今回アドバイスをしてくださったのは、ユーキャンの「心理学入門:生活心理学講座」の監修を担当する水口禮治先生。まずは心理学という学問について解説していただきました。
「心理学という学問はまだ新しいものですが、心の問題自体は、人類が誕生し相互交流が始まった時から存在していたものです。この精神的な現象を『心の科学』として実証し、原理や伝承を追求することで発展してきました。日本へ『心理学』という学問として伝わってきたのは戦前のこと。ここ50年ほどの間にほとんどの大学で学べるまでに広まり、「華形学問」として社会に浸透するようになったのです。
ところで、心理学上において「心」というのは働きや作用のことを指し、それ自体が人間のどこにあるのかを問うものではありません。ゆえに抽象的な考え方をする必要があり、心理学を学ぶにはある程度成熟した年齢(高校卒業程度)以降が適していると言われています。高校で教科として扱われないのはこのためです。また、対人関係や社会関係で必要とする語句が多く、そういった場面での体験や理解も必要とされることもあり、ある程度成熟して人生の様々な場面を体験してこそ学ぶことができる、大人の学問と言えるんです」
「まず、心理学と一口に言っても、さまざまなジャンルがあります」と水口先生。
①基礎的領域の心理学
=人間の心理の原理・原則を発見し、解明するための領域。
具体的には、「心理学入門、心理学概論、方法諭(実験、調査・統計などの学習)、感覚・知覚・認知・生理・学習・性格(人格)・感情・発達・社会・動物・異常・精神分析」などの各領域の心理学。
②応用的領域の心理学
=発見された法則や原理を生活や生産に役立てるための心理学。
具体的には、「教育・産業・臨床・犯罪・交通・裁判・健康・医療・経済・広告・宇宙航空・文化・宗教・家族」などの領域の心理(今後増える可能性あり)。
③学際的領域の心理学
=隣接する多くの学問と連携して共通問題の解決に貢献する心理学(今後増える可能性あり)。
「これだけ幅広い分野に存在する心理学ですから、具体的な進路も多岐にわたります。①研究者・研究補助員、教員・教授、各種社会調査員、②各種相談員、カウンセラー、各種治療士、補導員、③国家公務員心理職、地方公務員心理職、児童相談所、福祉施設要員、交通安全教育係、④民間企業(広告、宣伝、消費行動、デザイナー、出版、統計、パソコン処理、トレナー、各種インストラクター)など、職場や社会的機関に広く及んで活躍しています。また、2015年9月には「公認心理師法」が国会で成立し、新たに心理職の国家資格「公認心理師」が誕生します(※)。国民の心の健康増進を目的としており、これまでより一層、心理学への注目が高まっているのです」(水口先生)
※「公認心理師」の資格試験が実施されるのは2018年以降の予定です。
では、水口先生が監修するユーキャンの『生活心理学』ではどのようなことが学べるのでしょうか?
「今回紹介する『生活心理学』は、前述した心理学の学術的な分類には存在しません。しかし、生活上で実際に遭遇する問題の解決に役立つ心理学なので、多くの人にとって身近に感じ、日常生活で実践できる場面がたくさんあるでしょう。
この講座では、普段起こり得るような事例を取り上げています。日常生活でうまくいかないことがあった時に、ちょっとテキストを見てみることが肝心です。そうすると、何か解決のヒントが見つかる可能性があります。それくらい現実にそった内容になっているのです。心理学書(テキスト)を学習することは、自分の内面に気づくこと。その反動として外面の事物・人物に対して敏感に、想像や思考にも柔軟になるのです」(水口先生)
水口先生は、ストレスの多い現代人こそ生活心理学を学んでほしいと言います。
「人間は少々ストレスを与えたからといって、すぐにはダメにならないものなんです。心や気持ちがしっかりしていれば大丈夫。でもその心や気持ちが弱くなってしまうことがありますよね。生活心理学講座の中に『ストレスとつきあう』という項目があります。この項目を学ぶと、ストレスとは何なのかということの理解が深まるので、つまらないことで苛立ちや不安を感じなくなるんです。ストレスのない社会なんてないし、人は無菌状態で生きていくことはできないから、ストレスを生きる力に変えないといけない。つまり捉え方の変換をすればいいわけです」(水口先生)
捉え方の変換とは、具体的にはどのような例があるのでしょう?
「例えば『のろま』と言われたら、効率が悪いのではなく、じっくり取り組む人だって思ってみるとか、同じことでも良いように解釈すればいいと思います。また、自分を励ます場合だけでなく、人に敵対心を抱かないような見方をする癖がついてくると、対人関係がだんだんスムーズにいくようになりますよ。これを『ポジティブ・シンキング』と呼んでいますが、生活心理学講座の中では、『ステップアップの心理学』という項目で論理的に学ぶことができます」(水口先生)
実際に講座を受けた受講生からも、「これまでかたくなで悩むことが多かった自分の目から、ウロコが落ちたように感じた(50代男性)」、「悩んでいる友人に、講座で学んだことを話してアドバイスしたら、『気持ちが晴れた』と言ってくれた。勉強したことが自分のためだけでなく、他人のためにもなったことが嬉しかった(40代女性)」といった声が寄せられています。ポジティブ・シンキングは、自分のみならず周りの人たちにもプラスの作用を与えるんですね。
例えば、職場の先輩の発言にくよくよ悩んでしまうなど、日々人間関係で直面する問題は少なからずあることでしょう。大切なのは自分や相手の性格を理解しつつ、自分を見つめなおすことだと水口先生は提唱します。これは「生活心理学」のカリキュラム上でも重要な要素になっています。
「自分を知るということは、簡単なようで実はそんなに簡単ではない。普段は相手を知ることに精一杯で、なかなか自分を知ろうとはしないですよね。だから客観的にテストをして、その結果について考えるだけでもためになります。反省したり自覚したりしているうちに、自分のこういうところがあまり良くないのかな、などと次第にわかってくるものです。
受講生の中には、自分自身を見つめなおすことで心がラクになったという意見もあります。自分のことがわからないとすぐ人に影響されてしまうのですが、『私はこう思っている』と自信が持てるようになると、たくましくなるのです。人間の心理現象を分かったうえで人と付き合えるようになったら、日常生活や人間関係がスムーズに運ぶことでしょう」(水口先生)
人間の法則や原則がわかると、自分なりの人生語録ができて励ましてくれるとも。「なるほどそうだったのか」と理由がわかれば次へのステップが見つかるはずです。自分と上手に向き合って、楽しい毎日を送りたいですね。
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