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2018.02.14

文章力があなたの信頼を左右する!ベテラン校閲記者が教える、心に響く文章術

文章力があなたの信頼を左右する!ベテラン校閲記者が教える、心に響く文章術

文章は誰でも書けるものです。しかし、読みやすい文章、言いたいことを相手に伝える文章、相手の心に響く文章を書くのは、なかなか難しいもの。就職や転職のエントリーシートから、ビジネスシーンでのプレゼン資料など、社会に出ると「文章力」が自分の評価を左右することは多々あります。そこで、今話題の本『マジ文章書けないんだけど』の著者であり、朝日新聞社の校閲のプロである前田安正さんに、文章力アップの方法を教えてもらいました。

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相手の心を動かす文章を書くには「WHY」を語ることが大事

相手の心を動かす文章を書くには「WHY」を語ることが大事

現在は朝日新聞メディアプロダクション校閲事業部長を務め、企業の文章コーチングなども手掛ける、前田安正さん。これまで多くの文章を校閲してきて、『状況説明だけで人間のありようがわからない』文章がとても多いと言います。

「たとえば『昨日ぼくは動物園でライオンを見た』という文章は、4W1D、つまり、WHEN(いつ)、WHO(誰が)、WHERE(どこで)、WHAT(何を)とDO(どうした)で構成されており、5Wになっていません。WHY(なぜ)がないのです。じつは文章を書く上で大事なのがこのWHY。読む人は『なぜ』『どうして』を知りたいので、WHYがない文章は、相手の心に響かないのです」

SNSの文章では、言葉をコンパクトに伝える、凝縮したやりとりが中心。状況説明だけになりがちで、表層的なやりとりしか伝えられません。
一方、長い文章を書く際には、WHYを意識するだけで、状況、行動、変化が見えるようになり、文章からその人のストーリーが浮かびあがってきます。

「企画書やプレゼン資料の作成の際も、『マーケティングの結果がこうでした』という状況説明でなく、『なんのためにそれを作るのか』というWHYが人の心を動かす部分です。WHYという根っこにある気持ちを語って共感してもらえなければ、企画は通らないでしょうし、プレゼンにも勝てません。アップル社のiPhoneが世界中の人に愛されているのは、それを使うことで私たちはどういう生活ができるのか、というストーリーをしっかり伝えているからでしょう」

就職や転職の際のエントリーシートでも、WHYのない文章が目立つと言います。

「エントリーシートでは『私は何をしてきたか』という、ヒストリーばかりを並べている人が多いのですが、『なぜその部活を選んだのか』『なぜその仕事に就きたいのか』というWHYを中心にすれば、その人のストーリーが見えてきて、志望動機とその人物像がリンクします。また、WHYを繰り返すことで、自分を客観的に見ることができるようになり、面接の受け答えもスムーズになるはずです」

言いたいことを先に書く。前置きはいらない

言いたいことを先に書く。前置きはいらない

文章を書くとき、WHYを意識することで、書き方も自ずと変わってきます。

「『私はこれをやりたい、なぜならば~』という骨格を初めに示すと、主題がはっきりし、無駄な文章が減ってきます。無駄な前置きはいらないので、核心から書きましょう。起承転結の結から書いても構いません。どこから見せていくか、組み立てを考えることで、構成力、思考力、創造力も身につきます」

文章の骨の部分から書いて、肉づけは後が基本。

「さほど重要ではない肉づけ部分を先に書く人が多いのですが、それが長々と続くと、読んでいる人には苦痛です。さらに骨の部分と肉づけがごっちゃになっていると、何が言いたいのかわからない、読みづらい文章になります。書くという行為の先には、読む人がいるということを忘れないようにしましょう」

語彙力を重視するより、自分に染みこんだ言葉で伝えよう

語彙力を重視するより、自分に染みこんだ言葉で伝えよう

文章力のなさ=語彙力のなさだと思っている人もいますが、「語彙は問題ではない」と前田さん。

「難しい言葉を使っても、使いこなせていないと生きた言葉として伝わりません。『難しい言葉を使うのはかっこいい』と勘違いして多用すると、読み手には読みづらい印象を与え、逆効果です。言葉を知識として得るだけでなく、自由に使いこなせるよう、肉体化させる必要があります。そのためには、1日5分でもいいので、ちゃんと校閲の手が入った本の文章を読む習慣をつけ、体に文章を染みこませていくことは、文章力アップに役立つと思います」

最後に、前田さんも実践している文章力アップのとっておきの方法を教えてもらいました。

「最近は会議でもパソコンで入力する人が多くなりました。しかし、ノートに手書きで文字を書くという行為は、話を聞きながら要点を簡潔にまとめることになるので、後で文章を書く際にとても有効なのです。私は万年筆を使って書くようにしています。字を丁寧に書こうと意識して文字に触れるため、書くことが好きになる第一歩としておすすめです」

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取材協力
前田安正(まえだやすまさ)さん
早稲田大学卒業、1982年朝日新聞社入社。東京・校閲部、整理部、名古屋・編集センター長補佐、東京・校閲部長代理、大阪・校閲マネジャー、用語幹事、東京・校閲センター長、編集担当補佐兼経営企画担当補佐を経て、 2016年朝日新聞メディアプロダクション校閲事業部長 。「文章の書き方・伝え方」「文章の直し方」「校閲の仕方」について、企業の広報研修などに出講。漢検のホームページ「漢字カフェ」にコラム執筆 。カルチャーセンターやエクステンションセンターなどで「文章・エッセイの書き方」講座も担当。
 

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