「ゲームに熱中していたら、知らないうちに3時間経っていた」「好きな作家の本を読みふけって、いつのまにか朝になっていた」…そんな経験、誰にでもありますよね。このように時間を忘れて好きな事に集中している時の脳というのは、どんな状態なのでしょうか?
「脳が集中している状態というのは、右脳と左脳が効率よく働き、周囲で起きていることをシャットアウトしている状態です」と言うのは、脳神経外科医で、「菅原脳神経外科クリニック」院長の菅原道仁さん。
「このように時間の感覚がなくなるほど、なにかに没頭している状態を『フロー状態』や『ゾーンに入る』と言います」
自分の好きな事なら、誰でもすぐにフロー状態になれるのですが、勉強ではなかなか難しいですよね。好きなこと以外でもフロー状態を作り出せれば、高い集中力が持続し、勉強している内容もスイスイ身に付くはず。
そのためのコツをいくつか教えていただきました。
そもそも勉強にとりかかるのに時間がかかるという人には、菅原さんは「嫌々でもとりあえず始めてみる」ことを勧めています。
「やる気が作られるのは、脳の側坐核(そくざかく)と呼ばれる部分です。脳の真ん中あたりにある小さな器官で、この側坐核が刺激を受けることによってやる気が出ます。これは作業興奮と言われるもので、とにかく何かをやり始めることで、脳の側坐核を刺激することができるのです」(菅原さん)
新しく問題集を解くのが億劫に感じられる時でも、とりあえず問題集を開いて机に置いてみる。前回やった部分をぼんやりと眺めたり、ペンを手に持って前回書いた答えをなぞったりしてみる。そうすることで脳の側坐核が刺激され、いつの間にか問題集を解き始めてしまうのだとか。
勉強のやる気が起きない、集中できないというのは、その先にある「報酬」がイメージできてないからなのかもしれません。
「脳には『自己報酬神経群』という部位があります。その名のとおり、『自分へのごほうび』をモチベーションに働く部位であり、この部位が活発に働かないと脳は活性化しません」(菅原さん)
「自己報酬神経群」を活性化させるためには、ごほうびを得た後の自分の生活を具体的にイメージしたほうがいいそう。
「『女性にモテたい』でも『お金が欲しい』でも、ごほうびは何でもいいんです。具体的に女性にモテた時の気分や、上がった給料で好きなものを買った時の気分を想像し、嬉しい気分になることが大切です」(菅原さん)
集中するための環境づくりでいえば、「整理整頓」「音を遮断」の2つが大切だと菅原さんは言います。
「雑然とした空間では、集中力の何割かが、その空間を認識するために取られてしまいます。よって勉強机の周りは整理整頓が必須。それが無理なら、図書館や自習室を上手に利用しましょう。人間は環境に順応しますから、その意味でも勉強している人がまわりにたくさんいる図書館は有効です」(菅原さん)
音に関しては、好きな音楽でも集中力の何割かはその音に取られてしまうので、どうしても音がほしい場合は、波の音など自然の音をかすかな音量で流すといいようです。
ついついネットやゲームで気が付いたら数時間…そんな人はとにかくパソコンやスマホの電源を切りましょう。
「人間は新しい情報を常にチェックしたくなる習性があります。太古の昔から、周囲の状況をチェックして、危険を察知しながら生き延びてきたからです」(菅原さん)
リアルタイムで返事しなければならないメールが来る可能性がないのなら、「メールチェックは1日1回朝だけ」と決めるなど、自分で決まり事を作ってしまいましょう。
いかがですか? ちょっとしたコツや心がけで、やる気や集中力が格段にアップするのですね。
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