今回お話を伺ったのは、ローフードや発酵食品の料理教室を主宰する、料理家の安藤千英さん。安藤さんがローフードや発酵食品に興味を持ったきっかけは、娘さんの火傷だったそうです。
「火傷で入院し、日々痩せていく娘を見て、食生活を見直すことで、娘の体調を改善できないかと考えたんです。そこで、まずは生の食材をベースとしたローフードに着目し、食卓で実践しました。すると、約3週間経った頃から、私の身体に良い変化が見られて。それから、夫のアレルギーも改善し、娘の体調も上向きになるなど、ローフードが身体にいいことを実感したんです。『人の身体は食べたものでできている』ということを、あらためて感じました」(安藤千英さん)
加熱されていない生の食材を食べることで、食物酵素を効果的にとれるのがローフードの良さだそうです。そして食物酵素は、発酵食品にも豊富に含まれていると言います。
「私たちの体内で作られる酵素には、消化酵素と代謝酵素があります。普段から肉類や加工食品などを多く食べる方は、消化酵素をたくさん必要とするため、その分、作られる代謝酵素が少なくなってしまいます。そこで、ローフードや発酵食品を通じて体外からも酵素をとることで、消化を助け、代謝も盛んになります。ローフードや発酵食品が、健康や美容、ダイエットに効果があると言われる理由の一つが、食材に含まれる酵素の力です」(安藤千英さん)
「『腸活』や『腸内フローラ』という言葉をよく耳にしますよね。『大病の根源は、腸内環境の悪化にある』と力説するお医者さんもいらっしゃるほど、腸が与える美容や健康への影響に注目が集まっています。そして、腸内環境を整えるのにも、発酵食品が大活躍。発酵食品に含まれる微生物が、その役割を果たしてくれるんです」(安藤千英さん)
例えば、ヨーグルトや漬物は、善玉菌の代表格とも言えるビフィズス菌の宝庫。その他の発酵食品にもさまざまな善玉菌が含まれており、腸の働きを活性化させ、免疫力を高めてくれるそうです。
「納豆、キムチ、味噌、漬物……。私たちの身の回りには、さまざまな発酵食品がありますよね。生野菜をはじめとするローフードのレシピだと、『食べづらい』『物足りない』と感じる男性やお子さんもいらっしゃるかもしれませんが、発酵食品なら、単体でもアレンジしても、食べ応えのあるレシピに仕上がります。そして、アレンジにおすすめの発酵食品は、何といっても麹です!」(安藤千英さん)
定番の塩麹をはじめ、醤油麹、甘麹、焼酎を原料とした黒麹など、安藤さんのご自宅には手作りの麹がいっぱい!こうした手作りの麹は、おいしいだけではなく、酵素や菌を生きたまま身体にとり入れられるので、とても優秀なんだとか。
「私が手作りにこだわるのは、加熱処理なしの生の麹に含まれる生きた菌を、そのままいただけるからです。麹の他に、味噌や醤油も手作りしています。そして、言葉の通り『手前味噌』になりますが(笑)、家族が『おいしい!』と言ってくれる、我が家の味に仕上げられるのも手作りの良さですね」(安藤千英さん)
旦那さんや、育ち盛りのお子さんも喜ぶ栄養満点の発酵食品レシピを、安藤さんに教えていただきました。「豚肉の麹ジンジャーソテー」と「麹仕立てのラタトゥイユ」の2品のレシピをご紹介します。
豚肉の麹ジンジャーソテー
「麹をはじめ、ヨーグルトやワインなどの発酵食品には、お肉を柔らかくする効果があります。プロテアーゼと呼ばれる酵素がお肉のタンパク質を分解し、焼いてもしっとり、柔らかく仕上げてくれるのです。麹の割合はお好みで。甘いのがお好きな方は、甘麹を多めに入れてください」(安藤千英さん)
麹仕立てのラタトゥイユ
「我が家の子どもたちも大絶賛のメニューです。人気の理由は、野菜と塩麴のうまみがギュッと凝縮された濃厚なお味。季節の野菜はもちろん、お豆などを入れてもおいしいです。ちなみに、うちの子どもは便秘がひどかったのですが、これを食べたら解消されました」(安藤千英さん)
「発酵食品に含まれる菌は、熱に弱いです。例えば味噌は、味噌汁にすると菌がほとんど死んでしまいます。でも、そうした『死菌』も、実は腸に有効なんです。腸内で善玉菌のエサになったり、悪玉菌を便として排出したりする役割を果たしてくれます。
大切なのは、生きた菌も死んだ菌も、バランスよく摂取すること。例えば、漬物は生きたままの菌を手軽にとれる発酵食品なので、味噌汁と一緒に食卓に並べるといいでしょう」(安藤千英さん)
お話を伺ってみると、普段、私たちが何気なく口にしている発酵食品が、体内で大きな働きをしていることが分かります。そしてうれしいことに、和食には発酵食品が豊富。無理なく毎日の食卓に取り入れられるので、いろいろな発酵食品のレシピを楽しんでみてはいかがでしょうか。
「まずは、日々の食事を満喫することが大切。健康食という観点も大切ですが、ご自身やご家族が『おいしい』と感じることが一番です。そして、発酵食品の奥深い味わいや、食べ続けることで感じられる身体の変化を、ぜひ楽しんでみてください」(安藤千英さん)
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