Jamさんの「パフェねこ」シリーズは、日常に転がる「ちょっとしんどい出来事」や「どんよりした気分」を癒やしてくれると、Twitterで火が付き書籍化までされた人気マンガです。ゆるカワな主人公「白いねこ」は、一体どんなきっかけから誕生したのでしょうか?
「マンガを描く少し前に、仕事で『ゆるいウサギのキャラクターを描いてほしい』という依頼があって。当時、試行錯誤した絵柄が主人公のねこの元になっているんです。デザインに個性がない方が、読む人が感情移入しやすいかなと思い、あえて白でシンプルな絵に。名前がないので、私は『白いねこ』と呼んでいます。また、様々なメッセージを伝える時に、『ねこが言うなら仕方ない』と許してもらえないかしら、という気持ちもどこかにありました」(Jamさん)
「白いねこ」が初登場したのは、2016年の熊本地震の時にJamさんがTwitterで発信したマンガ。東日本大震災の際、「仲間の会社が自粛によって倒産し、なす術がなく、悔しい思いをした」という経験を伝えたかったそうです。
「大変な時だからこそ、『元気な地域では経済を回そう』という思いをマンガに託しました。最初は身内に伝えたい一心でしたが、そのうちにだんだん『生きている間に、できることをしたい』という気持ちが強くなり、不特定多数の人が見るSNSの活用を考えました。でも、SNSで発信するには、違う考えを持った、見知らぬ人からの批判を受ける覚悟も必要でした」(Jamさん)
それ相応の覚悟を持って描いたマンガには大きな反響が寄せられ、1日で4万もの「いいね」がつきました。そして、2作目として描いたのが、理不尽な言葉に傷ついた時、友人から言われた「多分そいつ、今ごろパフェとか食ってるよ」という言葉にハッとさせられた実体験をマンガ化した作品。本作がきっかけで、「白いねこ」は「パフェねこ」と呼ばれるように。
『多分そいつ、今ごろパフェとか食ってるよ。』(サンクチュアリ出版)より引用
「このエピソードに登場する友人の言葉は、今も自分の中で反復することがあります。人の心の中は見えないものですし、自分と考え方や行動が違うのは当たり前。それぞれの場で、それぞれの人生を生きているのだから、考えすぎないことも自分を守る一つの方法だと思います」(Jamさん)
現在はフリーランスとして活躍するJamさんですが、「パフェねこ」シリーズには会社員時代の実体験も反映されているそうです。当時、Jamさんが一番悩んでいたのは仕事のスキル。
「大手ゲーム会社で、ゲームグラフィックデザイナーとして働いていましたが、社内にはとても絵の上手な方が多く、自分のスキルのなさに落ち込んでばかりいました。最初の数年は、いつクビになるやら……と気分が暗くなることも多かったですね」(Jamさん)
いつしか、どうしようもなく自信をなくしてしまったJamさん。そんな時の解決策として、「過去に自信を持てた時のことを思い出すといい」と聞き、さっそく実践しようと考えたそうです。
『多分そいつ、今ごろパフェとか食ってるよ。』(サンクチュアリ出版)より引用
「でも、冷静に考えたら、私はうまくいっていた時でも、自信を持てたことがないと気付いたんです。すると、元から持っていないものを『なくした』と思い込んでいた自分が、おかしくて笑えてきて。むしろ、『自信なんてなくても、何とかやってこられた』と思った時に、とても気が楽になりました」(Jamさん)
ある時には、知人から仕事をしていく上で「セールスポイントを変えないと、この先は生き残れないよ」とアドバイスをもらったそう。その言葉を機に「絵で飛び抜けたセンスと、技術をアピールするのはムリだ!」と考え方を切り替え、今からでも努力で補える分野のスキルアップを目指したそうです。
「そもそも、絵がうまい人とはスタート地点が違う。同じ土俵で戦うのではなく、『必要とされるには何が必要か?』に着目したんです。そう考えた時に、私が見つけた答えは作業スピードや使えるツールの多さ、サポートスキルといった、目立たないけれど、いないと困る裏方のポジションでした。どんな場所にも足りないところはあるので、そこにポイントを絞れば『必要な人』になれる可能性が広がります。私も『現場で足りない人材』に着目したことで悩みを乗り越え、仕事を続けることができました」(Jamさん)
人間関係の悩みも、日常のモヤモヤの原因の一つ。Jamさんもその昔、人間関係に悩んで辞めた仕事があると言います。人に振り回されるだけでも疲れるのに、相手が逆らえない立場だと必要以上に振り回され、疲れも倍増……。そんな時、ふと気付いたのが「会社を出れば、どんなに偉い人だって、ただの人」だということだったそう。
『多分そいつ、今ごろパフェとか食ってるよ。』(サンクチュアリ出版)より引用
「職場にいると絶対に逆らえない権力者のように感じますが、一歩外に出れば、その人の名前も役職も知る人はほとんどいません。『この人が威張れるのって、ここだけなんだな』と思うと、相手への見方や自分の受け止め方も変わってくるのではないでしょうか」(Jamさん)
できることなら、人間関係のモヤモヤがなく、会社に行くのも楽しいと思える毎日にしたいですよね。Jamさんは考え方の転換以外にも、こんな工夫をしていたと言います。
「まずは職場と家の道中に、ご褒美ポイントを探しておきます。私は、出社前にカフェやファストフードのモーニングメニューを食べるという楽しみを作って、早起きをしていました。出社前に神社に立ち寄ってモチベーションを上げたり、お気に入りの洋服屋さんやバーを見つけて、帰り道の楽しみにしたりするのもいいかもしれません。ワクワクできるものが一つでもあると、出かける時の足取りも、より軽くなるのではないかなと思います」(Jamさん)
また、今がどんなにつらくても、この先に違うゴールや逃げ道があると「思う」だけで、自分の心を守れることもあります。
「例えば、生きていく上で仕事がないのは困るけれど、人生で一番変えやすく、簡単に辞めることができるのも仕事。もしもの場合、お金や仕事に関して法的な保障を受けられる制度が日本にはあります。仕事を簡単に辞めてもいいという意味ではなく、あまりに苦痛で精神的にどうしようもない時は、『いつでも辞められる』と考えるのも悪くないと思うんです。仕事に限らず、別のゴールがあるかもしれない、違った道があるかもしれないと思うだけで、少し気が楽になるはずですから」(Jamさん)
時には自分に逃げ道を与えてあげることも、有効な手段かもしれませんね。
モヤモヤ気分や、疲れた心を吹き飛ばしてくれる癒やしのパワーは届きましたか?「パフェねこ」が教えてくれた考え方を頭の片隅に、明日から心機一転!もっとワクワクする毎日へと変えていきましょう。