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2020.07.09

任侠言葉であいさつ!?日本語教師が出会った日本語学校での驚きエピソード

任侠言葉であいさつ!?日本語教師が出会った日本語学校での驚きエピソード

各国の学生が集まる日本語学校。そこで飛び交う外国人ならではの日本語や鋭い質問の数々は、私たちが知らない日本語の奥深さを感じさせてくれます。ベストセラーとなった『日本人の知らない日本語』の著者・海野凪子さんが実際に経験したエピソードとは......。

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意外と知られていない!?「日本語教師」ってどんな仕事?

日本語を母語としない人たちに日本語を教える日本語教師。そんな日本語教師と日本語学校の外国人学生たちとのやり取りをおもしろおかしく描き、ドラマにもなったヒットコミックエッセイ『日本人の知らない日本語』。著者の海野凪子さんは高校の国語教員から日本語教師に転身し、現在も日本語学校で日々、多くの学生に日本語を教えるベテラン日本語教師です。

「私が日本語教師になったのは、新聞に掲載されていた日本語教師養成講座(※)の広告がきっかけでした。日本語教師であれば、国語教員の経験も生かせるのではと思ったんです。養成講座の受講生はまさに老若男女!普段は出会わない職業や年齢の人と一緒に勉強したり、情報交換したりできたのがとても楽しかったです。当時、私の周りには日本語教師になって海外で働きたいという人が多かったですね。養成講座では、座学のほかに模擬授業があります。人前に立つことには慣れていましたが、国語と日本語では教え方も違うし、新しく覚える知識も多くて大変でしたが、とても勉強になりました」(海野凪子さん)

※ユーキャンが提供している『日本語教師養成講座』とは内容が異なります。

養成講座を修了した海野さんは日本語学校に就職。そこで体験したのが『日本人の知らない日本語』に描かれているような、学生たちとの驚きと発見の毎日だったそうです。実はあまり知られていない「日本語教師の仕事」とは、一体どのようなものなのでしょうか?

「仕事の内容は新人かベテランかなど、その人の経験によって大きく変わります。日本語学校の場合、はじめは非常勤講師で週1~2日、1日4時間程度を担当する人が多いと思います。先生になりたての時は、とにかく授業の準備と勉強に時間がかかるので、それくらいから少しずつ時間を増やしていくことが多いんじゃないでしょうか。1週間かけて4時間分の授業の準備をする感じです。慣れてくれば勤務日や担当授業時間を増やしながら、定期テストの作成・採点や、進路・生活指導、日本語能力試験や日本留学試験といった各種試験の受験サポートなど、仕事の幅も広げていきます。ベテランになると学生に関する仕事だけでなく、新人教育を任されることもあります」(海野凪子さん)

さらに、日本語教師が働いているのは日本語学校だけではないそうです。今では様々なところで日本語教師が活躍されているんだとか。

「例えば技能実習生の日本語研修。受け入れ先の企業が行っていたり、いくつかの企業で作る組合が主催して行われていたりする場合もあります。オンラインで日本語を教える人も増えていますね。また、私もやっていたことがありますが、経験を積んだ先生の中には日本語教師養成講座の講師になるという人もいます。ほかにも専門学校や大学、海外の学校で教える仕事もあります。技能実習生の研修や専門学校、オンラインレッスンなどでは、養成講座の修了や日本語教育能力検定の合格などの条件をクリアしなくても教えられる場合があり、ハードルは少し低いかもしれませんね」(海野凪子さん)

なぜブーツはおしゃれで、長靴はおしゃれじゃない?外国人視点が目から鱗の日本語エピソード

このように、近年活躍の場がますます広がる日本語教師の仕事ですが、そこで出会う外国人の考え方や行動は、時には日本人からするとびっくりしてしまうことも多いそうです。日本語学校で、海野さんが出会った個性的な学生たちのエピソードをいくつか教えてもらいました。

英語のようで英語じゃない!日本のカタカナ語がヘン

任侠言葉であいさつ!?日本語教師が出会った日本語学校での驚きエピソード

「学生からよく『納得いかない!』と言われるのが、カタカナ語。英語由来の言葉でも、発音が全然英語と違うじゃないですか。外国人からすると、英語で言うならちゃんと英語で発音してほしいんですよね。英語圏の学生はもちろん、韓国の人も英語をきちんと発音するので、実は世界的に見て日本のカタカナ語はすごく不自然。学生から『日本が直したらどうですか?』と言われて、確かにそうだなと思いましたが『先生にはそんな権限はありません』と言って、がんばって覚えてもらっています(笑)」(海野凪子さん)

マンガ言葉に武士言葉、任侠言葉……。間違っていないのに、なぜ使えない?

任侠言葉であいさつ!?日本語教師が出会った日本語学校での驚きエピソード

「最近はゲームやアニメで日本語を覚える学生が増えています。そういったものに使われている言葉は、もちろん日常で使われるものもあるんですが、そうじゃないものも結構含まれているんですよね。学生にはその区別が難しいので、授業で教えていなくてもじゃんじゃん質問されます(笑)。学生によっては、時代劇や任侠映画なんかを見ている場合も。これらは文法的な間違いはないんですが、『普通は使いません』ということを説明する必要があります。全部答えていると全然授業が進まないので、それをさばく技術も日本語教師には必要です(笑)」(海野凪子さん)

「いい長靴ですね」は褒め言葉!

任侠言葉であいさつ!?日本語教師が出会った日本語学校での驚きエピソード

「ブーツ→長靴、タートルネック→とっくり。日本語は名前の呼び方によって、イメージが全然変わりますよね。しかも私たち日本人はそれを自然に使い分けています。なぜブーツはおしゃれで、長靴はそうでないのかを言葉で説明するのがすごく難しくて、『今風な言い方だから』など、どうしても曖昧な答えになってしまいがちです。感覚で使い分けている言葉の違いについて、学生に聞かれて『そういえば考えたことなかったな』とあらためて考えさせられることが多いです」(海野凪子さん)

〇は×で、×は〇!

任侠言葉であいさつ!?日本語教師が出会った日本語学校での驚きエピソード

「言葉ではないですが、文化や常識の違いに驚かされることも多いです。例えば、テストの採点で〇→正解、×→不正解は世界共通ではありません。逆の国も結構多いんですよね。日本での当たり前は、世界の当たり前ではない。基本的なことですが、学生と接するとそういったことに気付かされます」(海野凪子さん)

日本語教師の仕事、ここがおもしろい!

このように日々学生からの質問攻めにあいながらも、楽しい日本語教師生活を送っている海野さん。この仕事のやりがいは「目に見えて成長する学生の姿が見られる」ことだと言います。

「こんなに結果がすぐに分かる仕事ってなかなかないなぁと思うんです。はじめは『おはよう』『ありがとう』しか言えなかった学生が、だんだん話せることが増えて、自分の意見を言えるようになったり、一緒にいろいろな話ができるようになるのはすごく楽しいです。特に日本語学校は普通の学校の勉強と違って、今日本語を勉強したくて通っている学生ばかりなので、『必要とされていることを教えている』という充実感もあります。それから、日本語学校にはいろいろな国の人が集まっているので、日本にいながら海外のことを知ったり感じられるというのもすごくおもしろい点だなと思います。ほかの仕事では、なかなか体験できないことだと思います」(海野凪子さん)

そんな日本語教師を目指す人は以前よりも増えているとのことですが、どのような人が日本語教師に向いているのでしょうか。

「素直な人ですかね。あまりにも思い込みの強い人は、ほかの人のアドバイスも受け入れられないと思うんです。例えば『この言い方は正しいですか?』と聞かれて、それを『間違いです』と言い切ってしまうことは、私はできるだけしないようにしています。『て・に・を・は』や時制の間違いであれば明らかに分かるんですが、言い回しは絶対ではないかもしれないからです。言葉の問題なので、自分が思い込んでいたものと違うものが出てくることもあるかもしれません。そんな時に周りの人の意見を聞いたり、テレビやラジオ、そのほかの様々なものからたくさんのことを吸収できる素直さ、柔軟さが必要だと思います」(海野凪子さん)

最後に日本語教師を目指す人へ海野さんからアドバイスをいただきました。

「日本語教師になるのに年齢は関係ありません。若い先生には若い先生の魅力がありますが、ほかの仕事をしたり、アルバイトをしたり、主婦として子育てをしたり、そんな様々な経験がある人材も日本語学校には必要です。その人その人のバックグラウンドに必ず日本語教師として使える要素があると思いますので、ぜひそれを生かしてほしいと思います。それから、新しいことに積極的に取り組むことも大事!私自身も最近、オンライン授業に挑戦しています。今後は、後輩というか後に続く人を育てていきたいなと思っています。自分のしてきたことや経験を何らかの形で伝えていけたらいいですね。そして学校が雇ってくれる限りは(笑)、この仕事を続けていきたいと思います」(海野凪子さん)

日本語学校はもちろん、それ以外にも幅広い企業や働き方で活躍できる日本語教師。グローバル化が進む中でますます注目されそうな仕事ですね。

プロフィール
海野凪子さん
海野凪子さん
前職は高校の国語教師。現在は日本語教師として日本語学校に勤務。漫画家・コピーライターの蛇蔵さんとコラボした著書『日本人の知らない日本語』がベストセラーに。
 

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