「素敵!と思って買った服ばかりのはずなのに、どういうわけか着たい服がない!」……はちきれそうなほどギュウギュウに詰まったクローゼットを見て、愕然とすることはありませんか?人気イラストレーター・アーティストの松尾たいこさんも、以前はそんな 「クローゼットぱんぱん病」 の一人でした。ファッションが大好きな松尾さんにとって、ショッピングは「最大の娯楽にして最高のストレス解消法」であり、コンビニでチョコを買うような感覚(!)で、週2、3のペースで服を買いまくっていたそうです。
「ただ、買い物で得られる高揚感はほんの一瞬のこと。服を買うのが『娯楽』や『ストレス発散』になっている限り、その気分の高揚はあっという間に『後悔』へと変わってしまうんですよね。当然ながら、クローゼットにはポリシーなく買い続けた服が、ギュウギュウに詰め込まれていました……」(松尾たいこさん)
クローゼットがぱんぱんだと、服は取り出しにくいし、お手入れはおろそかになるし、持っている服の存在を忘れて似たような服を買ってしまうし……。「このままじゃいけない!」と一念発起し、「タンスの肥やし」になっていた服を大量に処分したそうです。しかし、どんなに整理しても、それ以上に新しい服を買ってしまうというイタチごっこ状態。「ショッピングの仕方を根本的に変えないと無理だなぁ」と感じていた時に出会ったのが、一定期間服を買い控える「ファッション断食」でした。
「編集者をやっている友人が、Facebookで『1年間服を買わないチャレンジが、あと3カ月で終わる』と投稿していて。興味を惹かれたのですが、1年間はいくら何でもハードルが高すぎる……。友人にそう伝えると、『100日間でもいいからやってみて。それだけでも世界が変わるから』と言ってくれて。その言葉に背中を押されて、『ファッション断食』へのチャレンジを決意したんです」(松尾たいこさん)
ご友人の言葉通り、「100日間の『ファッション断食』で、人生が変わった!」と言う松尾さん。早速、その効果を詳しく教えていただきましょう。
「ファッション断食」を続けていくうちに、松尾さんの中でじわじわと変化が……。ご自分でも驚くような変化もあったそうですが、一体「ファッション断食」には、どんな効果があるのでしょうか?
効果1:本当に似合うスタイルが見つかる
「服を買うという欲望を強制的にストップし、自分のクローゼットと真剣に向き合ううちに、自分が好きなテイストや本当に着たい服がはっきりします。自分のスタイルを発見でき、自分をどう見せたいのかという心の声に気付くことができますよ」
撮影/難波雄史
効果2:服を大事に扱うようになる
「服を買えないということは、今ある服でコーディネートをするしかないということ。セーターの毛玉は丁寧に取る、シミができたら漂白するなど、自然と服に手間ひまをかけるようになります」
木製の硬いブラシを求めて購入した毛玉取りブラシ。見た目もシンプルでお気に入り。
効果3:お金が貯まり、「自分磨き」に投資できるようになる
「例えプチプラブランドが中心だとしても、毎月服を買っていたらかなりの出費になってしまいます。一定期間服を買わなければ、自然とお金が貯まりますし、絵画や映画を観たり英会話を学んだりと、『自分磨き』にもお金を回せるようになりますよ」
効果4:クローゼットの中に、本当に好きな服しかなくなる
「好きなテイストがはっきりし、ファッションや着こなし方に自分なりのこだわりが出てくると、深い思い入れもなく買っていた服や着心地の悪い服が、クローゼットからなくなっていきます。結果、自然にスッキリとした、自分が満足できるクローゼットに変化していきますよ」
「ファッション断食」後のクローゼット。
撮影/難波雄史
効果5:日用品にもこだわりが生まれ、生活の質が上がる
「『ファッション断食』を続けるうちに、いつも好きなものを着て過ごすことの楽しさや、心地いいものを着て過ごすことの快適さを知り、パジャマなどにもこだわるように。直接肌に触れるタオルやスリッパなども上質なものに変えたくなるなど、服以外の生活用品にも目を向けるようになりました。生活全般の質が上がり、日々の暮らしが丁寧になるという変化も訪れると思います」
可愛いイラストに惹かれて購入したビニールスリッパ。型崩れせず、汚れもサッと拭けて◎
「ファッション断食」には、基本的な3つのルールがあります。ルールは、全て厳守しなければならないわけではなく、ライフスタイルや仕事などに応じて、引き算をしてもOKです。
ルール1:ファッション誌を買わない&読まない
ファッション誌を買わない、読まないようにしましょう。ファッションに関する情報を断つことで、流行のファッションアイテムや色に踊らされなくなり、自分の好みや本当に着たい服がはっきりとしてくるそう。
ルール2:服を買わないこと
単純に、服を買わないこと。見ればやっぱり欲しくなるので、なるべくショップには近寄らないのが賢明です。
ルール3:コーディネートを毎日記録すること
携帯電話で、鏡に映った姿を撮影する程度でOKです。記録したコーディネートを見返すことで、客観的に自分を分析することができ、意外な発見もあり楽しいですよ。
また上記のルールに加えて、松尾さんは自分なりの「逃げ道ルール」をつくったそうです。
「ダイエットでも、食事制限を厳しくするなどストイックにやろうとすると、続かなくて失敗するじゃないですか。そうならないために、自分なりの『逃げ道ルール』をつくって、ゆるくスタートすることをおすすめします。
私の場合、ショッピングが趣味でもあったので、靴下やスカーフなどの小物は買ってもいいことにして、また、ヨレヨレになると悲しい気持ちになる下着類や、トークショーなど人前に出る時の衣装もOK、というルールにしました」(松尾たいこさん)
手持ちのアイテムを生かすためにも、ファッション小物は購入OK!
撮影/難波雄史
「『逃げ道ルール』では、生活スタイルに合わせて、自分の一番好きなもの、または絶対に必要なものをOKにすると、続けやすくなりますよ」と松尾さん。そして「ファッション断食」を始めるタイミングは、「思い立ったが吉日」だそう!
「始め時を少し先に設定すると、結局やらずに終わってしまう気が……。『ファッション断食』のいいところは、決意さえあれば準備はいらないし、お金もかからないこと。『いつか』と考えるより、気持ちが高まった時が始めるタイミングなのかなと思います」(松尾たいこさん)
100日間の「ファッション断食」を終え、その期間を1年間に延長した松尾さん。そして1年間におよぶ「ファッション断食」へのチャレンジも、無事に終えることができました。1年間、服を買わない生活を送り工夫を続けたことで、ファッションのセンスは磨かれ、その経験値はぐんと上がったと言います。さらに、何かにチャレンジすることの楽しさにも目覚めたそうで、今は次なる目標である「英会話」と「海外一人旅」に向けて動いているのだとか。
「ファッション断食」の一番のメリットは、クローゼットと真剣に向き合ううちに、本当に好きなスタイルを発見できること。自分の中の基準が明確になるので、クローゼットには不要な服が入ることがなく、いつでもスッキリ。自分の好きな服ばかりのクローゼットになれば、日々の生活がより充実したものになるはずです。あなたも思い切って、「ファッション断食」にチャレンジしてみてはいかがですか?
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