食べるお花といえば、菊や桜、菜の花などを思い浮かべる方も多いと思いますが、最近では、ベゴニア、マリーゴールド、バーベナ……など、多彩なお花を使った料理やスイーツを見かけるようになりました。自宅で過ごす時間が増えた今、いつもの食事を食べられるお花「エディブルフラワー」でアレンジして楽しむ方も増えているようです。そこで今回は、日本エディブルフラワー協会発起人・Juliさんに、エディブルフラワーの基礎知識や家庭での楽しみ方をお聞きしました。
「エディブルフラワーは、毒性のない食用専門のお花として農家が育てているものです。観賞用のお花と違って、観賞向けにきれいに育てるための化学農薬を使わず、野菜と同様に無農薬または低農薬で、年間を通してたくさんの種類が栽培されています。最近ではネットのみならずデパートやスーパーなどでも購入できるようになりましたね」(Juliさん)
Juliさんによると、エディブルフラワーの使い方としてまず着目してほしいのが、花びらの付け根にあり花全体を支える“萼(がく)”の部分なのだとか。お花によって萼が硬いもの、繊細で軟らかいものがあり、前者の特徴を持つエディブルフラワーは花びらだけを使う、といった具合にするとよいと言います。
「例えば、萼が硬いひまわりは花びらだけを使います。ひまわりの花びらは熱に強く黄色がきれいなので、マフィンに入れると素敵な一品に仕上がりますよ。
一方、萼が軟らかいビオラやパンジーなどは、お花全体を料理に使うことができます。“お花らしさ”を存分に楽しめますね。また、種類によって異なる甘さや酸っぱさ、香りなど、個々のエディブルフラワーの特性を活かして料理やデコレーションに使っていくと、その楽しみ方もより一層広がります」(Juliさん)
エディブルフラワーの良さは、軽く水洗いするだけで即料理に使える手軽さ。例えばサラダや冷奴、素麵に散らすだけで、いつもの料理をワンランク上の色鮮やかな料理に変身させることができます。おうちご飯はもちろんホームパーティーなどでも、頑張らないのに周りを「あっ」と驚かせる演出ができてしまうのです。
そしてエディブルフラワーは、飾るだけでなく焼く、煮る、和えるなどの料理にも応用でき、豊かな味、風味、触感を楽しむことができます。まずは、家庭でも簡単に作れて、他の料理にも気軽に取り入れられる『食用菊の鮮やかおひたし』と『バラの生ジャム』の作り方をJuliさんに教えていただきました。
食用菊の鮮やかおひたし
材料
作り方
*POINT*
完成したおひたしは、そのままおかずの一品になるのはもちろん、他の料理と合わせてもおいしいアクセントになります。この後ご紹介するオープンサンドや生春巻きのレシピにも使用します。バラの生ジャム
材料
作り方
*POINT*
バラの香りが広がるジャムを、家庭でも楽しみやすいようにベリー類と合わせたレシピです。このジャムがあれば、こんな楽しみ方も!
・バラのドレッシング
バラの生ジャム5~10g、オリーブオイル(またはサラダ油)15g、酢10g、塩少々を混ぜ合わせるだけで、簡単にバラの香りや花びらの食感を楽しめる、色鮮やかなドレッシングが出来上がります。
・バラのノンアルコールカクテル
グラスの底に、大さじ2杯のバラの生ジャムと氷を入れます。氷に当てながらリンゴジュースやソーダをグラスにゆっくり注ぐと、二層に分かれた見た目も美しいドリンクの完成です。マドラーやストローで、グラスの底のジャムを混ぜてお召し上がりください。
・バラのグラニテ
バラの生ジャムに2倍の水を加え、よく混ぜて溶かし、タッパーなどの平たい容器に流し、冷凍庫で凍らせます。凍らせた後に、フォークなどで細かく砕けば、簡単にグラニテが出来上がり!
バリエーション豊富にアレンジができる『食用菊の鮮やかおひたし』と『バラの生ジャム』。これらを用いた前菜・主食のレシピもJuliさんが紹介してくれました。お花が透けて見える『エディブルフラワーの生春巻き』と、菊の香りが広がる『菊とポテトのオープンサンド』も自宅で作れるお料理なので、普段の食事はもちろん、誕生日や記念日など、食卓を華やかにしたい日にもぜひチャレンジしてください!
エディブルフラワーの生春巻き
材料:1本分
作り方
*POINT*
スイートチリソースでタイ風、ナンプラーでベトナム風の味わいが楽しめますが、お花の生春巻きなので先ほどご紹介したバラの生ジャムを使ったローズドレッシングと合わせても相性抜群です。菊とポテトのオープンサンド
完成写真:左から『玉子と蒸し鶏のオープンサンド』、『バラジャムとベリーのオープンサンド』、『菊とポテトのオープンサンド』
材料:菊とポテトのオープンサンド1枚分(写真右)
作り方
*POINT*
手軽に作れて写真映えのするオープンサンドは、エディブルフラワーとの相性も良く、おすすめ!子どもから大人まで楽しめるメニューです。Juliさんがエディブルフラワーを使うようになったのは、ケーキに使う苺が入手しにくい時期に、何か代用できるものはないかと模索したのがきっかけだったと言います。
「彩り鮮やかで喜びと心の癒しにもつながるエディブルフラワーは、ビタミンやミネラルなどの栄養もあります。ケーキをはじめとするスイーツはもちろん、ドリンク類にも応用できるため、商品作りに利用するだけでなく、たくさんの人に知っていただくために情報発信も始めました」(Juliさん)
「例えばエディブルフラワー入りの氷を作っておけば、いろいろなコールドドリンクにも利用できます。作り方は簡単。製氷皿の1/2の高さまで水を張り、そこに好きなエディブルフラワーを載せます。いったん冷凍庫に入れ凍らせ、今度はギリギリまで水を注ぎエディブルフラワーを閉じ込め再度冷凍庫で凍らせれば完成です。
氷作りには濃い色鮮やかなお花がおすすめですが、薄い色のお花を使う場合はミントなどのハーブ類(グリーン)と組み合わせてデザインすると引き立ちます。エディブルフラワーの保存にもなりますよ」(Juliさん)
エディブルフラワーをスイーツに取り入れるアイデアも教えていただきました。
バラの生ジャムを使ったローズパフェ
材料
作り方
*POINT*
先ほどご紹介したバラの生ジャムをアレンジしたバラのグラニテを使用。パフェの中には、他にもお好みでグラノーラやナッツを足しても食感が楽しめます。エディブルフラワーは決して特別なものではなく、利用するにあたってはレタスや水菜などの葉野菜をイメージし、同様の扱いをすることで気負いなく楽しめます。保存方法も葉野菜に似ているため、購入した分を1回で使いきれなかった場合は冷蔵庫へ。適度な湿度を与え密封し、乾燥させない状態で置けば、保存期間は5日~1週間が目安となります。
もし、それ以上の期間保存したい場合は、前述の『氷にして冷凍庫で保存する方法』がおすすめです。これならばしばらくの間、ドリンク類はもちろん、冷麦・素麺のお供などにも利用可能です。
エディブルフラワーは、生花以外にドライフラワーもあるため、半年から1年のスパンで利用する場合はドライフラワーを購入する、という方法もあります。
さて、最後にもう一度大切なこと。エディブルフラワーは、野菜同様に農家で栽培され流通しているものです。お花屋さんで売られているお花や、公園の花壇などで咲いているお花は観賞用に育てられているまったく異なるものなので、絶対に食べないでくださいね。
さあ、これからさらに注目度もアップしていくであろうエディブルフラワーをいち早く生活に取り入れ、一味違った食卓演出をお楽しみください!