仕事で疲れて帰っても、ごはんを食べて、お風呂に入り、手足を伸ばして眠ると、翌日も元気に働けますよね。部屋って、ただモノを置いておく場所ではなくて、私たちのエネルギーを再生産してくれる大切な場所なんです。その部屋が、ゴチャゴチャ散らかっていたり、なんだか居心地が悪かったりしたら、働くパワーも湧いてこないでしょう。
ここ何年かの流行に、「何にもない部屋=ミニマリズム」があります。布団一組にお皿一枚とカップが一個だけ、テーブル代わりにスーツケース、といった部屋は、とにかく片付けも掃除もラク!旅人みたいで憧れる方も多いでしょう。ですが、これは誰にでもおすすめできる生活スタイルではありません。
「モノ」「時間」「お金」はつねに三本柱なので、生活の中でどれかが欠けると、他のどれかで補うことになります。たとえば、洗濯機を持たなければ部屋はスッキリ広々しますが、洗濯を「手洗い(時間)」や「クリーニング(お金)」で代替しなければなりません。働きながらモノを持たないって、けっこうタイヘンですよね。やっぱり、ある程度のモノはあった方が、快適に暮らせそうです。
お休みの日、何にもしないで部屋でダラダラしていただけなのに、かえって疲れてしまった……という経験はありませんか?
実は、人間の脳はボーッとしているだけでも、脳の一部は活発に働き、脳の消費エネルギーの6~8割を使っているのだそうです。これは「デフォルト・モード・ネットワーク」と呼ばれる脳回路によるもので、自動車でいえばアイドリング状態にあることを表しています(※)。
禅寺などで座禅体験をする際、「視線はここに」「背筋を伸ばして」「呼吸はこのように」など、体の使い方に対して、驚くほど細かな指示を受けます。それは、「できるだけものを考えさせないため」。私たちの脳は、どんなにボーっとしているように見えても、常に何かを考えてしまうようにできています。禅の指導者は、姿勢や呼吸に注意を集中させることで、余計なことを考えないように導いてくれているのです。
余計なモノがない禅寺でさえ、脳のアイドリングを止めるのは難しいのですから、部屋がゴチャゴチャと散らかっていたら、何もしていなくても脳が疲れるのは、当然といえば当然かもしれません。
※参考:久賀谷亮(2016年)『世界のエリートがやっている最高の休息法』ダイヤモンド社
何もない部屋で暮らすのは難しいけれど、ゴチャゴチャした部屋では脳が休まらない。それではどうしたら、必要なモノを持ちながら、脳が休まる居心地のいい部屋にできるでしょうか。ここで、あなたのお気に入りの、素敵なブティックやカフェを思い浮かべてください。
そこにもたくさんのモノがあるでしょう。しかし、インテリアには統一感があって、その店にふさわしくないモノは置かれていません。使われている色は少なく、外に出ているべきでないモノはバックヤードに保管され、動かしたモノは必ず元の位置に戻されます。つまり、情報量が少ないのです。
私たちの部屋も、モノではなく情報量を減らすことで、より脳が疲れない、居心地のいい場所にすることができます。
居心地のいい部屋をつくる4つのポイント
要は「消去法」です。「もらったから何となく置いてあるけど、別に好きじゃないな」というモノを、一つひとつ消していくだけで、好きなモノ、毎日便利に使っているモノだけが残ります。
高価でおしゃれなインテリアは、頑張っていずれ手に入れるとして、最初は、自分に合わないモノを排除していきましょう。そして、高価な椅子が買えないなら素敵なクッションを置き、欲しい棚が買えないなら買える日まで無地の段ボール箱でしのぐなどしましょう。
モノがあること自体はいいんです。しかし、どうせ持つなら、自分の好きな色やデザインに絞り込み、好きでないモノは家に入れないようにしましょう。
19世紀イギリスの工業デザイナー、ウィリアム・モリスは次のように言っています。
「役に立たないもの、美しいと思わないものを、家に置いてはならない」
この言葉を守るだけで、あなたの部屋は居心地のいい、心休まる場所になるはずです。
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