就職・転職活動の際は、じっくり検討し、複合的な理由で入社を決めるものですが、特に決め手になりやすいのはどんなポイントなのでしょうか。働き盛りの20~40代の会社員550名に、「入社の一番の決め手」を聞いてみました。
また、「いざ入社してみて感じた、悪い意味でのギャップ」についても聞いてみました。
企業選びの一番の決め手として、もっとも多かったのが「仕事内容」(28.0%)、次に多かったのが「給与面での待遇」(18.9%)でした。ところが、「仕事内容」では2割近く、「給与面での待遇」では3割近くの方が、「入社後、悪い意味でギャップを感じた」と回答するという結果に。また「会社の風土」についても、入社後にギャップを感じている方が多く見られます。
続いて、「入社を決める前に、やっておけばよかった」と思っていることについても聞いてみました。
会社員の方々は、ここで挙がっている項目について、なぜ「入社を決める前に、やっておけばよかった」と後悔しているのでしょうか。特に多かった「給与の確認」「残業時間や時間外労働の確認」「社員の話を聞く」という3つの項目について、キャリアコンサルタントの視点から、チェックするべきポイントとともに具体的に解説します。
給与の確認
例えば転職の場合では、給与が上がると思って転職を決めたものの、ふたを開けてみると「可処分所得」(手取り収入)が下がってしまった、というケースがよくあります。見落としがちなのは「手当」です。前の会社にはあった各種手当(残業手当・住宅手当など)や福利厚生がなかったり、あっても額が低かったりすると、基本給は前の会社より高くなっても、可処分所得は減ってしまうことになります。「みなし残業代」が含まれているので、基本給が高く設定されていることもあるわけですね。
もう一つのポイントが「昇給」です。「成果を上げても給与額に反映されない」「昇給のペースが遅い」といったことに、不満の声が上がるケースもあります。前述のアンケート結果では、4番目に多い項目として「評価基準の確認」も入っていますが、どんな働きが評価され、評価がどのように給与に反映されるのかも、入社前に確認しておきたいものです。
残業時間や時間外労働の確認
「残業や休日出勤の有無を聞くと、意欲を疑われるのでは……」という不安から、質問できないまま入社し、想定外の残業の多さに疲弊してしまう方も少なくありません。また、面接時に残業時間や時間外労働の目安を確認していても、実際に配属された部署が特別忙しい部署で、「聞いていた以上だった……」というケースも。
できれば、配属予定先部署の社員に話を聞ける機会を設けてもらい、「普段は何時頃まで働いているんですか」「休日出勤はどのくらいされているんですか」などと、確認してみるのもいいでしょう。
社員の話を聞く
面接で人事担当者・役員・社長などとだけ話して入社を決めた方の中には、「社員とも話しておけばよかった」と思う方も多いようです。その理由は、「実際の仕事内容」「仕事の進め方」「仕事をする中で重視されること(スピード重視、チームワーク重視など)」「職場の雰囲気」などに対して、入社前にイメージしていたものとのギャップを感じるため。
また、「役員・社長が面接で話していたビジョンに感銘を受けたが、現場社員にはそれが浸透していなかった」ということもありがちです。こうしたギャップを避けるためにも、内定の方向へ話が進んだタイミングで、「配属予定部署の方ともお話しさせていただけませんか」と相談してみるといいでしょう。先ほどの「残業時間や時間外労働の確認」や、アンケート結果で5番目に多い項目として挙がっている「具体的な業務内容」についても、この機会を利用して確認するといいでしょう。
今回のアンケートで挙がった項目以外にも、企業選びでチェックすべきポイントはたくさんあります。以下に例を挙げますので、自分が特に大切にしたいことはどれなのかを考え、企業研究をするなり面接で質問するなりして確認してみましょう。
転職の場合は、給与・残業・休暇・人間関係などの不満から転職活動に踏み切り、それらの不満を解消することを第一の目的に、企業選びを行う方が多く見られます。しかし、それらが満たされたとしても、やがてまた別の「不満」「不安」が生まれてくることがあるのです。それは「成長できない」という不満。例えば、「上からの指示に従うだけで、主体的な取り組みができない」「新しいことにチャレンジしない保守的な風土であるため、時代に取り残され、新たなスキルが身につかない」などの不満です。
若いうちは気付かなくても、年齢を重ねていくと、いつの間にか他社の同世代と差が開いていたり、転職しようにも「武器」と言えるスキルが身についていなかったりして、焦りや不安を感じる方は少なくありません。また、今後は今ある仕事がAI(人工知能)に取って代わられることも増えてくるでしょう。
「人生100年時代」と言われる中で、ビジネスパーソンとして長く活躍し続けるために、「どんな経験をし、どんなスキルを身につけて、どう活かしていきたいか」という視点を持ち、それが叶う企業を見極めていただきたいと思います。
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