ビジネスシーンでは、職場の内外でプレゼンテーションを求められる場面があるでしょう。そんなとき、いわゆる「あがり症」の方たちは、周囲の注目を浴びることで膝が震えて冷や汗をかき、声を震わせながら、やっとの思いで発言する……といった大変な思いをしているのではないでしょうか。
そもそも、「あがり症」は病気ではありません。対人交流の場面やスピーチや発表をする場面において、とても緊張し、不安が高まってしまう状態のことです。
この状態が高じて社会生活に支障をきたすようになると、治療の検討も必要になるかもしれません。しかし、プレゼンなどの特定の場面でだけ緊張しやすい場合には、心がけ一つで改善することが多いのです。
そもそもプレゼンテーションは、直接的に情報を伝えることで聴衆にメリットをもたらす働きかけです。つまり、「聴衆ファースト」のサービス行動なのです。
ところが、あがり症の人は自分自身に意識が向く特性があります。したがって、プレゼン中にも「滑舌が悪くならないように」「緊張していることを悟られないように」と、自分の評価にばかり意識を向けてしまうため、肝心の「伝えたいこと」への集中がなかなかできないのです。
こうして、聴衆を主体にするべきサービスが「プレゼンテーター・ファースト」(しかも自信のない主体)になっていくと、聴衆は心が動かされず、場がしらけてしまいます。
それを見て、あがり症の人は「私はプレゼンに向いていないんだ」と結論づけ、プレゼンへの苦手意識を決定的なものにしてしまうのです。
では、あがり症の人が緊張に振り回されずにプレゼンを進めるためには、どのようなことを意識すればいいのでしょう? ここでは、4つのキーポイントをご紹介します。
ポイント1:慣れるまでは、聴衆の頭上に目線を向ける
あがりやすい人は聴衆の目を見つめてしまうと、「自分はどう思われているのだろう?」と評価を気にし、自分にばかり意識が向いてしまいます。
そこで一つのプレゼンに慣れるまでは、聴衆の目ではなく、彼らの「頭上」に目線を向けるようにしましょう。聴衆の頭上をまんべんなく眺めて話せば、さほど反応が気にならなくなります。すると、同じプレゼンでもだいぶ楽に話せるようになるでしょう。
ポイント2:噛んでも気にしない!「伝える内容」が重要
そもそも、聴衆は「プレゼンの内容」が知りたいのであって、ほとんどの人はプレゼンテーターという人物に関心を持っているわけではありません。したがって、カリスマ・プレゼンテーターが行うような、会場を沸かし聴衆の心を一つにするようなプレゼンなどできなくてもいいのです。
噛んだりつっかえたりしても、聴衆はさほど気にしていません。劇場ではないのですから、笑いをとれなくてもいいのです。あくまでも大切なのは、プレゼンの中身です。「伝えるべきことをしっかり伝える」が第一優先。まずはこれさえ押さえていれば十分です。
ポイント3:聴衆の反応に憂慮せず、堂々と進めよう!
うなずきや表情のない聴衆を前にすると、プレゼンテーターは躊躇してしまいます。しかし、そもそも人が他人の話に集中しているときには、口を「へ」の字にし、無表情な顔になってしまうものです。したがって多くの場合、聴衆の反応が薄くても何も心配はありません。逆に真剣に聴いてくれていることに感謝し、自信を持ってプレゼンを進めていきましょう。
また、あくびや居眠りが多い場合にも、プレゼンテーターの話に退屈しているとは限りません。会場が、眠くなるような照明や室温になっている可能性があります。また、座りっぱなしで疲れているのかもしれません。環境を見直し、時折ディスカッションを入れるなどして場の空気を変えていきましょう。
ポイント4:とにかく場数!同じ内容のプレゼンを何度も行う
あがらない自分になるには、とにかくプレゼンに慣れるしかありません。自信はなくても一つのプレゼンを数多くこなし、考えなくても話せるようになるまで続けていきましょう。
最初は声を震わせながら行っていたプレゼンも、繰り返せば前回より確実に上手になります。すると、次には聴衆を喜ばせるような工夫を織り込みたくなるものです。こうして、「プレゼンに自分なりの味付けをしたい」と思えるようになれば、徐々に聴衆の心に近づくプレゼンができるようになるはずです。
あがり症の方は、以上のポイントを押さえながら、ぜひあきらめずにプレゼンを続けてみてください。継続すれば必ず上達し、上達すれば必ず自信がつきます。すると、いつのまにか「あがり症」であったことを忘れ、「伝えるよろこび」を噛みしめるようになっているでしょう。プレゼンの道は一日にしてならず。「継続は力なり」です!
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