「フリージング離乳食」とは、時間があるときに下ごしらえをして、冷凍保存しておく離乳食のこと。赤ちゃんの食べる量はほんの少しですから、毎回一から離乳食を作るよりも、まとめて下ごしらえをして冷凍保存するほうが準備の効率が良く、ママも助かります。調理師やフードコーディネーターなどの資格を持ち、一男一女のママでもあるちょりママさんこと西山京子さんも、子どもたちが小さかったときは、フリージング離乳食に助けられたと言います。
「子どもたちが小さかった頃、私がいちばん大事にしたかったのは、子どもたちと向き合って、笑顔で過ごす時間でした。手作りの離乳食を食べさせたいけれど、時間は限られています。ですから、時間が空いたときに、野菜を何食分かゆでて小分けにし、冷凍しておくことにしたんです。少量ずつだと解凍も簡単ですし、味を付けずに冷凍することで、解凍後のアレンジ幅も広がります。実際に我が家では、下の子のためだけでなく、上の子や大人の食事にもフリージング食材を活用していました。仕事をしていても、そうでなくても、ママは忙しいですよね。フリージング離乳食を活用することで、子どもたちと触れ合う時間や余裕ができ、ますます子育てを楽しむことができますよ」(西山京子さん)
ポイント1:まずは子どもの発達段階をチェック
【ゴックン期】5~6ヵ月
まだ歯は生えておらず、口に入れたものを「ゴックン」と飲み込む、つまり、初めて「食べる」経験をさせる時期です。材料は繊維質の少ない野菜と水を使い、味は付けません。口の中に母乳・ミルク以外の味が入ってくることに慣れるための時期なので、液状にしましょう。製氷皿を使ってブロック氷と同じようにフリージングするのがコツです。
【モグモグ期】7~8カ月
歯が生えていないものの、舌やあごを上下に動かすようになります。母乳・ミルクと離乳食が半々くらいのイメージで食事を分けるといいでしょう。野菜ならみじん切りに、白身魚や卵白ならよく火を通してなめらかになるまですりつぶすなど、少しずつ食べさせる食材のバリエーションを増やしていきましょう。ただし、脂が多いものは、消化しにくいのでNGです。食べる量も少しずつ増えるので、製氷皿1片分より一回り大きい、お弁当に使うシリコンカップをフリージングに使うのがおすすめです。
【カミカミ期】9~11ヵ月
頬の内側や歯茎と舌で食べ物をつぶして食べられるようになります。この時期に大切なのは、一日に摂る食事のリズムを作ること。たくさん食べられない子どもでも、どれか一食を少なめにするなど調整をして、大人と同様に三食+おやつのリズムに慣れさせましょう。主食にやわらかいごはん、パン、短く切ったそうめんなどを取り入れ、食べるものはほぼ固形になっていきます。食べる量も増えてきますから、シリコンカップに入れたり、1食ずつラップで包んだりして冷凍します。
【パクパク期】1歳~1歳6ヵ月
舌は前後、左右、上下と自由に動かせるようになり、離乳食も完了期。フリージングも、大人用にアレンジするのと同じ、やわらかい固形物になります。メニューの幅も広がるので、1食分というよりは、トッピングに使ったり、料理にアレンジしたりしやすい量を目安にして、ラップに包んで冷凍するのがコツです。大きさや形も、赤ちゃんの好みや料理に合わせて変えていきましょう。
【月齢ごとのやわらかさの目安】
●ゴックン期……ポタージュくらいのとろみから始め、ヨーグルトくらいのかたさに。ゆで汁、または少量の牛乳でのばし、ハンドブレンダーでかき混ぜる。
●モグモグ期……舌と上あごでつぶせる、絹豆腐くらいのやわらかさ。
●カミカミ期……大人の指ではさんで軽くつぶせるやわらかさ。やわらかいバナナくらい。
●パクパク期……一口の量を噛み切れる、肉団子くらいの食感。
ポイント2:フリージングする食材の選び方
離乳食の時期から、いろいろな野菜を食べさせて、食に興味を持たせましょう。特に、ニンジンやほうれん草、かぼちゃ、トマトなどの緑黄色野菜は栄養価が高く、見ためも華やかになります。例えばほうれん草なら、やわらかい葉っぱを離乳食に、少しかたい茎は大人が食べるなど、部位によって食べ分けるのもポイントです。
また、最近はスーパーやコンビニでいろいろな種類の冷凍野菜が売っているので、フリージングの時間がとれないという方にはおすすめです。ただし、きのこやごぼうなど、食物繊維が多い食材は、赤ちゃんの消化器への負担が大きいため離乳食には向いていません。
ポイント3:便利アイテムを使いこなす
フリージング離乳食に欠かせないのは、凍らせるための容器です。ゴックン期の離乳食はほとんど液体なので、氷を作る製氷皿が便利。一度に流し入れ、1片ずつ取り出して使えるので簡単です。お弁当の仕切りに使うシリコンカップは少し食べる量が増えてきて、固形に近づいてくると便利なアイテムです。カップ自体がやわらかく取り出しやすいため、バットなどに並べ入れて一度にいくつか作っておくのがおすすめです。さらに離乳食が固形になり、ラップで包むようになると、冷凍庫の中でバラバラになってしまうことも。バリエーションも増える時期なので、中身を書いた保存袋にまとめておくといいですね。また、破片が離乳食に入るなど万が一のことを考えて、アルミカップやアルミホイルは避けたほうがいいでしょう。
レシピ1:ニンジンの昆布煮
ポイント
繊維質の少ない野菜全般で代用できます。より栄養が逃げにくい「蒸す」調理法もおすすめ。彩りがよく、大人の料理にも幅広く使えます。ゴックン期のときは、初めて舌に母乳・ミルク以外の味を感じる時期なので、できるだけシンプルな味にするために、昆布は使わずに作りましょう。
材料(作りやすい分量)
作り方
【月齢ごとの下ごしらえ】
※左からゴックン期、モグモグ期、カミカミ期、パクパク期
●ゴックン期……ゆでてからすりつぶす
●モグモグ期……みじん切り(0.3cm角程度)
●カミカミ期……角切り(0.5~0.8 cm角程度)
●パクパク期……角切り(1cm角程度)、いちょう切り、スティック状
【解凍後のアレンジ】
●ゴックン期
●モグモグ期
<アレンジレシピ>
ニンジンと白身魚のパン粥
食パン(40~80g)、白身魚(10~15g)、牛乳(大さじ1~2)を合わせて電子レンジでやわらかくなるまで加熱し、ニンジンの昆布煮(適量)をトッピングする。
●カミカミ期
<アレンジレシピ>
ニンジンのおかかうどん
やわらかくゆでたうどん(80~90g)に、ニンジンの昆布煮(30~40g)とかつお削り節、醤油(各少々)をかける。
●パクパク期
◆大人アレンジ
ニンジンのおかかオイル和え
ニンジンの昆布煮(100g)、かつお削り節(1パック)、醤油(小さじ1)、ごま油(小さじ1)をすべてあえる。お弁当のおかずにもぴったり。
レシピ2:ゆでほうれん草
ポイント
さまざまな葉野菜で代用することができ、コンビニで売られている冷凍ほうれん草を使ってもOKです。離乳食では湯に塩を加えず、通常と同様に根のほうから湯に入れてゆで始めましょう。ゴックン期は、葉のみを離乳食用に取り分けるとよいでしょう。
材料(作りやすい分量)
作り方
【月齢ごとの下ごしらえ】
※左からゴックン期、モグモグ期、カミカミ期、パクパク期
●ゴックン期……すりつぶす
●モグモグ期……みじん切り(0.3cm幅程度)
●カミカミ期……粗みじん切り(0.5~0.7cm幅程度)
●パクパク期……1cm幅程度
【解凍後のアレンジ】
●ゴックン期
<アレンジレシピ>
ほうれん草と豆腐のお粥
ゆでた豆腐(15~25g)と10倍粥(30~40g)を合わせ、ほうれん草(10~20g)をトッピングする。
◎10倍粥の作り方(1食分)
ごはん(7g)と水(35ml)を耐熱容器に入れ、ふんわりとラップをかけ、電子レンジ(600W)で1分30秒加熱。混ぜて再度ラップをかけ、10分ほど蒸らす。食べやすいようにすりつぶす。
●モグモグ期
●カミカミ期
●パクパク期
<アレンジレシピ>
ほうれん草のバター風味
適量のほうれん草に少々のバター加えて耐熱容器に入れ、電子レンジでやわらかくなるまで加熱し、和える。
◆大人アレンジ
白身魚とほうれん草のミルク煮
材料(2人分)
作り方
レシピ3:蒸しかぼちゃ
ポイント
繊維質が少ない野菜全般で代用できます。皮がかたくてむきにくいときは、電子レンジでやわらかくすると包丁が入りやすくなります。冷凍かぼちゃを使ってもOKです。
材料
作り方
【月齢ごとの下ごしらえ】
※左からゴックン期、モグモグ期、カミカミ期、パクパク期
●ゴックン期……水や牛乳を加えてなめらかなペースト状
●モグモグ期……つぶす
●カミカミ期……0.5~1cm角程度
●パクパク期……1cm角程度
【解凍後のアレンジ】
●ゴックン期
●モグモグ期
<アレンジレシピ>
かぼちゃとツナのうどん
ツナ(10~15g)は湯をかけて油抜きをし、やわらかくゆで、短めに切ったうどん(50~80g)にのせ、かぼちゃ(15~30g)をトッピングする。
●カミカミ期
<アレンジレシピ>
パンプキンチーズマッシュ
かぼちゃ(60g)をボウルに入れてつぶし、粉チーズ(1~2g)と混ぜ合わせ、丸めて食べやすい大きさに整える。
●パクパク期
◆大人アレンジ
鶏かぼちゃ粥
材料(2人分)
作り方
◎5倍粥の作り方(多めに作る場合)
鍋にごはん(160g)と水(400ml)を入れ、10~15分おく。中火にかけ、沸騰したら弱火にして、ときどき混ぜながら15~20分煮る。そのまま10分蒸らす。
「子どもがお腹を空かせているとき、必要なのは手の込んだ一品よりも、スピードです。冷凍庫にフリージング離乳食があれば、待たせることなくリクエストに応えることができ、子どももママもごきげんに。また、フリージング離乳食ならママがおうちにいない日も、パパやほかの家族に安心して任せられます。離乳食期は、ほんの1年ちょっとの短い期間なので、頑張りすぎず、家族みんなが笑顔でいられることが、いちばん大事なことですよね」(西山京子さん)
家事に仕事に、毎日てんてこ舞いのママたち。フリージング離乳食を活用して、手作りの味を手早く食べさせる習慣ができれば、少しでもゆとりある時間を持つことができます。家族みんなでテーブルを囲み、同じ材料をアレンジした食事を楽しむのはかけがえのない時間です。ぜひフリージング離乳食を活用してみてください。