「スッポン料理を食べたから、翌日はお肌プルプル!」なんてお話をよく耳にします。スッポンに限らず、フカヒレや豚足など、コラーゲンが豊富な食品を摂取することはお肌に良いと思われがちですが、そもそもコラーゲンと美肌にはどのような関係があるのでしょうか?
「皮膚は表皮、真皮、皮下組織で構成されています。コラーゲンは真皮において、細胞と細胞を支えてハリと弾力のある肌を形成する働きがあり、健康な肌を保つために重要な栄養素であるタンパク質の一つ。また、血管や骨にも存在し、体を構成するのにも重要な役割を担っています」(大山希里子医師)
となると、やはりコラーゲンが豊富な食品を食べることは、美肌作りに役立つということでしょうか?
「実はコラーゲンを多く含む食品が、直接美肌に効果があるとは言えません。どんな食べ物も、体内で消化されてから吸収されるように、コラーゲンも吸収される前にアミノ酸などの小さな分子まで分解されます。そのため、残念ながらコラーゲンを食べた形のまま吸収することはできないのです。食べたお肉が、そのまま筋肉にはならないことと同じですね」(大山希里子医師)
なるほど。コラーゲンを摂取すればすぐに美肌、というわけではないのですね。では、体内のコラーゲンは、どうすれば増やすことができるのでしょうか?
「コラーゲンのもとであるアミノ酸と、コラーゲンの合成に必要不可欠なビタミンCの摂取が大切です。しかし、前述したようにどんな食べ物も消化されて分解されるもの。美肌を目指すなら、そのことを踏まえ、バランスの良い食事で栄養素を摂取するようにしましょう」(大山希里子医師)
バタバタしがちな朝は、身支度もササッと終わらせたいですよね。「メイクしたわけじゃないし、顔は水で洗えばいいか!」「皮脂を取りすぎると、テカリそうだし」なんて考えがちですが、実は水だけの洗顔はお肌に良いとは言えないそうです。
「睡眠時にも皮脂は分泌され、空気中の汚れなどが付着して皮膚にも汚れが溜まっていくので、朝も洗顔料を使って洗うことをおすすめします。なお、顔のテカリは洗顔時に強く擦ったり、熱いお湯を使用したり、洗顔料を落としきれていないことなどが原因。洗顔の際は洗顔料をしっかりと泡立て、肌を擦らずにぬるま湯で洗うのがよいでしょう」(大山希里子医師)
ただし、皮膚がひどく乾燥し、鱗屑(※)が付くほどなら、その部分のみ水やぬるま湯だけで洗ったほうがよいこともあるとか。そのため、自身の肌に合った洗顔方法を試してみるのが大切なのだそうです。
「水だけで洗顔する場合は、清潔な手でぬるま湯をすくい上げ、擦らず優しく洗い流してください。拭く時にも、ゴシゴシせずに優しく拭いていきます。なお、皮脂汚れが強いオイリー肌の方は、汚れを落としきることができないので、洗顔料を使って洗いましょう」(大山希里子医師)
※鱗屑(りんせつ)……魚のウロコのように剥がれた表皮の角質層のこと。
洗顔後、潤い補給のために欠かせない化粧水。特にかさつきがちな時は、たっぷり使いたくなりますよね。でも、大山医師によると、それもまた間違いなのだそうです。
「化粧水をたっぷり付けても肌の奥へ染み込むことはないので、効果は高まりません。化粧水が取り込まれるのは表皮の角質層までで、内側の真皮まで化粧水の成分を取り込むことはできないのです。製品に表示されている適切な量を使用しましょう」(大山希里子医師)
では、いっそのこと化粧水を使わず、クリームなどで保湿するだけ、というのはどうでしょうか?
「それも良くないですね。水分のない肌にクリームを塗ると油分過剰になり、肌荒れの原因となります。また、テクスチャーが硬いクリームを擦るように顔に塗ることで、摩擦が起きて肌への負担が大きくなることも。化粧水で表皮の角質層に水分を届けた後に、油分の多いクリームを塗る方法が肌への負担もなく効果的と言えます」(大山希里子医師)
なお、化粧水の後に乳液というサイクルに、導入液や美容液をプラスするのも良いそうです。
「肌のターンオーバーが乱れている時は垢(あか)や古い角質が排出されず、表皮の角質層自体が厚くなっている状態。この時に導入液を使えば、化粧水を角質層に届けることを助けてくれます。きちんと洗顔を行った肌に導入液を使った後、化粧水を表皮の角質層まで届けることは肌に良いといえますね。また、美容液は製品によって、化粧水の前に使用するものと後に使用するものがありますが、どちらも前述したように角質層まで届く肌状態になれば効果的でしょう」(大山希里子医師)
ちなみに、こうしたスキンケアを断つ「肌断食」は、肌にとって良くないのだとか。
「例えば擦りすぎなど、間違った肌ケアを行っている際に肌断食を行った場合、摩擦が減ることで肌の調子が良くなるということはあるかもしれません。しかし、それは間違ったケア方法をやめたからであって、洗顔をせずに汚れをそのままにしておくと毛穴は広がり、乾燥の原因にもなるもの。また、保湿をしないことで、肌がくすんで硬くなってしまい、美肌からは遠のいてしまいます」(大山希里子医師)
古今東西、根も葉もないウワサは絶えることがありません。ましてや情報過多ともなりがちな今の時代は、何が正しいかを見極める力も大切となっています。大げさなようですが、美肌にまつわるウワサに関しても同じように、ウソかホントかをしっかり見極めたいものですね。
「皮膚は体の中で最も表面積の多い臓器で、日々ターンオーバーを繰り返しています。美肌のためには肌を擦らない、日焼けに気を付けるといったことも大事ですが、水分をしっかり摂る、バランスの取れた食事をする、ストレスを溜めないなど、内側から整えることも考えましょう。そして、悩みがあれば美容クリニックや、皮膚科のクリニックで医師の診察を受けてください。間違ったケアで悪化させないようにしてくださいね」(大山希里子医師)
また、最近は季節に関係なくマスクを着用する機会が増えていますが、そのせいで肌荒れを起こしてしまう方も多いのではないでしょうか。肌が荒れるのは困りものですが、かといってマスクを着けないのも不安……。そんな現状において、大山医師はアドバイスを送ってくれました。
「マスクを着けることによって、風邪予防やアレルギー対策はもちろん、肌も保湿・保護されていると思いがちですが、実際は擦れたり、蒸れて雑菌が繁殖したりと肌には悪い環境になっています。着脱時に擦れないように注意し、家に帰ったら洗顔し肌を清潔に保つことが大切です。また、マスクを着用していても紫外線は通すので、紫外線対策はしっかり行ってくださいね」(大山希里子医師)