楽しかった休日も終わりが近づき、「明日からまた仕事が始まる」という現実に直面すると、途端に襲ってくるブルーな気持ち。毎週儀式のように繰り返されるこのネガティブな状態と決別し、気持ち良く月曜日を迎える方法はないのでしょうか?
「ちょっとした意識や気持ちの切り替えで、憂鬱さを吹き飛ばすことは可能ですよ」
そう語るのは、慶應義塾大学の研究所でご主人の前野隆司氏とともに、幸福学を研究されている前野マドカさん。そもそも「幸福学」とは、どのようなものなのでしょうか?
「『幸福学』とは、心理学と統計学をベースにした学問です。具体的には幸せに関する世界中の研究やデータ、独自に実施したアンケート結果を分析することで、幸せになるためのメカニズムを検証しています。夫と私は研究を行うだけでなく、それを家庭や職場で生かすといった応用面も含めた『実践的な学問』として、幸福学を位置付けています」(前野マドカさん)
前野さんの研究によると、幸せの鍵となる因子(要素)は4つあるそうです。
「それぞれ『やってみよう!』力、『ありがとう!』力、『なんとかなる!』力、『ありのままに!』力と名付けました。私たちは、これらの力をバランス良く高めることで幸福度が格段に向上すると考えています」(前野マドカさん)
「幸せの4つの力」とは?
1.「やってみよう!」力
夢や目標、やりがいを持ち、それを実現させようと自ら成長すること。
→自己実現に向かって行動を起こし、努力することで人は幸せを感じる。
2.「ありがとう!」力
他者を喜ばせたり、支援すること。家族や友人たちなど、人とのつながりを感じること。
→いろいろな物事に感謝をし、人との信頼や良好な関係を築くことが幸せにつながる。
3.「なんとかなる!」力
物事に対して常に楽観的でいること。自己受容感が高いこと。
→自分の嫌いなところも含め、細かいことは気にせず生きた方がハッピーになれる。
4.「ありのままに!」力
周りの人と比べず、自分らしく、あるがままでいること。
→人の目を気にしすぎず、「自分の軸」を持っている人の方が幸福度が高い。
幸せになるためのメカニズムを教えていただいたところで、気になるのが「月曜日が嫌」だと思う原因。溜まっている仕事?人間関係?ノルマ?プレッシャー?私たちをブルーな気持ちにさせる正体は、何でしょうか?
「仕事にやりがいを感じていなかったり、人とのコミュニケーションがうまくいっていなかったり、といった理由が考えられます。特に、月曜から始まる仕事の内容に気が乗らなかったり、職場での人間関係に悩んでいる場合は、その傾向が強く出ると考えられます」(前野マドカさん)
さらに、月曜を憂鬱だと感じる人にはある共通点があると言います。
「休日でも仕事のことばかり考えてリフレッシュできない人、細かいことを気にしすぎる人などです。さらに現代社会で一番多いのは『他人と比べること』ではないでしょうか。ついつい目に見えるもので他と比べてしまいがちです。自分らしさ・自分の良さが生かせていないので自己肯定感が低くなり、自信もなくなる。結果、仕事へ向かう気分が下がってしまうのです」(前野マドカさん)
前野さんによると、こうした人たちは「ありがとう!」力と「やってみよう!」力を特に強化するといいのだそう。
「日々の小さなことでもいいので、いつものことに感謝してみましょう。達成感を感じるために、小さなチャレンジを日常に取り入れていくのもポイント。一人でチャレンジするのが難しかったら、友人と一緒にチャレンジするのもいいですね。幸福度を高めるためには人との『つながり』と『生きがい』が重要だということが、研究によって分かっています」(前野マドカさん)
次の章では、月曜を前向きに迎えるための秘策を伺います。
憂鬱な気分を吹き飛ばす秘策とは、ずばり「幸せスイッチ」を押すことにあり、と前野さん。いったいどんなスイッチなのでしょうか?
「自分にとって幸せを感じるための思考法のことなんです。ある意味脳をだまして、ネガティブな気分から意識や心を切り替えるためのきっかけとなるものなのですが、このスイッチを活用すれば、いつもの生活がより前向きに、楽に過ごせるようになりますよ」(前野マドカさん)
前野さんの研究チームにより、学術的にも検証されたこの幸せスイッチ。意識や心の切り替えに使えるスイッチはたくさんありますが、今回は月曜日を晴れやかな気持ちで迎えるために、特に効果的な「幸せスイッチ」を教えていただきました。
「やってみよう!」力を高める【体験スイッチ】
「人は物を購入したり見たりするよりも『体験する』方が幸せ、という研究結果(※1)があります。それを踏まえ、休日には音楽、絵画、ダンス、料理、運動などに取り組むことがおすすめ。手や身体、五感を使う体験になるので、リフレッシュにもってこいです。そうすることで、月曜日からの一週間も心おだやかにスタートできるはず!」(前野マドカさん)
※1:エラスムス大、ヴィーンホヴェン博士による研究結果
「ありがとう!」力を高める【信じるスイッチ】
「同僚との信頼関係が築けていないことが原因で気が重くなるという人も多いのでは?そんな時は『信じるスイッチ』が有効です。ピグマリオン効果(※2)と言って、相手をとことん信じることで、ぐんと成長する可能性が高くなります。難しい課題などがある場合、きっとうまくいかないだろうと思ってしまいがちですが、そう思っていると自然と相手への言動にネガティブな感情が表れてしまうもの。ですから、まずは相手を信じ切る。そうすると無意識のうちに言動が変わってくるので、相手との関係性が良くなり、物事は良い方向へ進むはずです。まずは、信じることから始めてみてください」(前野マドカさん)
※2:アメリカの教育心理学者、ローゼンタール博士が提唱した教育心理学用語
「なんとかなる!」力を高める【上を向いて歩こうスイッチ】
「一週間のスタート!という月曜日に、家を出る時から気が重くて下を向いている人が多いのではないでしょうか。フロリダ・アトランティック大学の研究チームによると、上を向いて大股で歩く人はそうでない人より幸せであるという結果が出ているそうです。というのも、上を向いて元気に歩くと『今は前向きになっているな』と脳が錯覚するようなのです。まずはいつもより上を見上げて大きく深呼吸し、元気に歩いて過ごしてみてください。不思議と気分が晴れやかに感じられ、気持ちにゆとりができますよ」(前野マドカさん)
「ありのままに!」力を高める【満喫スイッチ】
「ロヨラ大学のブライアント博士の研究によると、日常生活のどの経験も楽しもう!と意識することで、幸せ度が高まることが知られています。ポイントは、面白くてワクワクしたら『なんだかワクワクする!』、新しい担当者に会ったら『すごく明るくて、いい感じ!』などと感情を素直に口にしてみること。そうすることで自分自身の感覚が変わり、『嫌』を『楽しい』に変えていくことができるようになります。まずは、月曜日からの仕事を『楽しいはず!』と意識して、過ごしてみてはいかがですか」(前野マドカさん)
「さまざまな場面で使える『幸せスイッチ』は、いつでも幸せな方へ気持ちを切り替えられ、憂鬱な月曜日を乗り越える助けとなってくれます。働く方々が少しでも心軽く月曜日をスタートできますように!」と前野マドカさん。ちなみに幸福度アップのために、緑に触れることもおすすめとのこと。休日は、緑の多い公園をお散歩するのもいいですね♪
たかが月曜日、されど月曜日。週の始まりを晴れやかな気分で迎えることができれば、残りのウイークデーも、気持ち良く前向きに過ごせるようになるはず。教わった幸せスイッチを活用して、月曜日を幸せに迎えましょう!