現在、「クローゼットスタイリスト」として活躍中の秋山真穂さん。個人のお宅や企業に出向いて整理収納に関するアドバイスを行ったり、講師として講演会に出席したりしています。でも、「クローゼットスタイリスト」とは、あまり聞きなれない言葉。どんな提案をするお仕事なんでしょう?
「家の中を整理しようとしたとき、最初に気になるのは、やはり一番目につくリビングやキッチン。いざとなれば隠しておけるクローゼットは、つい後回しになりがちですよね。でも、増え続ける洋服の置き場所に困っている女性は多いもの。加えて、とにかくモノが多いクローゼットを整理することは、取捨選択の過程をふまえ、自分自身のライフスタイルを見つめ直すきっかけにもなるんです。『クローゼットスタイリスト』とは、そんな作業のお手伝いをさせていただきたいという思いを込め、考案した肩書です」(秋山さん)
クローゼットの整理収納にあたって、秋山さんがこだわったのは、整理収納アドバイザーとパーソナルスタイリスト(R)という2つの異なる資格で得た、知識と経験を活かすことでした。
「高かったから、いただきものだから、いつか着るかもしれないから……。そんな思いを整理して、本当に必要なモノだけを残して片づけるのが整理収納の作業。一方で、その方の髪や肌の色、体型などを参考に、似合う服をコーディネートするのがパーソナルスタイリスト(R)の仕事です。着る服、着ない服をただ選別するのではなく、客観的なプロの視点から似合う色や素材をご提案することによって、整理収納がもっとスムーズにできるのではないかと考えました」(秋山さん)
もともと、整理することが大好きだったという秋山さん。それを仕事にするための道を切り開いてくれたのは、1枚のチラシでした。
「整理収納の仕事に携わる前は、一般企業の事務職に就いていました。ただ、そこでも『片づけといえば秋山さん』というイメージを持たれていたようで、『秋山さん、アレ、どこにあったっけ?』『右の棚の下の段の引き出しの奥です』なんていうやりとりは日常茶飯事でした(笑)。そんなある日、私のデスクの上に、1枚のチラシが置いてあったんです。見てみると、整理収納アドバイザーの講座案内でした。いまだにどなたが置いてくださったのかわかりませんが、そのチラシが『片づけ好きが仕事になるんだ!』という発想を与えてくれたのです」(秋山さん)
資格取得のための勉強を重ねるにつれ、自己流で行っていた片づけと、プロが行う整理収納との違いに目からウロコが落ちる思いだったそう。
「整理収納は、手放すモノ、残すモノの選別作業。それを行うために、まず人とモノとの関係性を考えることから始めるんです。なぜそのアイテムを買ったのか、どこに惹かれたのか……。そんな、モノの背景にあるストーリーを考えることで、何となく手放す(残す)のではなく、選別が意味のあるものになります。また、そのような手順をふんで整理収納を行えば、一度手放したモノをまた買ってしまう、いわゆる『リバウンド』によってモノを増やすこともありません。捨てる際も、廃棄ではなく、リサイクルしたいと思えるようになるでしょう。片づけのすべてに理論があるという考え方に、とても共感しました」(秋山さん)
ここ数年、「断捨離」や「ミニマリスト」という言葉が流行り、モノを減らす整理収納術が話題を集めています。部屋を片づけるときに、モノを捨てることは、もちろん大切。その上で、「未来をイメージできるものであれば、使わなくても、捨てずにおくべきです」と、秋山さんはおっしゃいます。
「例えば、何年も着ていない洋服でも、『この洋服が似合う自分になりたい』という思いがあれば、取っておくようにアドバイスすることもあります。『もしかしたら着るかも』ではなく、近い未来に着ている自分を具体的にイメージして、クローゼットにしまっておく。その差は、とても大きいんです」(秋山さん)
整理収納を通して、未来の自分をイメージする。こうした発想にいたるまでには、パーソナルスタイリスト(R)としての学びが大いに役立ったそうです。
「パーソナルスタイリスト(R)の学校で『TPPOS』という概念を教えてもらったんです。これは、時・場所・場合の『TPO』に、人(person)と社会性(social)を加えたもので、一緒にそこに行く相手や、その場でどういう自分でありたいかなどを考慮して、洋服を選ぶという考え方。整理収納もまた、どんな部屋で暮らしたいか、家族とどんな関係性を築きたいかによって、モノの選別の仕方が変わってきます。着ていく服も、家に置くモノも、未来をイメージして選ぶ。これを学べたことは、クローゼットスタイリストとして活動していく上で、大きな糧になりました」(秋山さん)
秋山さんは、クローゼットスタイリストとして、現在も地元・静岡で活動を続けています。そこで彼女の動力の源になっているのは、静岡はもちろん、全国にいる仲間たちだそう。
「年に数回、東京で、全国の整理収納アドバイザーが集まるフェスティバルが開催されます。そこでよく話題に上がるのが、ご当地整理収納問題(笑)。例えば、私が働く静岡なら、土地が広いので、モノは捨てずに倉庫に閉まっておくという傾向が強いんです。そんな話をすると、『倉庫を別のことに有効活用する提案をしてみてはどう?』などと、全国各地のアドバイザーさんからさまざまなアドバイスをいただけるんですよね。皆さん、整理収納への意識が高く、とても刺激になります」(秋山さん)
整理収納術の多様化に伴い、クローゼットスタイリストとしての活動に、いっそうの熱意を注ぐ秋山さん。ズバリ、今後の目標は?
「個人ではなく、同じ静岡の整理収納アドバイザーの仲間たちとチームで活動していきたいです。例えば、地元の工務店と連携し、お客様が引っ越しをする際に、整理収納に関するアドバイスをサービスとして取り入れてもらう。こちらは、工務店とのマッチングをサポートしてくれる仲介会社を通して、今、実際に動き始めています。誰もが行う片づけですが、プロがお手伝いをさせていただければ、その方のライフスタイルを変えるほど劇的な効果を上げることもある。それをもっと多くの方に知っていただくためにも、さまざまなアプローチで、整理収納アドバイザーの活躍の場を広げていきたいと思います」(秋山さん)
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