地元福岡でサロンモデルなどをしながら管理栄養士の資格を取得し、大学卒業後に本格的にモデルの道に進んだ彩音さん。Instagramなどで発信するファッションコーデ写真に注目が集まったことと、周囲からのさまざまな反響が上京のきっかけになったそう。そんな彩音さんですが、そもそも、大学で栄養学を学ぼうと思ったきっかけは何だったのでしょう?
「子どもの頃から食に興味があり、よく料理の手伝いをしていました。『パティシエやシェフなど、食にかかわる仕事に就けたらいいな』と漠然と思っていましたね。管理栄養士という仕事を知ったのは、祖父が咽頭がんを患い、しばらく口から食事がとれなくなってしまったのがきっかけです」(彩音さん)
「リハビリで徐々に食べる練習をすると、だんだん祖父の表情が明るくなってきたのです。元気になっていく祖父を見て、食の大切さを実感しました。『食を通じて、人を幸せにすることができるやりがいのある仕事だな』と思って、管理栄養士を目指しました」(彩音さん)
モデルの仕事をする上で、管理栄養士としての知識はどのように役立っているのでしょうか?
「人前に出て撮影される仕事なので、体型維持には特に気を付けています。学んだことが食生活の管理にとても役立っていますね。友人から食生活に関して相談を受けることもあります。管理栄養士の立場から同世代の女性の食に関して言いたいことは、『自分の食事の量や栄養素の正しい基準』を把握しましょうということです。1日に必要なエネルギーや栄養素の基準量が『日本人の食事摂取基準』で定められており、「何を」「どれだけ」食べたらいいのか目安となる食事の量が『食事バランスガイド』で分かりやすく説明されています。18~29歳の女性では、1日1800~2000kcal、一汁三菜の食事がベストですね」(彩音さん)
【18~29歳の女性におすすめの、食事量の目安】
●1日の総摂取エネルギー量1800~2000kcalを3食に分ける
●1食につき、ご飯は170g程度、肉や魚は60g程度、野菜や果物はできるだけ多め(目安量をクリアしにくいため)
★参考:食事バランスガイド早分かり(農林水産省)
https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/zissen_navi/balance/division.html
「一度作ってみて、上記の食事量がどのくらいかを把握してください。特にご飯の量については毎回計量しなくても、お茶碗によそって『このぐらい』という基準が把握できるのでおすすめです。肉や魚はスーパーでパックに重さ(g)が表示されているので、参考にしましょう。食事量があやふやなままでは、自分が食べすぎたのかそうでないのか判断がつきません。一度基本の食事量を把握してしまえば、外食などで食べ過ぎた日は調整しようという気持ちが働くのでおすすめです」(彩音さん)
何かを極端に避けたり、同じものばかりを食べたりという偏った食事法はよくないそう。これだけ食べればいいという単品での食事はなく、どんな栄養素もすべて女性の体作りに必要なものだと彩音さんは言います。そのため、目的によって基準の食事から栄養素を調整する方法を教えていただきました。
■鍛えたい女性向け
「基本は、基準の食事量をバランスよく食べていれば大丈夫です。もしプラスするのであれば、質のいい筋肉を育むためにそのもととなるたんぱく質を少し多めに取り入れるといいですね。時間がなくて1食食べそびれた時や、今日は食事内容的にたんぱく質がちょっと不足しているなと感じた時などに、納豆1パック、ゆで卵1個、プロテインバーなどで手軽に補う程度がおすすめです」(彩音さん)
■なるべく運動はしたくないけれど、痩せたい女性向け
「体重を減らすには食事量を減らすことを考えがちですが、全体量ではなく主食となるご飯(炭水化物)の質を調整するのがおすすめです。白米を玄米に変更したり白米にもち麦などを加えると、食物繊維が豊富になり摂取エネルギー量を無理なく減らせます。パンは全粒粉パン、小麦粉はおからパウダー、うどんはそばなど低GI食(食後の血糖値の上昇がゆるやかな食品)で代用するのもいいですね。炭水化物(糖質)は体のエネルギー源として必要な栄養素のため、抜くことはおすすめしません」(彩音さん)
「食事の質も大事ですが、日常生活のちょっとした工夫が体重管理に役立ちます。駅などでなるべく階段を使う、普段からいい姿勢をキープするだけでも運動量アップに役立ちます。運動量を少し増やすために、継続しやすいものを取り入れてみてください」(彩音さん)
■妊娠中、産後の女性向け
「妊娠期に胎児の成長のために特に必要とされているのが、ビタミンの一種である葉酸。あまりなじみのない名前ですが、妊娠前から出産後も積極的に摂ることが推奨されています。ブロッコリーやほうれん草、バナナ、キウイフルーツ、納豆などに含まれています」(彩音さん)
「熱に弱く水に溶け出しやすい栄養素のため、調理法を工夫して摂取したいですね。茹でるより蒸す、スープやみそ汁など、汁ごと食べる調理などがおすすめです。ブロッコリーやほうれん草などの冷凍野菜を常備して、おかずにパッとプラスすると便利です」(彩音さん)
スポーティーでかっこいいコーディネートの中に、女の子らしいアイテムや色を程よく入れた自分らしいファッションを発信する彩音さん。モデルとして意識しているのは、細い体ではなく引き締まっているヘルシーな体なんだとか。同世代のフォロワーたちの中には、痩せたいがために本来楽しむべき食に無理な制限をかけ、体に負担をかけるような食生活を送っている人も多いのでは、と危惧しているそう。
「今はなかなか友人たちと外食することが難しいですが、外出できれば友人とご飯を食べにも行きますし、カフェで甘いものも気にせず食べます。食は生活に切り離せないものですし、何よりあれダメこれダメの制限ばかりではつまらないですよね。不必要な栄養素はなく、どんな栄養素も食品も適量を摂取すべきだと思います」(彩音さん)
「大学では調理の実習も多かったので、成人女性が1日に摂るべき食事量や栄養素がしっかり頭の中に入っています。私は食べ過ぎてしまったり野菜不足になったりしても、その前後の食事で調整するようにしています。楽しいこと、おいしいことを諦めたくないですね。だからこそ自分の正しい基準量を知ることが重要だと感じています。自分の摂るべき正しい食事量をまずはみなさん一度作って、その量を把握することから始めてみてください」(彩音さん)
「理想とする体型やキレイな体という概念って、100人いれば100通りありますよね。目指すべきところはみんな違います。だから、一般的な成人女性に必要な食事量をベースに、ご紹介したような簡単な食事の調整を続けていくことが大事です。お野菜たっぷりのお味噌汁やサラダなどを先に食べることで、血糖値の急上昇を防ぐといった、食べる順序の工夫を取り入れるのもおすすめです」(彩音さん)
さまざまなカルチャーを融合させた交流の場として、カフェを開くのが彩音さんの夢なんだそう。さらに健康的な食の情報を提供することで、体の基本になる食を誰もが自ら上手に選択していけるように手助けしていきたいと言います。そのために管理栄養士兼モデルとして、今後は積極的に活動を行っていくそうです。