ハロウィンやクリスマス、年末年始などの季節の行事から、気の置けない仲間が集まる女子会まで、日本でもホームパーティーをする文化が広がりつつあります。そんなホームパーティーを開く際に、料理のメニューと同じくらいこだわりたいのが食器選びです。
今回、食器の選び方についてお話を伺ったJamさんは、最初はそれほど食器にこだわりはなかったそうです。しかし、あることをきっかけに興味を持ち、今ではJamさんのおいしそうな料理はもちろん、センスのいい食器を使ったテーブルコーディネートがブログで人気になっています。
――Jamさんが食器に興味を持ったきっかけを教えていただけますか?
「今でこそ大好きな食器をブログで紹介している私ですが、以前は実家から送られてきた食器や、景品などのおまけでもらった食器を使っていたくらいで、あまり食器にこだわりはありませんでした。
そんな私が食器に興味を持ったのは、あるママ友のお宅で出会った愛媛の砥部(とべ)焼の器がきっかけでした。そのママ友はご実家が窯元をされていて、ご家族が砥部焼の作家さんなので、たくさんの砥部焼の器をお持ちだったんです。
砥部焼と言うと、白磁に薄い藍色で手書きの模様が施されているものが一般的だと思いますが、その時に出会ったのは、藍色の模様のないシンプルな砥部焼。やや厚手で柔らかい印象の器がお料理のよさを引き立てていて、『食器でお料理がこんなにおいしそうに見えるなんて!』と感動しました。感動のあまり、その後すぐに砥部焼の作品を購入させていただいたくらいです」(Jamさん)
砥部焼の食器
――その出会いをきっかけに、食器の選び方や使い方はどのように変わりましたか?
「砥部焼の器を買ってからは、『この食器、あの砥部焼と相性がよさそう!』と、徐々に食器を買い集めるようになりました。私が買ったのは、ぽってりとした優しいフォルムの白い砥部焼の器だったんですが、実際に使ってみると和食でも洋食でも盛り付けがしやすく、食材の色も引き立ててくれて、いつものお料理がワンランクアップしたように見えましたね。
素敵な器に盛り付けようと思うと、茶色くなりがちなお肉料理の時にはカラフルなお野菜を添えるなど、お料理の色合いに対する私の意識も徐々に変わっていきました。また砥部焼の器は、和食器だけでなく北欧食器とも相性がよくて、『いろんな器と合わせてみたい!』という私の器熱(うつわねつ)は上がる一方でした(笑)」(Jamさん)
砥部焼の器との出会いで、「食器が料理をよりおいしく見せてくれる」ということを知ったJamさん。それからは、食器のサイズや色を意識してコーディネートをするようになったそうです。
それでは、大きさも形も色もさまざまある食器の中から、どのように選んだらいいのでしょうか?ホームパーティーで使うことも想定し、実際にJamさんが食器を購入する時のポイントを伺ってみました。
――Jamさんが食器を選ぶ時のポイントを教えてください。
「私が新しい食器を選ぶ時に、基準としている3つのポイントがあります」(Jamさん)
ポイント1:「料理ありき」で食器を選ぶ
「私はあくまでも『食器=お料理を盛り付ける器』として考えているので、色が派手過ぎたり柄が奇抜過ぎたりする個性の強い食器は選びません。主役のお料理が映える、モノトーンや自然に近い色の食器、あとはデザインや柄が入っていても、あまり主張し過ぎない食器を選びますね。また『私のお料理のレパートリーに合う食器か?』『盛り付けが楽しくなる食器か?』などで選ぶのもポイントです」(Jamさん)
ポイント2:洋服のように「今ある食器」との組み合わせでパターンを考える
「欲しい食器に出会ったら、次に今食器棚にある食器との相性やコーディネートを思い浮かべてみます。そして頭の中で、『あの食器と相性がよさそう』というイメージが最低でも3、4パターン思い浮かんだら買うようにしています。食器は思っている以上に収納スペースを使うもの。むやみに衝動買いをしないためにも、このルールは私の中で特に大切にしています」(Jamさん)
ポイント3:「家族の人数分」の食器を買わなくてもOK!
「我が家は4人家族なので、普通に考えると新しい食器を買う場合は4つセットで購入してもいいのかもしれません。でも、私は同じ食器を買う時は2つセットで購入することがほとんどです。それは、食卓全体でのコーディネートを考えた時に、全部同じ食器で揃えると退屈に見えてしまうからです。
特にホームパーティーなどの場合は、違う柄の食器が混じっていた方が、食卓全体にリズム感のようなものが出て、楽しい雰囲気になります。違う柄の食器を使っても、色味や大きさを揃えれば自然と統一感が出せるので大丈夫!『家族の人数分、同じ食器を揃える』という概念を一度忘れてみるのもポイントです」(Jamさん)
色やデザインが気に入って購入したものの、結局うまく使いこなせずに食器棚の中に眠ったままの食器はありませんか?食器はあくまでも料理を盛り付ける器です。食器そのものだけで考えるのではなく、「自分の料理」や「自分が持っている食器」に合わせるというJamさんの考え方は、当たり前のようで意外と見落としているポイントかもしれません。
「百聞は一見にしかず」ということで、Jamさんがご自宅でホームパーティーを開いた時の食器の選び方や使い方を、和食、洋食、スイーツと、料理別にご紹介いただきました。
和食編:「食器だけでなく鍋も使う」という工夫
「煮物などを盛り付ける際には和食器を使うことが多いと思いますが、ホームパーティーのような人が集まるシーンなら、火にかけていたストウブ鍋をそのまま食卓に出してしまうのもオススメです。ほっこりした温かい雰囲気と抜群の存在感を放つストウブ鍋は、地味な印象の煮物でもあっという間に主役にしてしまいます。
そして写真では、煮物を取り分ける取り皿を、マリメッコの黒色の線画が美しいディーププレートにしています。色味が落ち着いたものであれば、意外とこういった食器でも和食にハマるんです。大きさがちょうどよく、深さがある点もいいですね」(Jamさん)
洋食編:カラフルでポップな料理を引き立てる「食器の色選び」
「洋食は和食に比べてカラフルなお料理が多いので、全体的にごちゃごちゃしないように気を付け、モノトーンを中心とした落ち着いた色の食器を選ぶのがポイントです。
写真では、彩り豊かなエビとパクチーのサラダを、そのカラフルさが際立つように白いサラダボウルに盛り付けています。また、3種類のディップソースを添えた野菜スティックも、野菜の色とソースの色が目立つように、食器はすべてモノトーンでまとめています。
トマトソースの煮込みペンネは、鮮やかな赤さが際立つように、お馴染みのストウブ鍋で(笑)。ペンネは伸びにくいですし、鍋に入れておけば味も染み込んで、さらにおいしくなりますよ。もう一つのストウブ鍋には、豚肉料理のポットローストを盛り付けています。
この時は親戚の子どもたちが集まるホームパーティーだったので、バーベキューのようなワクワク感を演出してみました。また、参加者の集合する時間も食べるタイミングもまちまちだったんですが、ストウブ鍋は、蓋をすればお料理が冷めにくくお肉の乾燥も防げるので、機能的にもホームパーティーにオススメです」(Jamさん)
スイーツ編:スイーツの特徴やイメージに合わせた「食器の素材選び」
「写真は、我が家の定番、簡単に作れちゃうチーズケーキ。こうした冷やして出すスイーツには、涼しげな印象を演出できるガラスの食器がオススメです。ガラスの食器の中でも表面に凹凸のあるデザインのものを選べば、チーズケーキのようなシンプルなスイーツも一気にかわいらしさがアップします。
また写真奥のエスプレッソグラスは、エスプレッソのクレマ(表面にできる細かい泡の層)を写真に撮りたくて購入したもの(笑)。普段のティータイムを格上げしてくれる優秀アイテムなので、エスプレッソマシーンがお宅にある方には、ぜひオススメしたいですね」(Jamさん)
「和食には和食器、洋食には洋食器」という概念に縛られない、Jamさんの思い切った食器の選び方が、他とはちょっと差がつくホームパーティーの雰囲気をつくっているのかもしれません。また、カラフルな料理ではモノトーンなどの落ち着いた色の食器を選ぶことや、食器の素材にもこだわることなどは、すぐに取り入れられるポイントなので覚えておきたいですね。
最後に、Jamさんが食器を選ぶにあたって大切にしていることや、食器選びに迷っている方へのアドバイスについて伺いました。
――Jamさんにとって、食器選びで一番大切なことは何でしょうか?
「お料理が大好きな私にとって、食器はがんばって作ったお料理をよりおいしそうに見せてくれる『相棒』のようなもの。ですから、食器を選ぶ上で一番大切にしているのは、『私の作るお料理が、おいしそうに見えるかどうか』ということですね」(Jamさん)
――アイテムを買い足さなくても、今ある食器でできる工夫はありますか?
「例えば、普段別々の食器に盛り付けているおかずやごはんを、大きめのお皿に小皿やココットを乗せて、ワンプレートで盛り付けると、カフェランチ風のおしゃれ感を演出できます。
あと便利なのが、ランチョンマットやペーパーナプキン。白いシンプルなお皿でも、ポップな柄のランチョンマットを敷いたり、シーズンカラーのペーパーナプキンを重ねたりするだけで、ホームパーティーのムードを華やかに演出してくれます」(Jamさん)
――これから食器を買い足すなら、どんなアイテムがオススメですか?
「木製の食器は、どんな食器にも合うので手軽に取り入れられますし、食卓を温かいイメージにしてくれるのでオススメですね。
あと、同じ木製のアイテムとしてオススメなのは、カッティングボードです。刃の跡が付けば付くほど、いい風合いとこなれ感が出ますし、カットしたバゲットや生ハム、チーズなどを乗せるだけで、おしゃれなバルで出てくるようなおつまみに見えます」(Jamさん)
――最後に、Jamさんが「食器選びの楽しさ」を感じるのは、どんな時ですか?
「お料理は『見た目が8割』と聞いたことがありますが、食器の選び方や使い方によって、お料理は本当においしそうに見せることができると思います。私は、お料理のレパートリーは決して多くないのですが、同じお料理でも食器の選び方一つで印象をガラリと変えることができ、あたかもたくさんのレパートリーがあるように見えるから面白いですね(笑)。
それに、洋食器に煮物を盛り付けるような意外な食器の使い方をした時に、家族やゲストが『あっ』と驚いてくれるのも、食器選びの楽しいところです。次はどんなお料理と食器で周りを驚かせようかなと、毎日ワクワクしています」(Jamさん)
Jamさんのブログには、バリエーション豊かな料理と素敵な食器が毎日のようにアップされていますが、Jamさんいわく「実はお料理のレパートリーも食器の数も決して多い方ではないんです」とのこと。食器との組み合わせで、料理の印象を大きく変えているんですね。
新しく食器を購入する際にも、自分の料理のレパートリーや今ある食器に合わせて買い足すなどのポイントを押さえれば、難易度もグッと下がりそうですね。ぜひ次回のホームパーティーでは、ご紹介したJamさんの食器の選び方や使い方を参考にしてみてください。
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