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2021.05.12

人生100年時代に向けて!キャリアカウンセラーに聞く女性のセカンドキャリアの探し方

人生100年時代に向けて!キャリアカウンセラーに聞く女性のセカンドキャリアの探し方

年齢に関係なく、生き方や働き方などが大きく変わるキャリアチェンジの後を「セカンドキャリア」「第二の人生」といいます。今回は、女性のセカンドキャリアについて、キャリアカウンセラーの小島貴子さんに実例もふまえてアドバイスいただきました。

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人生100年時代。セカンドキャリアをどう考える?

人生100年時代。セカンドキャリアをどう考える?

人生100年時代といわれる中、2019年には女性就業者数が3,000万人を超え、多くの女性が家庭だけでなく社会で活躍する時代となりました。仕事や子育てに追われながらも充実した生活を送る一方、会社を辞める、子どもが手を離れるなどそれまでのキャリアがひと段落すると、「この先どうしよう?」と漠然とした不安にかられるという人も少なくないといいます。今回は、かつて埼玉県庁で1,000人以上の中高年を再就職させるなど、キャリアカウンセラーとしてすばらしい実績を残した後、准教授として大学で教鞭を執る小島貴子さんに、セカンドキャリアについて伺いました。
キャリアカウンセラー時代には、どんな相談が寄せられていたのでしょうか?

「セカンドキャリアについて寄せられる相談では、『仕事が見つからない』『これから私は、何をしたらいいの』『今の仕事がなくなったら……』といった風に漠然と抱えている不安についてが多いです。平成の後半で経済がデフレになった段階から、働くこと自体の価値も低くなってしまい、自己肯定感の低い社会になっています。『なんとかなるだろう』ではなく『どうしよう?』が渦巻いている社会になっていると思います」(小島貴子さん)

漠然とした不安を抱える人が増えている理由の一つには、昭和からの核家族化もあると小島さんは言います。核家族化が進んで家族の単位が小さくなっただけでなく、お醤油やお味噌などのものの貸し借りができるようなご近所付き合いがなくなったことにより、家族自体が孤立し、社会とのつながりが少なくなったことも背景にあるのだとか。

「家族の形態が小さくなるということは、社会とのつながりが少なくなるということです。社会学では『ストロングタイズ(強い絆、つながり)』『ウィークタイズ(弱い、薄いつながり)』という言葉がありますが、家族や仲のいい人たちとの日常的な集まりなどはストロングタイズ、ご近所付き合いなどはウィークタイズに分類できます。万が一ストロングタイズを持たない人でも、ウィークタイズを頼ることで社会的補助を受けられますが、そのウィークタイズを持たない人が多くなっています。セカンドキャリアを考えるなら、このウィークタイズを多方面につくり、うまく使っていくことが大切です」(小島貴子さん)

社会との「薄いつながり」ウィークタイズが大切になる

社会との「薄いつながり」ウィークタイズが大切になる

では、その「ウィークタイズ(薄いつながり)」はどのようにつくればいいのでしょうか?人生の折り返しを迎えてから、新しく人脈をつくることや、やりがいのある仕事や趣味を持つことは難しいと考える人も多いかと思いますが、小島さんはこう言います。

「『ウィークタイズを持ちましょう』と言うと、『趣味を始めないと』と考える方も多いのですが、趣味の会は深くて濃い『ストロングタイズ(強いつながり)』です。そうではなく、趣味になるかはわからないけれどやってみたかったことを体験したり、ボランティア活動をしてみたりするのがいいでしょう。
また、新しく仕事やアルバイトを始めるとなると、さらに『しっかりやる』という意識が強くなり、同じところで腰を据えて働かなくてはと考えがちです。しかし、午前はこの仕事で午後は別の仕事、月曜日はこの仕事で水曜日は別の仕事、といった形で時間を切り売りすることだってできるのです。それらによってウィークタイズが築けますし、自分にどんな職場や働き方が向いているのか、適性を見つけやすくなります。日本人は一度始めたことはやり通すべきと思いがちですが、それほど熱心ではない場所をセーフティネットのようにつくっておくことが大切なのです」(小島貴子さん)

社会とのつながりをつくらなければと気張り過ぎず、まずはいろいろな可能性を試していくことが大切なんですね。それでは、ウィークタイズの中から自分に合ったセカンドキャリアとなる仕事を見つけたい場合は、どうしたらいいのでしょうか?

「まず、『私には何ができるのか、何がやりたいのか』と考えるのではなく、自分が『やりたくないこと』を挙げます。職種や業種だけでなく、これまでの人生でいやな思いをした働き方や環境を挙げてみて、それ以外のすべてを候補とするだけで選択肢の幅がグーンと広がります。自分のやりたいことがある人は、それを具体的にして箇条書きで3つ書き出します。それを『こんなことを考えている』『これをやってみたい』と言葉にして、ウィークタイズの中で人に伝えましょう。言葉にして人に伝えることで、自分の考えに気づくこともたくさんあります」(小島貴子さん)

女性のセカンドキャリア実践編

女性のセカンドキャリア実践編

ここからは、小島さんに相談をされた方の中から、実際に自分に合ったセカンドキャリアとなる仕事を見つけた方のお話を教えていただきました。

子どもが3人いるシングルマザーのAさんは、仕事をしたい意欲はありましたが、長時間の勤務や通勤に時間がかかる職場は難しいという方でした。そこで、小島さんが「自分がよく行く場所を3つ挙げてください」と伝えたところ、「スーパー、パン屋、病院」と返ってきました。その中で「私にできる仕事がないか」と聞ける場所はありますかと尋ねると、病院に聞いてみることができるというので、実行してもらったそうです。そうすると、病院のオープン前に掃除をする仕事を病院側が提案してくれ、子どもを学校に送り出した後に数時間だけ働き始めました。しばらく続けていると、働き方がとてもまじめだったこともあり、先生のほうから医療関係の仕事もやってほしいと言われ、通信教育で医療事務の勉強をして資格を取得。最終的には医療スタッフとして採用されることになったそうです。

「仕事を探すというと、派遣や人材紹介サービスから仕事を見つけようとするのが一般的です。しかし、人材派遣に募集をかけられないような中小企業は多くありますし、自分の生活圏で働きたいとなると、なおさらハローワークや求人広告などで見つけることが難しくなります。自分の行動範囲の中で仕事がないか聞いてみるのも、セカンドキャリアを探す一つの方法ですね」(小島貴子さん)

次は、専業主婦から仕事を見つけた方の例です。

Bさんは専業主婦で、子育てがひと段落したために働いてみたいという相談でした。職歴はありませんでしたが、子どもが通う学校のPTAで広報をやっていたため、文章を書いたり、編集する能力が備わっていました。Bさんの条件は、仕事帰りにスーパーに寄りたい、また、雨が降り出したら洗濯物を取り込みに帰りたいので、電車を使わず自転車で通勤できる距離であることでした。その代わり、給料はそれほど高くなくていいとのことで、それらをアピールして近所の会社の営業事務の補助に入りました。最初は電話番のような仕事でしたが、機転がきく上、PTAで身につけた調整能力もあったので、数年で正社員になり、50歳をすぎて子どもが独立する頃には営業職になりました。Bさんは電話番で営業先とすでに仲良くなっていたので、営業先の信頼を容易に得られ、キャリアを重ねて、昇給もしていったそうです。
ウィークタイズの中で仕事を探していると伝えたことで、仕事を見つけることができました。無理して職場に合わせるのではなく、あらかじめ自分の条件を伝えることで、お互いに良好な関係を持続させることができるはず。そのためにも、条件は具体的に伝えましょう」(小島貴子さん)

小島さんご自身は公務員として働いた後、「上司と部下」の関係がある職場では働きたくないという条件から、大学教員の道を目指したといいます。やりたいことだけでなく、やりたくないことを明確にすることで自分の適性が見えてくることもあります。ハローワークでは精度の高い適職診断が受けられるので、そちらを参考にするのも一案です。最後に仕事以外のセカンドキャリアについても伺いました。

仕事だけじゃない!あなたらしいセカンドキャリアを探そう

仕事だけじゃない!あなたらしいセカンドキャリアを探そう

「セカンドキャリアというと『キャリア=仕事』と置き換えられがちですが、そもそも仕事をすることだけがキャリアではありません。大切なのは、自分にとってのセカンドキャリアは何かを考えること。子育てや仕事から解放されることがセカンドキャリアなのか、もう一度仕事をしたいのか、趣味の世界を楽しみたいのか。何かしらの役割を一つ終えた後に、自分の人生で何をメインにするのかを考えなくてはなりません。これまで子育てや仕事に忙しくしていた人ほどセカンドキャリアへの不安が大きいかもしれませんが、人の役割はいつか終わるし、変わっていくものです。終わることによってのみ、新しいことが始まるのです」(小島貴子さん)

小島さんは、「漠然と『どうしよう?』と考えるのではなく、3年後の自分をイメージして、具体的に想像してみるといい」と説きます。3年後の1日はどんな1日になっているか、今日とその3年後がどう結びつくかを考えることで、自分のセカンドキャリアがより具体的になります。例えばお金の不安を持っているなら、まずは自分がどれくらい消費する人間であるかを把握する必要があります。それを把握することで、必要な分を仕事で稼いでいくのか、消費を抑えて他の時間を大切にするのかなどを具体的に考えられます。年齢や今までどんなキャリアを持っていたかに関係なく、「自分は何をしたら満足感を得られるのか」を考えてみると、自分だけのセカンドキャリアを見つけられるのかもしれません。

<プロフィール>
小島貴子さん
小島貴子さん
東洋大学理工学部生体医工学科准教授/キャリアカウンセラー。三菱銀行勤務、出産退職後7年間の専業主婦を経て、1991年に埼玉県庁に職業訓練指導員として入庁。キャリアカウンセリングを学び、職業訓練生の就職支援を行う。7年連続で就職率100%を達成。現在は、多数の企業で採用・人材育成コンサルタント及びプログラム作成と講師を務める。著書に『わたしの人生は、わたしのモノ』(朝日新聞出版)などがある。
<イラストレーター>
milkさん
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シンプルなイラストタッチが人気のイラストレーター。企業やショップなどのイラストのほか、似顔絵のオーダーも受け付けている。
 

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