接客業や営業など人と接する機会の多い職種をはじめ、会社の上司や同僚から「いい印象」を持たれることは、より良い人間関係を築くのにとても役立ちます。しかし、普通にしているだけではなかなか「いい印象」にまでは到達できないもの。人の心に残るようにするには、一体どうすればいいのでしょうか。
そこで今回は、効果的な立ち居振る舞いやコミュニケーションのコツについて、ビジネスマナーのプロフェッショナルである松澤萬紀さんに、これだけは外せないという3つのポイントを教えていただきました。
「『笑顔・あいさつ・返事』この3つができている人は強いです」とハッキリおっしゃった松澤さん。意外にもシンプルな答えに驚いたかもしれませんが、詳しくお話を聞くと意外とできていないことに気づきます。
「人の記憶に残る過程は、実は二通りあるんです。一つめは『ものすごく感じがいい人』。もう一つは『ものすごく感じが悪い人』。良くも悪くも『ものすごく』というのが共通していて、普通にしているだけでは人の記憶には残らないんですよ」(松澤さん)
そして「笑顔・あいさつ・返事」の基本ができない人は、すぐさま「ものすごく感じが悪い人」という印象を与えてしまうのです。さらにたとえできていたとしても、気持ちを込めることが重要です。みなさんは日々の「笑顔・あいさつ・返事」を振り返ってみていかがでしょうか。
ここからは、具体例を上げて解説していただきます。
「笑顔には3つの種類があるってご存知ですか。まず1つ目は、好きな人に会った時に出るような、自然な笑顔。2つ目は、ビジネス上の心の伴っていない作り笑顔。3つ目は相手をリラックスさせたいという思いから生み出す笑顔。この3つ目ができるようになるといいと思います。
これは私がCA時代に経験したことですが、どんなに忙しくても、どんなに機体が揺れて不安でも、『CAは絶対に笑顔でいないといけない』と言われて常に心がけてきました。それは、お客様に安心していただくため。私達の表情が強ばっていたらお客様が話しかけづらいし、不安に感じてしまうからです。
日々忙しく仕事をしていたら、笑顔にならないのが自然ですよね。目の前に自分の好きな美味しいケーキがあるわけじゃないし(笑)。だからこそ意識していつも口角を上げる習慣をつけると、相手に対して好印象を残せると思います」(松澤さん)
「感じのいいあいさつにするためには、3つのポイントがあります。
1:あいさつに+αをつけること。
「中でも効果的なのはお相手の名前です。名前は相手の承認欲求を満たし、聞いて一番嬉しく感じる音だと言われています。『●●さん、おはようございます』と言われると、なんだか特別感がありませんか。
他にも、お店の接客で『いらっしゃいませ、こんにちは』とあいさつ+αをつけるようにしたら、売上が伸びたという例もあります。逆に、接客業であいさつがないのはもってのほか。お店で『いらっしゃいませ』の一言がない場合、とても感じ悪く思いませんか。某大型ショッピングモールでも、お客さまからのクレームのナンバーワンはあいさつがないことだそうです。
ビジネスの場合には『お疲れ様です、今日も暑いですね』と一言加えるだけで、事務的な印象がなくなり、感じよく聞こえますよ」(松澤さん)
2:「ながら」あいさつはしない
「パソコンを見ながら、後ろを向いたまま、というのはやはりよくありません。例え1秒でもいいから手を止めて相手を見ながらあいさつすると、ぐっと丁寧な印象になりますよね。人に丁寧に扱われて嫌な思いをする人はいませんし、とてもうれしい気持ちになります」(松澤さん)
3:第二の表情を意識する
「第一の表情は顔ですが、第二の表情と呼ばれるものがあります。それは胴体、特にデコルテあたりです。首だけで振り向くよりも胴体ごと、特にデコルテを相手の方に向けることで、『あなたに心を開いていますよ』という気持ちがより伝わります」(松澤さん)
「これもできているようでいて、意外とできていないんです。例えばタクシーに乗った時に、『目的地まで近いですけど、いいですか。』とお聞きしたら、運転手さんが無言で発車したことがあります。返事がないことで運転手さんは怒っているのかなという印象を受けました。私自身、『ハイ!』と笑顔で明るく返事をしただけでお客さまに喜んでいただけた経験もあります。
人間関係において、人からいかにかわいがってもらうか、自分の味方についてくれる人をどれだけ増やすかということって、すごく大事だと思っています。きちんと返事をするってシンプルなことですが、『感じの良さ』を演出できる有効的な方法なんですよ。逆に、返事をしないのは『とても感じが悪い』印象を残してしまいます。ぜひ意識して実践してみて下さいね」(松澤さん)
上の3つの他に、松澤さんが日々心がけていることを聞いてみました。
「想像力や先読み力がないと、相手の立場に立って考えるってなかなかできないもの。私は、常に想像力を働かせ、先を考えて行動するように心がけています。例えば『このお酒、きっとお好きだろうけど、持って帰るのには重いだろうな。送ってあげたほうがいいかな』と、相手に良かれと思ってすることも本当に良いかどうか一度考えます。また、不測の事態に備えて十分な準備は欠かせません。
これは心理学を勉強したときに先生がおっしゃっていたのですが、人間は日々の行動のほとんどを無意識にしていて、意識して行っているのは全体の3~10%しかないんですって。だからこそ、意識しないと表情も態度も使う言葉も変わってこないんです。逆に、『意識を変えることを意識する』と、人生も変わると思います。時には、クレームを言われたり怒られたりして、嫌な気持ちになることもあるでしょう。でも正しいことをしていれば、必ず誰かが見ていてくれます。その逆もしかりで、自分の軸がブレているとやはり見透かされてしまいます。自分に一貫性を持って、相手の心にいい印象を残せる人になれたら素敵ですね」(松澤さん)
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