企業コンサルタントをしながら、二児の母として、仕事も子育ても頑張ってきた永田絹枝さん。しかし、長女の小学校入学と同時に、子育ての壁にぶつかってしまったそうです。何か問題が起きるたびに、学校の先生から「お母さんが働いているからでは?」「もっと子どもと向き合ってください」などと言われ、子どもと永田さんが周りから孤立してしまう状況に。
普通のママなら途方に暮れてしまいそうなところですが、永田さんは「自分の子どもに、また教育の現場に、一体何が起こっているのだろう?」と、必死に考えたと言います。そして、問題解決のヒントになればと、児童心理学の勉強を開始。もう一度大学へ入学し、100以上ある選択肢の中で、「認知行動」「突発性行動についての衝動性」を専門に勉強しました。大学の先生にも「永田さん、そこまでガッつかなくても」と言われるほど、必死に勉強したそうです。
企業コンサルタントを続けながら、また子育ても家事もこなしながら児童心理学を学び、自分の子どもに起きている問題の解決の糸口を、必死に模索した永田さん。しかし、学んだ結果、自分が理想とする教育の場所がどこにもないことに気付きます。
それならばと、永田さんは自分の手で「理想の学童保育」を立ち上げることを決意。自分のような、子育てに悩むママたちをサポートするために、子育てカウンセラーとしての活動をはじめました。そんな永田さんは、まさに悩めるママたちの駆け込み寺!一体どんな悩みを抱えたママたちがやってくるのでしょうか?
「カウンセリングの内容は、人によって本当にさまざまなんですが、詳しく聞いていくと、最終的には『子どもに関する悩み』というより『ママ自身の悩み』だったということがほとんどですね。
あとは、ママ自身が『子どもに関する悩み』をつくってしまうことも多いです。たとえば、子どもが『宿題をしない』『言うことを聞かない』『自分のことができない』と悩むママに、『普段どういう声かけをしていますか?』と聞くと、そういうママに限って、先回りをして手を出しすぎていることが多いです。靴下を履かせるところまでママがやっているとか……。
他にも、小学1年生のお母さんにありがちな声かけとして、『学校大変だったでしょう~!』というのがあるんですが、そう言われると、子どもってそう思っていなくても大変そうな顔になっていくんですね(笑)
また、授業参観などで学校での様子を見る機会に、ぽつんと一人で教室にいる子どもを見て、『何か嫌なことがあった?』『誰かにいじめられてない?』『お友達いないの?』と、先回りで心配をしてしまうのもありがちです。子どもにネガティブな質問ばかりぶつけていることに、ママ自身が気付いていないんですね。そんな質問ばかりされている子どもは、だんだんネガティブな答えを見つけて伝えるようになります。このように、『子どもに関する悩み』は、実はママ自身がつくっているということがほとんどなんです」(永田絹枝さん)
「ワーキングマザーだと、子どもと一緒に過ごせる時間が少ないために、子どもに問題が起きやすいのでは?と心配されているママも多いと思います。でも、私がカウンセリングしてきたママたちの中では、ワーキングマザーの子どもの方が、不登校率は少ない印象を受けます。
たとえば、子どもが『ちょっとだけ学校に行きたくないな』というときに、専業主婦だと『今日だけ一緒にいてあげようかな』という気持ちになってしまいますよね。一日だけのつもりでも、それが毎日になり、そのまま学校に行かなくなってしまうケースもあるんです。
でも、働くママはそうは言っていられないですよね。子どもが学校に行きたくない理由が些細なことであれば、『よし!学校に行こう!』『お母さんだって仕事行かなきゃいけなんだから!』ってなる(笑)子どもって、学校に行ってしまえば、実はどうってことない場合も多いんです。
子育てというのは、ママと子どもの向き合う時間がただ多ければいいというわけではないんですね。子どもとのコミュニケーションのとり方で言うと、昔よくあった『台所に立つ母の周りに、まとわりつく子どもの図』が、実は子どもの本音を聞く、とってもいいチャンスなんです!ママが何かをやっているときや、一緒にお風呂に入ってたわいもないことを話してるときも、子どもの本音は出やすいんです。
逆に『さあ、話してごらん!なんでも聞くから!』というときに、子どもの本音は出てきません(笑)忙しくても、一緒の時間がなかなかとれなくても、子どもとのコミュニケーションは、とり方次第で密になるんです!」(永田絹枝さん)
「核家族化や、ネットやスマホの影響で、現実のコミュニケーションが希薄化していると言われる今の時代に、ママまで感情をオブラートに包まなくていいと思います。ママの感情を、プラスもマイナスもすべて子どもに見せてあげるのが大事です。お母さんが落ち込んでいるなら、そんなところも子どもはちゃんと見たいんです。
さらに、意外と効果があるのが、ママの前向きな独り言です。『今日も頑張ってね!』と子どもに言うよりも、『よし!今日も頑張ろ~!』とママが言う方が、子どもはしっかり聞いているし伝わります。
あと、『気持ち』と『姿勢』って実はとても関係があるんですよ!暗い気持ちのときって、知らず知らずに前かがみになっているんです。だから、お子さんが何となく気分が落ち込んでいそうなときは、羽交い締めにして胸をガバッと広げてあげるといいんです。胸が広くなると気持ちが明るくなるし、スキンシップにもいいですよ。
『ママが変われば、子どもも変わる』とよく言いますが、それは本当です。先ほども言いましたが、ママと子どもが一緒にいる時間を、ただ増やせばいいわけではありません。ママが子どものネガティブなことばかりを見つけようとしているうちは、子どもにネガティブなことが起こってしまいます。だって、ネガティブなことを探しているわけですから……。
ママがどっしり構えて、短くても密な時間を子どもと過ごすこと。そして、嘘のない自分をきちんと見せること。子どもが小さければ小さいほど、ママが変われば子どももすぐに変わります。子どもって、ママが思うより純粋で敏感で、たくましい存在なんです」(永田絹枝さん)
永田さんのコロコロと変わる優しい表情と、包み込まれるような雰囲気や声のトーンで、気付くとこちらが、ママとしての日頃の悩みをつい話してしまっている、そんなインタビューでした。
子どもと向き合う時間がどうしても少なくなってしまう「ワーキングマザーならではの悩み」も笑顔で受け止めながら、大切なポイントをさりげなくアドバイスしてくださった永田さん。「子どもに関する悩みは、実はママ自身がつくっている」という鋭い指摘には、ハッとさせられました。
子育ては、人それぞれ違うからこそ『悩む』もの。そして、一生懸命だからこそ『不安になる』もの。でも、それもママとして当たり前のことなんだと気付かせてくれた、心も肩の荷も軽くなるような永田さんのお話でした。
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