに思いを巡らせて質問をする。そして、だんだん自分が聞きたいところに寄せていくんです」(西野さん)
質問力を鍛えることでメリットが得られるのは、ビジネスシーンだけではありません。時に恋愛にも効果的だと西野さんは言います。
「自分のこだわりや得意なことを真剣に聞いてもらえると、やっぱりその人に対して好意を持ちますよね。自分が誇れることをいっぱい聞いてくれたら、誰だってうれしいですよ。もし気に入っている異性がいたら、インタビューしてみたらいいと思います。最初は悟られないように、あくまでもビジネスライクに。『自分の勉強のために聞きたい』と大義名分をつけてセッティングすること!(笑)」(西野さん)
なかなか緊張しそうな場面ですね(笑)、と私が答えると、西野さんはこうアドバイスしてくれました。
「最初の話に戻りますけど、一番簡単で大事なのは、まず相手の話に同意すること。ちゃんとリアクションをしてあげることです。主導権は質問者が握っておいたほうがいいですけど、あくまでも主役は質問される側であることを忘れないでください!」(西野さん)
難しく考えすぎず、まずはリアクション!これならすぐにできそうですね。人間関係を円滑にし、仕事も恋も上手く運んでくれる「反応力」や「質問力」、これを鍛えない手はありません。ぜひ西野さんの数々のアドバイスを実践して、スムーズな会話を楽しんでくださいね。
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