受験勉強で忙しい生活を送っていると、日々の食事がおろそかになってしまうこともあるのではないでしょうか。特に試験本番が近付くと、「参考書を1ページでも多く読んでおきたい」と、勉強の時間を確保するために食事の時間を削ったり、食べるものも簡便化したりしがちでしょう。
しかし、受験勉強で忙しい時こそ、栄養のある食事をきちんととる必要があります。食事をとることと勉強の集中力は、深く関係しているからです。忙しくても欠食せず、しっかりと3度の食事をとることは、勉強のコンディションを整える上で非常に大切。このことは、受験生はもちろん、そのご家族の方も意識しておきましょう。
長時間勉強を続けてお腹が空いてくると、脳に酸素がいかず、だんだんと意識がぼーっとしてきたり、イライラの原因になったりもします。そんな時に適切な食事や軽食をとることで、ストレスが解消され、お腹も心も満たされて勉強の効率が上がるわけです。
今回は、疲れや眠気で思考力や集中力が鈍った時に、ぜひ食べていただきたいレシピをご紹介します。いずれも簡単に作れて、脳を目覚めさせ勉強の効率を上げる効果が期待できるレシピばかりです。
さばやサンマ、いわしなどの青魚には、脳や神経機能を活性化させる働きのある「ドコサヘキサエン酸(DHA)」や「エイコサペンタエン酸(EPA)」といった「オメガ3脂肪酸」が豊富に含まれています。また、必須アミノ酸の1つである「ヒスチジン」も多く含まれており、ヒスチジンには記憶力や集中力を高める作用があります。
栄養の点では積極的に食べたい青魚ですが、生の状態から調理するのは手間が掛かります。そこで、缶詰を使って時短料理を作ってみてはいかがでしょうか。魚の水煮や蒲焼きなどの缶詰は、骨まで柔らかく調理されているので、「カルシウム」の補給にももってこい。さまざまな栄養素を手軽にとることができます。
例えば、缶詰のサンマの蒲焼き。一口大に切って、だしと卵を溶いた液に入れ、電子レンジで加熱します。後は白飯の上に盛り付けるだけで、『サンマ蒲焼き卵とじ丼』の出来上がりです。ちなみに卵は、記憶力を向上させる作用のある「レシチン」を多く含んでいます。
サンマ蒲焼き卵とじ丼
材料(2人分)
作り方
また、さばの水煮缶は、汁を捨て、身をほぐしてマヨネーズと和え、輪切りにしたフランスパンの上にのせてカナッペ風にしたり、お好みのパンの間に挟んでサンドイッチにしたりして食べるのもおすすめです。
この他、果物の缶詰を使ったおやつとして、フルーツヨーグルトがおすすめです。柑橘系の果物に多く含まれる「ビタミンC」、乳製品に含まれる「カルシウム」には、気分をリフレッシュさせ、ストレスを軽減する働きがあります。風邪やインフルエンザ、ウイルス性の感染症などに対する免疫力を高める効果もありますので、特に冬場は、フルーツヨーグルトを積極的にとることをおすすめします。目の疲れを感じる時には、ポリフェノールの一種である「アントシアニン」を多く含む、ブルーベリーをとるといいでしょう。
生の果物は、皮をむいたり切ったりする手間があるので、時短のために缶詰や冷蔵パックされているものをストックしておくと便利です。熱処理加工された果物であっても、ビタミンなどの栄養素は残存しています。
特に試験直前の追い込みの時期は、夜遅くまで勉強に取り組むこともあるのではないでしょうか。夜中になるとお腹が空いてきますが、油たっぷりで高カロリーなものをとってしまうと胃に負担が掛かるため、おすすめできません。
受験生の夜食には、体と脳にやさしいメニューを選びましょう。そこでおすすめなのが、温かいスープや、あっさりとした麺類です。例えば、根菜や緑黄色野菜をたっぷり入れて煮込んだポトフ。体も温まりますし、根菜をよく噛むことで脳に刺激が伝わり、勉強の効率をアップさせることができます。
あっさりした和風だしに緑黄色野菜を細かく刻んで入れ、お好みでうどんや素麺などを加えて仕上げる煮込み麺も、夜食にぴったりのメニュー。緑黄色野菜に多く含まれる「ビタミンA(カロテン)」には、勉強で酷使した目の疲れをとる働きがあります。また免疫力を高める効果もあるため、風邪やインフルエンザ、ウイルス性の感染症などから体を守るのに欠かせない栄養素です。
野菜たっぷり煮込み素麺
材料(1人分)
作り方
勉強時の飲み物は、ホットミルク、ホット豆乳、ココアがおすすめです。牛乳、豆乳、ココアには、イライラを緩和させる「カルシウム」が多く含まれています。ココアにはさらに、免疫力を高める「ポリフェノール」も含まれていて、リラックス効果も期待できます。また、適度な糖分は血糖値を上げ、脳の働きを活性化させるので、砂糖などで甘みを加えれば、勉強の効率もアップするでしょう。
アミノ酸の1つである「チロシン」は、やる気を引き出す神経伝達物質である「ドーパミン」と深い関係があります。大豆製品、乳製品などに多く含まれており、疲れが溜まっている時や睡眠が足りない時にとると精神的なストレスが軽減され、脳が活性化し気持ちが前向きになる効果が期待できますので、ぜひお試しください。
受験当日の朝や試験の休憩時間にとるべき栄養素と、それらの栄養素を手軽にとれる軽食レシピをご紹介します。
まず、脳のエネルギー源である「ぶどう糖」が足りなくなると、集中力や記憶力が落ちてしまうため、きちんと炭水化物から「ぶどう糖」をとり、脳に供給することを心掛けましょう。 そのため、受験当日の朝や試験の休憩時間には、おにぎりを食べるのがおすすめです。
おにぎりには、玄米を少し混ぜるといいでしょう。玄米には、疲労回復効果のある「ビタミンB1」が豊富に含まれています。また、玄米のぷちぷちした歯触りで噛む回数も増えますので、脳の働きを活性化した状態で試験に臨みやすくなります。さらに、玄米には「ギャバ」と呼ばれるアミノ酸が豊富に含まれており、脳の血流を良くし、脳細胞を活性化させる効果が期待できます。
おにぎりの具材には、鮭フレークやしらす干しなどを使えば「カルシウム」の補給もできます。また、『肉味噌おにぎり』もおすすめ。豚ひき肉をそぼろ状に炒め、味噌と砂糖、醤油などで味付けをして、ご飯に混ぜておにぎりにします。そこに、しそやみょうがなど、その季節に応じた香味野菜をプラスすることで「カルシウム」もアップし、香りも出て食欲もそそられます。
豚肉には、疲労回復効果が得られる「ビタミンB1」が多く含まれています。さらに、しそ、みょうが、ニンニク、長ねぎなどには、「ビタミンB1」の吸収を促進して疲労回復効果を持続させる「アリシン」という香気成分が含まれており、一緒に食べることで一層の効果が期待できます。
香味野菜&肉味噌おにぎり
材料(6個分)
作り方
おにぎりと合わせて、味噌汁もおすすめです。豆腐や油揚げ、厚揚げといった大豆製品には、記憶力を向上させる働きのある「レシチン」が多く含まれていますので、味噌汁の具に選ぶといいでしょう。味噌汁は、体を温めてリラックスした状態で試験に臨むためにもうってつけです。
受験当日は特に、緊張感や疲労感により食欲がなくなってしまいがちですが、そんな時こそ、無理のない範囲で栄養のある食事をとって、試験に臨みましょう。
ごはんなどの炭水化物は、アミノ酸の一つである「トリプトファン」を多く含み、脳に放出されると「セロトニン」という物質になります。「セロトニン」には、心を落ち着かせて集中力を高める効果がありますので、ごはんを少しだけでも食べるようにすると、コンディションが整いやすくなるでしょう。
また、生ものや辛いもの、あまり食べ慣れていないものは、コンディションを崩してしまう場合がありますので、受験当日には控えるようにしましょう。今回ご紹介したレシピも参考にして、受験の時こそ、健康第一を意識してくださいね。
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