人馴れしているだろうと思われる犬であっても、やはり犬自身の性格や、人の接し方、その時の状況などによって、犬が嫌がったり、ストレスを感じたりすることもあります。犬カフェなどで初めての犬と接する時には、犬を見つめ過ぎないように、自分の体の横側を見せながらゆっくり近づき(これが、犬に敵意がないことを示すことになります)、犬の横にしゃがんで手を軽く握り、その手を犬に嗅がせましょう。犬が手の匂いを嗅いできて、落ち着いていそうなら、手の甲で顎の下や首の横、胸あたりを撫で、慣れてきたなら、てのひらで撫でるようにするのがいいでしょう。
逆に、以下に挙げるようなことは犬にとってストレスになり得るので、しないように気を付けましょう。
正面から犬の目をじっと見つめる。
自分の愛犬であれば、お互いの目を合わせてアイコンタクトすることは、しつけをする上で重要です。しかし、初めてふれあう犬の場合は、犬が不安を感じたり、攻撃的と受け取ったりすることがあります。
いきなり犬の頭を撫でようとする。
初対面でいきなり頭を触られるのは、人でも嫌に感じますよね?犬にとっても頭部は敏感な器官。怖いと感じて反射的に逃げようとしたり、最悪の場合、咬んだりすることもあり得ます。
犬に覆いかぶさるように接する。
特に小型犬にとっては、人は大きな生き物。怖さを感じることもあるでしょう。
いきなり抱っこする。
犬との関係がしっかりできている、もしくは十分に人馴れしている犬なら別ですが、特に初対面の人の場合、犬は抱きしめられることがあまり好きではないようです。
しつこく接する。
こちらも人と同じように、犬もしつこくされるのは嫌いです。
犬は、嬉しい時や怖い時、寂しい時など、どうやってその気持ちを表現しているのでしょう?その答えは、人と同じく、「声や体全体で気持ちを表している」です。
表情
人で言うところの眉毛や目の動き、口の形など。不安や怖さがあると、犬の口端は後方に引かれ気味になります。
耳の向き
楽しい、興味がある、また不審なものを発見したなど、何らかの興奮状態にあると、犬の耳はピンと立って前方へ。逆に、自信がない、不安、怖い、相手のほうが強そうなどと感じると、犬の耳は後方へ倒れていきます。
声
要求吠え「ワン、ワン」、警戒「ワワワワン、ワン」、寂しい・落胆「クゥ~ン」など、犬の声にもいろいろな意味が。
しっぽの高さや振り方
嬉しい、相手を信頼している、また警戒、威嚇や攻撃の時など、犬のしっぽの位置は高くなり、不安や怖さを感じると、逆にしっぽの位置は下がります(リラックス時も、しっぽの位置は下がります)。嬉しいと、しっぽを振るスピードが速くなり振り幅も広いのに対し、不安や警戒などが入り交じると振り幅は狭く、振るスピードもゆっくりめに。つまり、しっぽは嬉しい時にのみ振るのではなく、何らかの興奮や緊張があった時に振るのです。
体の姿勢
不安や怖さが強まるにつれ、犬の体の重心は後方へ。逆に、自信があるなど積極的な状態だと、犬の体の重心は前方へ移動します。また、自分や相手を落ち着かせ、敵意がないことを示すために伏せのポーズをとったり、リラックスしている、遊びに誘う、攻撃を避けるためなどの意味で、仰向けにお腹を出したりすることもあります。
体の緊張度
不安や緊張、警戒、怒りなどが高まるにつれ、犬の体は固まっていきます。
(場合によっては)被毛の状態
怒りや攻撃度が増してくると、犬の背筋の被毛が逆立ちます。
犬の仕草の中で、犬が不安や緊張を感じた時に出す「ストレスサイン」と呼ばれるものがあります。たとえば、以下のような仕草などです。
これらは、日常的によく見られる犬の仕草です。ただし、注意したいのは、これらの仕草が見られたからといって、それだけで「犬にストレスがかかっているんだ……」とは判断しないこと。本当に眠くてあくびをしていることもありますし、あくまでも周囲の状況を考えて判断することが大切です。
たとえば、犬を抱っこした途端、あくびを繰り返し、頻繁に鼻先をなめて、耳も後方に倒れているとなると、抱っこされたことが嫌で我慢をしているのかもしれません。そのような様子が見られた時には、犬を静かに下ろして、様子を見るのがいいでしょう。
また、これらの仕草の中には、犬自身や相手を落ち着かせるという意味合いを含むものもあります。犬が頻繁にあくびをしているなら、自分もあくびをしてみせると、犬が少し落ち着くこともあるかもしれませんので、試してみてください。
さて、ひとしきり犬の様子を見ながら接したところで、「犬が自分を受け入れてくれたかも」と思える仕草が見られたら嬉しいですよね。以下のような仕草などが、それにあたります。
犬カフェなどで初対面の犬とふれあう際に、仲良くなれたかの参考にしてみてください。ただし前述の通り、犬のある仕草や行動が、特定の感情のみを表しているとは限りません。人の感情が複雑なように、犬も実に繊細な感情を持ちあわせているのです。だからこそ、犬ともっとふれあって、もっと知ってみてください。
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