『一生困らない 女子のための「手に職」図鑑』(光文社)より
はじめまして、ライターの華井由利奈です。私は今まで、就職や転職、女性の活躍に関する記事を執筆するため、約700名に取材を行ってきました。そこで聞いたのは、企業説明会では語られない裏話や苦労話、記事には書けない女性ならではの悩みでした。
例えば「フライトアテンダント」や「ウェディングプランナー」は一見華やかで女性に人気がありますが、休みが不定期で時期によっては拘束時間が長くなるため、実は離職率が高く、大勢の人が若いうちに退職しています。また仕事と育児を両立できず、家族の助けもなく、退職せざるを得ない状況に追い込まれてしまったという話も多く聞きました。
女性が手に職をつけて自分らしく生きていくのは、難しいことなのかな……。そう思っていたある日、女友達から「海外に移住して、育児をしながら働く」という夢が叶いそうだという話を聞きました。夢破れていく女性が少なからずいるなか、なぜ彼女は理想の人生を手に入れることができたのか――。彼女の生き方に興味を持ち、秘訣を聞いたところ、高校時代から熱心に情報収集をして、将来設計を立てていたとのこと。そのとき私は、「結婚・出産後の働き方を知った上で仕事を選べたら、多くの女性が自分らしく働き続けられるかもしれない」。そう思ったんです。そこで、今までの取材経験をもとに本を書き始めました。それが、4年の歳月をかけて完成させた『一生困らない 女子のための「手に職」図鑑』です。
『一生困らない 女子のための「手に職」図鑑』には、約100種類の職業が掲載されており、「長く働き続けられるか」「仕事と育児を両立できるか」など、結婚後・出産後・老後の働き方を視野に入れて解説されています。今回は、そのなかでも特におすすめの職業を4つのテーマに分けてご紹介します。
1.資格が必要な「手に職がつく仕事」
『一生困らない 女子のための「手に職」図鑑』(光文社)より
●社会保険労務士
中小企業と契約を結び、労働に関する法律を参照しながら、安心して働けるよう職場の制度を整える仕事です。法律は複雑なので、社会保険労務士が給料・労働時間・休暇などの労働条件を整備しています。社会保険労務士として産休や育休の制度を企業内につくることもあり、次の時代を担う若い女性の力になることができます。
事務作業が多く体力を温存できるため、家事や育児との両立がしやすく、女性に人気の職業です。
●司法書士・行政書士
司法書士は、裁判所への訴状や告訴状の作成、簡易裁判所での代理人業務など司法関連の書類の作成や手続きについて幅広く対応する仕事です。一方行政書士は、自動車登録から著作権登録まで、官公署に提出する書類の作成や手続きについて幅広く対応する仕事です。
司法書士も行政書士も、結婚退職せず、働き続けている女性が多い職業です。ただしどちらもサービス業の一種でお客様の都合に合わせて動くため、平日の深夜や土日まで仕事が発生してしまうこともあります。育児中は、家族や保育施設のサポートが必要不可欠です。
その他には、理学療法士や作業療法士、図書館司書、臨床心理士がおすすめです。特に臨床心理士は、地域の個人医院や学校のように診察時間が限られている場所で働くと家事や育児との両立がしやすいことから、最近は女性が7割を占めています。
2.好きなことから始められる「手に職がつく仕事」
『一生困らない 女子のための「手に職」図鑑』(光文社)より
●フラワーデザイナー
お客様の希望や目的、場所に合わせて、花を美しくアレンジする仕事です。花の育て方や保存方法、仕入れ先の農家、市場の花卉部などに関する知識が求められます。活躍の場は、結婚式場や展示会、ホテル、テレビ番組の撮影現場などさまざまです。
花に囲まれた魅力的な職場ですが、朝は早く夜は遅く、力仕事も多いのが現実。しかし最近はカフェや雑貨店を併設することで、仕事量を調整している店もあります。花屋の形態によって両立しやすさが変わるため、就職する前に各店の状況を細かく調べてみることをおすすめします。
●アロマセラピスト
植物からとれる精油(エッセンシャルオイル)を使って、香りやマッサージで心と体の不調を和らげる仕事。お客様の不調に合わせて精油をブレンドしたり、マッサージを施したりするため、心身の健康や精油に関する専門知識が必要です。
アロマサロンやエステティックサロンで働く人が大半を占めますが、経験を積めば自分のお店をオープンすることも可能です。個人経営であれば開店時間や定休日などを自由に設定できるため、家族のスケジュールに合わせて働けます。また自分自身の心身のバランスを整えたり、リラクゼーション効果を得たりといったことも期待できます。
その他には、イラストレーター、パティシエがおすすめです。特にパティシエは、手作りスイーツをネットショップで販売したり、自宅でお菓子教室を開いたりできるので、家事や育児と両立しやすい仕事の一つです。なお手作りスイーツを販売するには、菓子製造業の営業許可や、食品衛生責任者の資格が必要です。
3.在宅や副業でもできる「手に職がつく仕事」
『一生困らない 女子のための「手に職」図鑑』(光文社)より
●ネイリスト
マニキュアやデコレーションパーツを使って爪を飾り付ける仕事。一人でできる仕事なので、必要な道具を一式買い揃えれば自宅で開業も可能です。まずは一度サロンに勤めてセンスと技術を磨き、常連客を獲得してから独立するのがおすすめです。
サロンに勤務した場合、収入は一般的なOLと同じかやや低め。ネイリストとして高収入を望むなら、自宅で開業し人気店にする方法があります。工夫を重ねて固定客を一定数つくることができれば、収入の安定につながるでしょう。
●アクセサリーデザイナー
指輪やブローチなどのアクセサリーをデザインして制作する仕事。デザインの作成や金属加工などさまざまな工程を一人でこなす職場と、分担する職場があります。最近は自宅でアクセサリーを手作りし、ネットショップで販売する人も増えています。
会社勤めでも両立はできますが、独立すれば育児の空き時間に自宅で制作から販売までできるため、さらに両立しやすくなります。しかし値段が1点数千円程度の場合、アクセサリー作りに時間をかけても多くの収入は見込めません。収入より作ることの喜びを大切にする方に向いているかもしれません。
その他には、ライター、ウェブデザイナーがおすすめです。特にライターは、記事の企画や執筆など、対面取材以外の仕事を自宅で行えるため、育児の合間に仕事を進めることができます。
4.再就職しやすい「手に職がつく仕事」
『一生困らない 女子のための「手に職」図鑑』(光文社)より
●医療事務員
病院の受付やカルテの管理、診療費の計算など、病院の事務を担当する仕事です。病院は全国各地にあるため、自宅の近くで勤め先を探せます。また、家族のスケジュールに合わせて時短で働ける病院も多く、女性に人気の職業です。
正社員よりもアルバイトやパート、派遣社員での求人が多く、他の事務職と比較すると給与水準はやや低め。しかし正社員以外の雇用形態であれば、労働時間を自由に選べる場合も多々あります。そのため結婚・出産後も続けられる仕事として、若い女性や子育て中の女性から人気を集めています。
●歯科助手
歯科助手は、歯科医師が働きやすいようサポートする仕事。仕事内容は、カルテの管理から、治療器具の洗浄、クリニックの清掃など多岐にわたります。働く時間帯や場所が選びやすいため、女性に人気の高い職業です。
女性が多く、10年以上のブランクがあっても再就職できる、まさに手に職がつく仕事です。しかし産休や育休を取れる歯科医院はまだまだ少なく、いったん退職して、パートとして復帰するのが最も多いパターンだと言われています。
その他には、ヘアメイクアップアーティスト、トリマーがおすすめです。特にトリマーは、獣医師や動物看護師のように夜勤や早朝出勤がないため、家事や育児との両立がしやすいと言われています。
『一生困らない 女子のための「手に職」図鑑』(光文社)より
多くの人が就職前に業界研究や企業研究をしていますが、相性ぴったりの仕事を見つけるのは至難の業です。例えば、出産後も働き続けたいと思っていても、職場の理解が得られず辞めざるを得なかったり、育児の時間を確保するために時短労働にすると、予想以上に収入が下がってしまったり……。
そんな現実を前に辛い思いをしている人がいる一方で、何一つ不自由のない職場で十分な収入を得ながら、楽しく働いている人もいます。一体何が違うのか、何百人もの女性にインタビューをして考えた結果、「生き生きと働いている人は、理想的な環境を自分で作り出している」ということに気づきました。
「働きやすい環境に変えていきたいけど、何から始めればいいのかわからない」という人は、手始めに『「手に職」図鑑』をパラパラとめくってみてください。そして、もし気になる職業があったら、服を試着するようなつもりでその仕事にチャレンジしてみてください。
仕事は服と同じです。たとえ大好きなブランドでも、着てみたら全く似合わないこともあります。逆に、普段全く着ない服が意外に似合うこともあります。服も仕事も、自分に合うかどうかは、試着してみなければわかりません。会社を辞めずに部署を替わるもよし、副業を始めるもよし、思い切って転職するもよし。相性のいい仕事を見つけるために、まずは自分で動き出してみましょう。