「私は、大学で様々な動物の『心』の働きについて研究しています。犬については、特別な訓練を受けた犬ではなく、実際に飼われているペット犬を対象として研究しています。
犬に『心』があるのか、と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、犬にも、もちろん『心』はあります。ここでいう『心』とは、『知・情・意』のことです。
『知』とは知性のこと。何かを学ぶことができれば、それは知性を持つことになります。そして、『情』とは感情のこと。感情のない犬を想像できますか?嬉しい時には喜ぶでしょうし、侵入者が来て恐怖を感じたら、吠えたり、うなったりすることもありますよね。それは感情によって引き起こされる行動です。そして、『意』とは意思のこと。たとえば、動物病院の前で嫌がって動かずにいる犬を見た時、その犬に意思がないと思う人はいないはずです。
犬にも、そうした『心』があることを理解していないと、知らないうちに犬の心を傷つける可能性があるんですね。そうなると、しつけ以前の問題。犬との良好な関係づくりはできません」(藤田教授)
「犬には『心』があるわけですから、当然、『喜怒哀楽』もあります。『知・情・意』の『情』の部分ですね。飼い主を亡くした犬からは『哀しい』という感情を読みとることができますし、お散歩に出かける時には犬が『喜んでいる』ようにも見えます。ただし、本当に哀しんでいるのか、喜んでいるのかを、科学的に実証するのは難しいです。
犬の感情は、行動と必ずしも一致しません。たとえば、初めて調査室に来た犬の中には、緊張で固まってしまって飼い主さんの足元から離れない犬がいます。一方で、同じく緊張しているにも関わらず、部屋の中をクンクンとしつこいくらいに嗅いで回る犬もいるのです。また犬の行動は、犬ごとの性格の違いだけではなく、その時の状況によっても違ってきますね。
つまり行動などから、完璧に犬の『心』を読むのは難しいのです。犬の感情から起こる行動のすべてをコントロールすることは不可能ですし、その必要もないと考えましょう」(藤田教授)
「ただし、飼い主を困らせる『問題行動』は話が別です。たとえば『噛みつく』という行動。怖がって噛みつく場合もあれば、怒って噛みつく場合もあり、同じ『噛みつく』という行動ではありますが、その理由が異なります。
そのため、飼い主は叱る前に、その『問題行動』が、愛犬のどのような感情に基づいて起こったものかを見極めて、その原因を取り除いてあげる必要があります。そして、原因を取り除いた結果、愛犬が『問題行動』以外の行動をしたら、必ず褒めてあげてください。
また、原因を取り除く際は、自分を含めた家族全員が、愛犬に同じ対応をするということが大切です。たとえば、愛犬が、インターフォンが鳴るたびに驚いて吠えてしまう場合、ごく小さな音から聞かせ始めて、徐々に大きい音を聞かせていき、吠えないように慣らしていく対処法があります。その際、『どんなに小さな音でも、吠えなかったら餌をあげて褒める』と、家族の中で統一したルールを決めてから訓練をしましょう。人によって対応が違うと、犬が混乱してしまい、『問題行動』がなかなか解決しません。
他にも、ゴミ箱に触れてほしくなければ、犬が触れられる場所にゴミ箱は置かないとか、入ってもらいたくないエリアには、入れないように仕切りを設けるとか、そもそも、愛犬が不適切な行動をしないよう、飼い主が先回りして環境を整えることも大事だと思います」(藤田教授)
「愛犬との良い関係づくりのために一番大切なのは、『人間と犬は主従関係にある』という発想を捨てることですね。犬は、自分がどうふるまえば『幸せ』になれるのかを考えています。犬が服従関係にあるように見えるのは、『この飼い主には服従しておいたほうが利益だ(服従しないと不利益になる)』と思っているからに過ぎないんです。
逆に言えば、やり方によっては、犬との間に『友情関係』も『思いやり関係』も築けるはずということです。これを読んでいる方には、ぜひそうした関係づくりを目指して欲しいですね。ただし、ベタベタしすぎると、飼い主が不在の時にストレスになりますから、愛犬とは適度に心の距離を保つことも大事ですよ。
人間同士がうまくやっていけるのは、お互いに『思いやり』を持って接しているからです。それは、人間と犬にも言えること。相手が考えていることや気持ちを理解して、相手が喜ぶ行動をしてあげれば、必ず良好な関係が築けるはずです」(藤田教授)
最後に、愛犬と良好な関係を築くための心得をおさらいしてみましょう。
いかがでしたか?愛犬との絆を深めるには、飼い主も考え、努力することが必要です。あなたもこの機会に、愛犬とより良い関係を築くための方法を、もっと学んでみませんか?
愛犬飼育スペシャリスト講座へのリンク
いぬの描き方講座へのリンク